『おばけずかん』映画化でデビュー。男子が想いを寄せる役で美少女ぶりが光る吉村文香、14歳の素朴な素顔
小学生に大人気を博し150万部突破の童話シリーズを、VFXの名手・山崎貴監督が映画化した『ゴーストブック おばけずかん』。子どもたちが願いごとを叶えるために、おばけ相手に試練を乗り越えていくストーリーの中、主人公の男子が密かに想いを寄せる女の子の役でデビューしたのが吉村文香。演技経験なしで初めて受けたオーディションで抜擢された14歳だ。劇中でも、先生役の新垣結衣らと並び立った試写会イベントでも、その美少女ぶりは目を引いた。兵庫から上京して参加したイベント前に話を聞いた。
中学生活は部活のバスケに捧げました
――『ゴーストブック』では小学生役ですが、文香さんがリアル小学生の頃はどんな子でした?
吉村 近所の友だちの家の駐車場に、仲が良かった5人くらいで集まって、お菓子を食べたり、トランプや鬼ごっこをしたりしていました。屋根があって、雨でもそこで遊べたので。
――中学生になってからは?
吉村 部活でバスケを始めました。小学校の体育の授業で「楽しいかも」と思って、友だちもバスケ部に入ったので「それなら私も」と。この前、最後の試合で、初戦敗退だったんですけど、中学生活は全部、部活に捧げた感じです。
――背は昔から高かったんですか?
吉村 中学に入ったときは152cmくらいで、今より10cmくらい低かったんです。2年生の頃に一気に7~8cm伸びました。
――兵庫出身で、芸能界にはどういう経緯で入ったんですか?
吉村 いとこが東京に住んでいて、小学5年生の頃に遊びに行ったとき、たまたま原宿でスカウトしていただきました。
――王道のパターンですね。
吉村 いとこと母と歩いていたら、誰かにつけられている気がして、「ヤバイんじゃない?」って振り返ったら、「あの、すいません」みたいな。原宿でスカウトされる話は聞いたことがありましたけど、ビックリしました。
ドラマで高畑充希さんのお芝居に憧れて
――自分でも芸能界に興味はあったんですか?
吉村 空の上の世界という感じで、自分が足を踏み入れるのは考えたことがありませんでした。スカウトされて事務所に所属してから、ちょっとずつ「自分もこんなことができたらいいな」と思うようになりました。
――テレビは普通に観ていて?
吉村 その頃は『(世界の果てまで)イッテQ!』とか『VS嵐』とか、バラエティをよく観ていて。ドラマは中学に入ってから友だちに影響されて、よく観るようになりました。『3年A組-今から皆さんは、人質です-』や『あなたの番です』にハマりました。
――好きな女優さんもいますか?
吉村 『にじいろカルテ』で高畑充希さんがお芝居にひたむきで、本気が伝わって、すごくカッコいいなと思いました。いつかは自分もあんなふうになりたいと、憧れています。
修学旅行でお笑いをやりました(笑)
――学校でも人前で何かするのは好きだったんですか?
吉村 2ヵ月前に修学旅行に行ったとき、友だちに「お笑いをやろう」と誘われたんです。20回くらい断ったんですけど、しつこすぎたので一緒にやりました(笑)。前に先輩に「やってみたら?」と言われて、そのときはノリで(ぺこぱの)シュウペイさんのマネをしたんです。それを延々と引きずられて「やって。やって」と言われ続けて(笑)。
――修学旅行ではどんなネタを?
吉村 ホテルでミルクボーイさんのネタをやりました。先生の特徴を言って、「○○先生やないかい!」みたいな。まあまあウケました(笑)。
――今回女優デビューとなりましたが、映画は自分でも観てました?
吉村 山崎貴監督の『STAND BY ME ドラえもん』は劇場で観て、大号泣しました。他に高畑充希さんの出演された『DESTINY 鎌倉ものがたり』とかも観ていたので、自分が山崎監督の作品に出られるのは嬉しかったです。
オーディションでは絶対落ちたなと
――『ゴーストブック』以前にも、オーディションは受けていたんですか?
吉村 演技のオーディションは初めてでした。レッスンも受けたことがなくて。
――そうだったんですね。このオーディションではどんなことを?
吉村 まず3人1組になって、監督やプロデューサーさんたちが並んでいる前でお芝居をしました。終わったあとに何人か呼ばれて、メイクもしていただいて、屋外で実際にカメラを回して撮影しました。
――手応えはありました?
吉村 絶対落ちたと思いました。周りの人たちが上手すぎて、自分は選ばれないだろうなと。それで変に期待しないほうがいいと思いながら、兵庫に帰って普通に学校に行っていたら、2日後くらいに合格と電話をいただいて。落ちると思っていた分、嬉しさ倍増でした。
――事前に家で練習はしていったんですか?
吉村 台本をいただいていたので、母や妹と「この役やって」みたいな感じで、ずっと練習していました。
自己PRではハマったゲームの話を
――原作の『おばけずかん』のことは知っていたんですか?
吉村 三つ下の妹が持っていた本を読んだことがありました。学校の図書室にも置いてあって、貸出中のことが多かったんですけど、シリーズで何冊かあったので、「あれはないから、こっちを」という感じで何冊か読みました。
――オーディションでは自己PR的なこともしました?
吉村 しました。1分間で語るということで、当時ハマっていたゲームの話をした記憶があります。何のゲームだったか、忘れてしまいましたけど。
――ゲーム熱はもう冷めて?
吉村 今は違うゲームをしています。ポンポン押したらキャラクターがパシューンと跳ねるゲームとか、いろいろやっています。
――流行っていた『あつまれ どうぶつの森』は?
吉村 アプリは入れてますけど、もう1~2ヵ月やってなくて、島が荒れちゃっています。次にログインしたら、たぶん髪の毛ボサボサです(笑)。
撮影では腕が痛くなったり背筋が冷たくなったり
――初めてのオーディションや撮影でも、緊張はしないほうですか?
吉村 オーディションは落ちる前提で「受かったらラッキー」くらいの気持ちだったので、そこまで緊張しませんでした。でも、リハーサルから撮影になったら、すごく緊張してしまって。「オーディションでは大丈夫だったのに、何でこんなに?」というくらい、ガクガクしました。
――脚が震えたり?
吉村 腕に力が入りすぎて痛くなったり、背筋が冷たくなったり。顔は逆に力が抜けすぎちゃって、どうしようかと思いました。
――演技の初心者は「手をどうしたらいいんだろう?」と思ったりするそうですね。
吉村 「普通に下ろしていていいのかな?」とか思いました。1人のシーンはあまりなかったので、周りの荷物を持っていない人の手を見て、「こういうふうにしておけばいいんだ」みたいな。
ルービックキューブで負けず嫌いが出て(笑)
――城桧吏さんら共演の男の子たちとは、すぐ仲良くなれました?
吉村 はい。空き時間にずっとルービックキューブをやったりしていました。最初に桧吏くんが持ってきて「得意なんだ」と始めて、みんなに広まりました。私の家にもルービックキューブはあって、桧吏くんが完璧に揃えるから、対抗心が高まりました(笑)。
――演じた湊と同様に負けず嫌いだったり?
吉村 変に負けず嫌いなところがあります(笑)。宿でみんなで卓球もしました。全員やったことがなくて、底辺の戦いに近かったんですけど、私がズバ抜けてヘタでした(笑)。打った球がクルクル回って、天井近くの空気溝みたいなところに入ってしまったり。
――そっちに入れるほうが難しそう(笑)。
吉村 球が出てきて、良かったです(笑)。
目の前にいないおばけとどう話そうかと
――撮影ではどんなことが印象に残っていますか?
吉村 CGが多い作品で、グリーンバックがほとんどだったんですね。おばけとしゃべるシーンは、目の前にいないのでどう話したらいいのかわからなくて。スタッフの方が代わりにぬいぐるみを置いてくれたり、おばけの役をしてくれて、「ここに目がある」とか確認できたので、たいぶ助かりました。
――湊は小さい図鑑坊を見て「かわいいんですけど」と言うところがありました。あそこも実際には図鑑坊を見てなくて?
吉村 図鑑坊はリアルな3Dの模型があって、本番ギリギリまでそれを使ってくださったので、やりやすかったです。最初は頭にトゲトゲがあって怖そうでしたけど、よく見るとすごくかわいらしくて。
――旅する雲梯にぶら下がって空を飛ぶシーンは、どう撮ったんですか?
吉村 ワイヤーで吊っていただいて、ぶら下がる感じでしたけど、小学校の校庭から撮って、実際にあのくらいの高さまで上がったんです。飛び降りるシーンはワイヤーなしで、そこそこの高さからポンと。
――へーっ。
吉村 私はそこまで高いところが苦手ではなくて、下にマットはあったんですけど、いざ飛び降りるとなると「こんなに高いんだ」と。下を見たら、すごく怖かったです。でも、握力の限界もあって、自然に手が離れました(笑)。
――山崎監督のVFXの裏側を体験したわけですね。
吉村 高畑充希さんたちがナチュラルに演じてらっしゃいましたけど、こんなに難しいとは。ちょっとナメていました(笑)。
本当にお別れなので気持ちを想像できました
――クライマックスでは、湊が涙ぐむシーンがあって。
吉村 なかなか涙が出なくて難しかったです。スタッフさんに「感情移入に集中して」と言われて頑張りました。その頃は撮影を1ヵ月弱していて、みんなとも本当にお別れだと思って、そういう気持ちを想像しました。
――全体的に小学生らしさは意識しました?
吉村 そこは意識しすぎるほうが良くないかなと思いました。撮影したのが中1の終わり頃で、ランドセルも久しぶりでしたけど、まだ家にあったので。
――テレて先生の後ろに隠れるのは、小学生っぽい感じでした。
吉村 テレ隠しですよね(笑)。そういうシーンも湊っぽいなと思いました。
おばけは映画では想像以上にリアルでした
――完成したこのデビュー作を観て、どんなことを感じました?
吉村 グリーンバックで撮影していたので、「こういうふうになるんだ!」という驚きがありました。おばけは現場でも、監督が制作途中のCGを見せてくれましたけど、想像以上にリアルでした。本当にそこにいる感じで、「自分はこういうおばけとしゃべっていたんだ」と思ったり。最後のおばけのジズリは迫力がすごくて、あんなに大きいんだったら、リアクションももっと大げさにしておけば良かったとか、反省もいろいろありました。
――演じている自分を自分で観るのは、どんな感覚でした?
吉村 「何でこんな顔をしているんだろう?」とか思いました。今からどうすることもできないので、ちゃんと受け止めて、もし次お仕事させていただくことがあれば、反省を活かしたいです。
――また映画館でも観るんですか?
吉村 友だちから誘われています。半ば強制的に、日にちまでほぼ決められていて(笑)。観てもらえるのはありがたいですけど、ちょっとテレくさいです。
役でもいいから青春を経験したくて(笑)
――今は中学最後の夏休みですね。
吉村 受験勉強で忙しくて夏期講習もありますけど、今までの2年は部活ばかりだったので、友だちとの時間や自由に寝たりゲームをすることも大切にしたいです。
――勉強も頑張っているんですか?
吉村 頑張ってはいますけど、なかなか思うような成績は取れません(笑)。
――高校生になったら、青春ものの作品にも声が掛かりそうですね。
吉村 学園ものに出てみたいです。実際には青春が全然ないので(笑)、役でもいいから経験したくて。
――実際の青春もこれからじゃないですか(笑)。
吉村 学校の廊下とかで友だちが彼氏と話しているのを、「いいなー。青春だなー」と思って見ているだけなので(笑)。
――青春系の映画で「こういうのはいいな」と思ったシーンはあります?
吉村 放課後に体育館の裏に呼び出されるとか(笑)。1回でもいいから呼ばれてみたいです。あと、自転車に2人乗りでビューンとかしたいです(笑)。
願いが叶うなら記憶力を良くしたいです(笑)
――最後に、映画の中のおばけずかんは“どんな願いごとも叶えてくれる”という本ですが、文香さんが叶えてほしい願いは?
吉村 もっと記憶力が良くなったらいいなと思います。試験勉強でも暗記系なら確実に点数が取れると思って、集中してやるんですけど、書いたり声に出したりしながら、10コくらい覚えるのに30分かかったりするんです。「明日テストなのに、もうこんなに時間が経ってる」となってしまうので、1回見ただけで全部覚えられたり、「この公式だからこう」とパッとできる能力がほしいです。
――仕事に関する願いはないですか?
吉村 演技で涙を流せるようになりたいですし、笑顔のときに口角がちょっと引きつってしまうので、もっと自然に笑えるようになりたいです。
――映画やドラマで主演をしたいとかは?
吉村 いつかやってみたいです。でも、もっと演技が上手になって、観ていただく方にすごいと思ってもらえるようになってから、堂々と主演をしてみたいです。
撮影/S.K.
Profile
吉村文香(よしむら・あやか)
2008年2月14日生まれ、兵庫県出身。
7月22日公開の映画『ゴーストブック おばけずかん』で女優デビュー。
『ゴーストブック おばけずかん』
7月22日より全国東宝系にて公開
監督・脚本/山崎貴
出演/城桧吏、柴崎楓雅、サニーマックレンドン、吉村文香、神木隆之介、新垣結衣ほか
夜中に子どもたちの枕元に現れて「願いを叶えたいか?」とささやく、白い布をかぶった謎のおばけ。どうしても叶えたい願いがあった一樹(城桧吏)たち3人は、「おばけずかん」を探すことに。偶然居合わせた瑤子先生(新垣結衣)を巻き込んで、怪しい店主(神木隆之介)のいる古本屋で図鑑を手に入れるが、古本屋から出ると外の世界は彼らの知っている場所ではなかった……。