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アマゾンが出品者名と住所の公表に踏み切った理由

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
氾濫する外国製偽造品 押収物件も増加の一途(写真:ロイター/アフロ)

米国でも身元確認を強化

 米アマゾン・ドット・コムは米国のEC(電子商取引)サイトで出品者の名前と所在地の公表を義務付けることにした。

 目的は、偽造品や製品安全不適合品の流通を防止すること。消費者やメーカーが販売業者を確認し、不法な取引に巻き込まれないようにしたり、不正業者を見つけ出したりできるようにするという。

 アマゾンによると、これまで欧州や日本、メキシコでは、これら情報の公開を義務付けていたが、米国でも今年9月1日からこのルールを適用する。

 同社は出品向けのサイトで「お客様が十分な情報を得た上で意思決定できるようにする」と述べている。

販売総額の6割を占めるマーケットプレイス

 外部の業者がECサイトで商品を販売できる「マーケットプレイス」をアマゾンが本格展開したのは2000年。

 同社は収益性の高い外部業者の商品を積極的に取り扱う戦略を打ち出しており、今はその販売額がアマゾンの物品販売総額のほぼ6割を占めている(図1)。

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 米経済ニュースのCNBCによると、アマゾンは現在、世界に200万社以上の出品業者を抱えている。

 うち米国サイトで活発的に事業展開している業者は46万1000社。アマゾンの各国マーケットプレイスの中で米国は世界最大規模だという。

 しかし、そこには、偽造・模倣品、製品安全不適合品、期限切れ商品が多数あると指摘されている。同社は対策として社内に法令遵守チームを設置。業者の商品を詳しく調べている。

 先ごろは、偽ブランドなどの偽造品を販売する業者の法的責任を追求する専門組織「偽造品犯罪対策チーム」を設置した。

トランプ氏、偽造品撲滅に向け大統領令に署名

 しかし、それでも監視の目をすり抜けて出品される例が後を絶たず、米議員や米政府がアマゾンなどのEC企業に抜本的な改善策を講じるよう圧力をかけている。

 今年1月には米国土安全保障省(DHS)がECにおける偽造品や海賊版などの不法取引に関する報告書をトランプ米大統領に提出した。

 これによると、2018年における不正商品の摘発・押収件数は3万3810件で、2000年の3244件から10倍以上に増大した。

 この報告書では、米政府が実施すべき11項目の「緊急行動」と、ECやマーケットプレイス事業者が実施すべき10項目の「ベストプラクティス(運営手法)」を提言。

 アマゾンなどに対しては、出品者の身元調査を徹底することなどを求めている。

 また、今年2月にはトランプ大統領が海外偽造品の販売防止に向けた大統領令に署名したと、ロイターが報じた

 大統領は「偽造・模倣品は、米国経済に損害を与え、米国民の職を失わせ、犯罪行為を助長する。結果として消費者に不利益をもたらす」と問題視。

 アマゾンや米ウォルマートなどの海外製品を取り扱う企業が、ECサイトで偽造品を販売しないようにする「適切な措置の検討」を国土安全保障省に指示し、輸入禁止品を扱う企業や違反率の高い企業を特定するための規則の策定も求めた。

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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