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NY金18日:イベント前で小動きも、FOMC後は二桁の急伸

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

COMEX金4月限 前日比3.10ドル高

始値 1,148.10ドル

高値 1,153.80ドル

安値 1,144.90ドル

終値 1,151.30ドル

引け後に米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明発表を控える中、ポジション調整中心の小動きに。ただ、FOMC後は為替相場がドル安に振れたことが好感され、1,165~1,175ドル水準まで急伸している。

アジア・欧州タイムは、FOMCを控えて積極的に仕掛けるような動きはみられず、1,150ドルの節目を挟んで揉み合う展開になった。イベント前のショートカバー(買い戻し)と先安感を背景とした戻り売りが交錯し、明確な方向性を打ち出せていない。ニューヨークタイム入り後はやや利益確定の買い戻しが優勢になるも、1,150~1,155ドルのレンジまで切り返すのに精一杯だった。

こうした状況でFOMCの結果が公表されたが、為替市場ではドルロングの手仕舞い売りが先行し、それと連動する形で金相場ではショートカバーが先行した。米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げ着手の時期を模索するという基本フレームには変化がみられないが、マーケットが予想していた程にはタカ派ではないとの見方が広がったことが、ドル買い・金売りポジションの整理を誘った模様。FOMC後の上昇幅は15~20ドル程度に達している。

FOMC声明では、金利フォワードガイダンスの利上げまで「辛抱強くいられる」との文言が削除され、利上げ着手に向けての環境整備を一段と進めた格好になっている。ただ、引き締めが適切になるのは「労働市場が一層改善され、インフレ率が中期的に2%の目標に戻っていくと合理的に確信した場合」と、今後の統計次第であることを再確認している。最近のインフレ指標の低迷状態を考慮すると、少なくとも利上げが急がれる環境にはなく、実際に4月会合での利上げについては「依然として、可能性低い」として、利上げ着手は最短でも6月以降の会合になるとの見方を示している。

これは金価格に対してネガティブ材料とも評価できる内容だったが、今回のFOMCではイエレンFRB議長の記者会見とFOMC参加者の経済予測も発表されており、この二つが声明文から発せられたドル相場上昇・金相場下落を支持するムードを後退させている。イエレンFRB議長は、今回の金利フォワードガイダンス修正を受けて、利上げに対して性急になることは意味しないと、改めて早期利上げ観測を牽制している。またFOMC当局者の金利誘導目標予想では、2015年末が0.625%とされており、昨年12月時点の1.125%から大きく下方修正されている。年内の利上げ予想という基本フレームには変化がないものの、少なくとも当局者の金利上昇期待が後退していることは間違いなく、ドル買い・金売りの勢いは削がれた格好になっている。

もっとも、この辺は先月のイエレンFRB議長の議会証言で当然に予想されていたものであり、改めて金相場が本格上昇するような状況にはない。これまでの急ピッチなドル買い・金売りの反動から値幅は大きくなり易いが、利上げへのカウントダウンは着実に続いている以上、引き続き金相場は売りスタンスが基本となろう。依然として、ドルインデックスやCRB商品指数などとの比較では、割高感のある価格水準と評価している。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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