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[高校野球]現役監督の甲子園勝利数ベスト3は西谷・馬淵・中井。4位は?

楊順行スポーツライター
通算勝利数で現役10位のこの人はだれ?(写真:岡沢克郎/アフロ)

「監督さんに40勝をプレゼントできました」

 この夏の甲子園。広陵のエース・高尾響は、1失点完投で熊本工に競り勝ち、そういった。この勝利で広陵・中井哲之監督は、甲子園通算40勝。元常総学院などの木内幸男、大垣日大などを率い、先ごろ関商工の特別顧問に就任した阪口慶三に並び、歴代7位の勝利数となった。現役の監督では西谷浩一(大阪桐蔭)、馬淵史郎(明徳義塾)に続く第3位だ。

 高校野球の監督が、甲子園で何勝しているか。尾藤公(箕島・和歌山)の35勝を蔦文也(池田・徳島)が抜き、その蔦の記録をPL学園(大阪)の中村順司が塗り替えた。その58勝はアンタッチャブルと思われたが、長い間指揮を執る監督が増え、智弁和歌山などの高嶋仁が上回ったのは2010年のセンバツだ。さらに今年のセンバツでは、西谷がこれを凌駕した。歴代のランキングは、以下のようになる。[通算20勝以上。表は○数字が歴代順位、白抜き数字が現役の順位、勝敗(引き分けは除外。カッコ内は春・夏の内訳)、勝率、優勝回数(春夏の内訳)]。

①❶西谷浩一(大阪桐蔭)   70-15(33-8/37-7) .822(4/4)

②—高嶋 仁(智弁和歌山など)68-35(30-13/38-22).660(1/2)

③—中村順司(PL学園)    58-10(31-7/28-3)  .853(3/3)

④❷馬淵史郎(明徳義塾)   55-35(19-14/36-21).611(0/1)

⑤—渡辺元智(横  浜) 51-22(23-12/28-10).699(3/2)

 —前田三夫(帝  京) 51-23(21-13/30-10).689(1/2)

⑦❸中井哲之(広  陵) 40-22(24-12/16-10).645(2/0)

 —木内幸男(常総学院など) 40-19(13-6/27-13) .678(1/2)

 —阪口慶三(大垣日大など) 40-34(24-17/16-17).541(1/0)

⑩—小倉全由(日大三など) 37-20(14-9/23-11) .649(0/2)

 —蔦 文也(池  田) 37-11(21-5/16-6) .771(2/1)

 ここまでがベストテン。高校野球史に残る名監督が並ぶ。西谷監督は根尾昂(現中日)らが2年生だった2017年から22年の実質5年間(コロナ禍の20年を除く)で春3回、夏1回の優勝があり、その間に27勝と急ピッチで勝ち星を伸ばした。それからするとこのところはかなりペースダウンしたが、それでもここ2年で6勝と、コンスタントに勝ち星を増やしている。

準優勝では勝率が下がる西谷・門馬

 そもそも8割超という勝率がすごい。瞬間風速で、中村順司の最高勝率を上回った時期もあり、優勝までに必要な勝ち星を5とすれば、準優勝では勝率が下がってしまう計算だ。もう一度最強の世代が現れれば、100勝だって夢じゃない。ちなみに西谷監督の春33勝、高嶋の夏38勝は大会最多。続いて30位まで。

⑫—尾藤 公(箕  島) 35-10(22-5/13-5) .778(3/1)

⑬—深谷弘次(中京など) 33-11(16-5/17-6) .795(2/1)

⑭❹原田英彦(龍谷大平安) 31-18(19-10/12-8) .633(1/0)

 ❹門馬敬治(東海大相模など)31-8(21-5/10-3) .811(3/1)

 —北野尚文(福井商) 31-36(14-17/17-19).463

⑰—竹田利秋(仙台育英など) 30-27(12-13/18-14).526

⑱❻佐々木順一朗(仙台育英) 29-20(7-7/22-13) .604※現学法石川

 ❻斎藤智也(聖光学院) 29-25(5-6/24-19) .537

 —杉浦藤文(中  京) 29-11(10-6/19-5) .725(1/1)

㉑❽多賀章仁(近  江) 28-23(9-7/19-16) .549

 —森  士(浦和学院) 28-21(20-9/8-12) .571(1/0)

㉓❾仲井宗基(八戸学院光星) 27-15(9-7/18-8) .643

 —栽 弘義(沖縄水産など) 27-17(2-6/25-11) .614

㉕—三原新二郎(京都外大西など)26-14(11-6/15-8) .650

 —久保克之(鹿児島実) 26-18(12-6/14-12) .591(1/0)

 —枦山智博(樟  南) 26-23(4-7/22-16) .531

㉘❿小坂将商(智弁学園) 25-12(9-4/16-8) .676(1/0)

 —谷脇一夫(高知商) 25-13(9-4/16-9) .658(1/0)

 —上甲正典(済美など) 25-15(16-4/9-11) .625(2/0)

 ここにも過去の名将が多いが、門馬監督の勝率の高さ、また出場回数こそ少ないものの、優勝回数の多さが抜けている。21〜22年に12勝の多賀監督、また21〜24年に12勝の小坂監督が大きく順位を上げた。北野の36敗は最多記録。鹿児島で長くライバル関係だった久保、枦山が勝ち星で並ぶのも興味深い。さらに、31位以下。

近年の優勝監督も続々ランクイン

㉛—玉国光男(宇部商) 24-16(5-5/19-11) .600

㉜⓫永田裕治(日大三島など) 23-19(15-11/8-8) .548(1/0)

 ⓫吉田洸二(山梨学院など) 23-12(18-5/5-7) .657(2/0)

 —古屋文雄(横浜商) 23-8(10-3/13-5) .742

 —斉藤一之(銚子商) 23-10(6-5/17-5) .697(0/1)

㊱⓭岡田龍生(履正社) 22-11(13-8/9-3) .667(0/1)※現東洋大姫路

 —迫田穆成(如水館など) 22-13(7-4/15-9) .629(0/1)

 —山下智茂(星  稜) 22-25(6-11/16-14) .468

㊴⓮小針崇宏(作新学院) 21-14(4-4/17-10) .600(0/1)

 ⓮東 哲平(敦賀気比) 21-13(10-7/11-6) .618(1/0)

㊶⓰青栁博文(健大高崎) 20-9(13-5/7-4) .690(1/0)

 ⓰和泉 実(早稲田実) 20-7(5-3/15-4) .741(0/1)

 —橋本武徳(天  理) 20-9(13-5/7-4) .690(0/2)

 吉田、岡田、小針、東、青栁監督ら、10年代以降の優勝監督がランクを上げている。これ以外、おもな現役監督では中京大中京を率いて09年夏を制した大藤敏行(現享栄)、この夏に準優勝した関東一の米澤貴光両監督が19勝。花巻東の佐々木洋監督が18勝で続き、さらに22年夏に優勝し、翌夏も準優勝の仙台育英・須江航監督も同数と、こちらもハイペースだ。(文中敬称略)

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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