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下落局もあれば上昇局も…主要テレビ局の直近視聴率実情(2025年3月期・上期)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
家族団らんに欠かせない存在のテレビ。その視聴率は(写真:アフロ)

全日はテレ朝、ゴールデンはNHKがトップ

テレビ局の番組や局のメディア力のすう勢を推し量るのに、一番明確な指標が(世帯)視聴率。キー局における最新となる2025年3月期(2024年4月~2025年3月)における上期の視聴率を確認する。

各種データはTBSホールディングス・決算説明会資料集ページ上で発表された「2024年度第2四半期決算資料」などからのもの。「キー局」と表現した場合、一般的にはNHKは含まれないが、よい機会でもあるので合わせてグラフに収める。

なお多くの局の発表資料ではここ数年の間に、HUT(世帯視聴率、Households Using Television)ではなくPUT(個人視聴率、Persons Using Television)を用いるようになったが、連続性を鑑み今記事では引き続きHUTを用いる。以後の記事内表記・グラフ内表記も断りがない限り「視聴率」は「世帯視聴率」を意味する。

↑ 主要局世帯視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2025年3月期・上期)
↑ 主要局世帯視聴率(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区)(2025年3月期・上期)

テレビ東京は区分の上では在京キー局の5局に収められているが、他の4局と比べれば放送内容の特異性(比較的経済関連の内容が多い)の都合上、視聴率で他局と比べて低めの値が出るのは、ある意味やむを得ない。その特異性を考慮し順位精査の際に除外すると、日本テレビ・テレビ朝日・NHKが高め、TBSとフジテレビが低めと、2階層状態にある(TBSはポジション的に微妙だが)。

視聴率が低迷しやすい昼間や深夜を除いていることから、全日と比べて高い視聴率が期待できるのがゴールデンタイム(19~22時)とプライムタイム(19~23時)。その双方で10%を切っているのは今期では全局・全時間帯となった。10%は視聴率の節目であり、かつては多くの局の時間帯で超えていたものだが。

今件で選択したテレビ局の中ではやや特異な動きを示しているのがNHK。ゴールデンタイムとプライムタイムの差異が他局動向と比べるとかなり大きい。これは以前からの傾向で、ゴールデンタイムよりもプライムタイムの方が低いことから、その違いとなる時間帯、22~23時における視聴率がとりわけ低く、平均値を下げてしまっていることになる。もっともこれは各テレビ局の番組構成上、民放ではこの時間帯に番組のクライマックスや人気の高い番組が入ることが多いのに対し、NHKではそうとは限らないこともあり、仕方のない面もある。

ゴールデンタイムで視聴率動向を見ると、トップはNHK、次いでテレビ朝日、日本テレビ、TBS、フジテレビ。プライムタイムで比較すると、テレビ朝日がトップとなり、次いでNHK、日本テレビ、TBS、フジテレビの順となる。NHKのプライムタイムでのいまいち度合いは直上にその理由を記した通りだが、プライムタイムではテレビ朝日において、ゴールデンタイムを超える値を示しているのは意外かもしれない。22~23時の時間帯で放送される各局の人気番組の人気が、そのままこの差に表れるともいえる。テレビ朝日では「報道ステーション」がメイン、後は各種映画や特番、ワイド劇場となるのだろう。

前年同期からの変化を確認

視聴率の変移を前年同期(2024年3月期・上期)との比較で表すと次のようになる。

↑ 主要局世帯視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2025年3月期・上期)
↑ 主要局世帯視聴率前年同期比(週ベース、ビデオリサーチ、関東地区、ppt)(2025年3月期・上期)

今期はおおよそだがプラスがTBSとNHK、マイナスが日本テレビとフジテレビ、テレビ朝日とテレビ東京がプラスマイナスゼロと見ることができる。三極化という珍しい形となった。特に日本テレビの大きな下落ぶりが目にとまる。同局の半期決算短信補足資料の限りでは「地上波テレビ広告収入が回復基調に」「スポットは6月以降前年を上回る。10月以降も好調な推移」「タイムの4月期レギュラーセールスは前年を下回った。特番は堅調なセールス」など、好調さを示す言葉が並ぶ。半期決算短信でも個人視聴率や平均コア視聴率(男女13~49歳対象)では好調な数字を見せたと言及されてはいるのだが。

日本テレビとフジテレビのマイナス幅をよく見ると、時間区分別では全日よりもゴールデンタイムやプライムタイムのマイナス幅が大きい。多数の人がテレビを視聴する時間帯で、よりテレビから離れる傾向があったことになる。NHKでは真逆の現象が起きているのにも要注目。多数の人がテレビを視聴する時間帯で、よりテレビとの距離が縮まったことになる。

テレビは4大従来型メディア(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)の中では最大の影響力を持つ一方、その力に翻弄される面も見せている。そのような状況下で、各局がいかなる姿勢を見せ、その姿勢が視聴率の動向にいかなる成果として結びついていくのか。今後も注意深く見守りたいところだ。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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