小保方さんが男性だったら。あるいは文系だったら。 ~リケジョが背負う厳しい宿命~
理系=男の学問
一連のSTAP細胞に関する騒動の中で、注目の集まっている「リケジョ」。いわゆる「理系女子」「理系の研究に携わる女性の大学生や研究者」のことです。
ではそもそも、どうして「リケジョ」がメディアから注目されるのかというと、単に数が少なくて珍しいから、というだけではないように思われます。
その理由は「理系=男性の世界」だから。
「理数系の学問は男性のほうが得意」「数学や物理の世界は男性の聖域」というイメージが、世間の常識としてできあがっています(実際に男性のほうが得意なのか、そもそも、何をもって優れているとするのか、はさておき)。
多くの人々が心のどこかで「理系は男の学問」と思っていて、そこで女性が活躍するものだから、良くも悪くも注目を集める。男性はとかく序列と勝ち負けを気にしますから、当然、その注目には嫉妬も交じってきます(「お? 俺たちの縄張りでよそ者が暴れているぞ」)。
男性が得意とされている分野での女性(特に若い女性)の活躍は好奇心の対象となり、結果的に、激しい敵視にさらされることもありうる、ということです。
リケジョと女性格闘家の共通点
男社会で女性が活躍すると、好奇の目にさらされ、そのことが追い風に働く場合もあるけれど、とかくルックスや私生活に話題が集まりがちという例は、他にもあります。
たとえば、
女性格闘家(強さ)、身長180センチの女性(身長)、女医・女弁護士(キャリア)、東大女子(学歴)、年商100億円の女性起業家(収入)
は、どれも「本来、男性が備えているべき資質を持った女性」として目立ちます。その扱いの特殊さは、それぞれ、
美人モデル、身長150センチの小柄な女性、女性看護師・女性秘書、女子大生、ミスユニバース日本代表
の穏当さと比べれば、一目瞭然でしょう。
もちろん、後者には後者の努力と苦悩があります。が、少なくとも、男性から「敵視」されることはありません。
女子は3割以下。東大でもリケジョは大変
最近、現役の東大理系女子(2年生)と話したのですが、彼女が置かれている環境もなかなかにタフなものでした。
そもそも東大は、女子学生の割合がなかなか3割を超えない「男子大学」(そのことを解決しようと、大学側は全国各地の女子校に、東大を受験してくれるようアプローチしています)。中でも理系クラスは、クラス50人の中で女性はひとりかふたりなんてことはザラなほどの、偏り方。
彼女のクラスも同様で、華やかなルックスもあだとなり、ツイッター上で性的な話題でからかわれたり、試験勉強の際に仲間はずれにされたりしたそうです。
すべての理系男子がそんな幼稚ないじめをしているわけでは断じてありませんが、やはり文系クラスのほうが共学っぽい雰囲気で、平和な印象です。
小保方さんが注目を浴びた本当の理由
論文発表当時、小保方晴子ユニットリーダーが女性であることを、発表内容よりも大きく取り上げたのは、世界のメディアで日本(と韓国)だけだったといいます。
彼女が若く(1983年生まれ)、研究室ではかっぽう着を着るなど、いわゆる「女性らしい」雰囲気(演出)だったことも、メディアにとっては格好の素材でした。そこで「リケジョの女子力」などの枕詞を冠し、彼女の成果を称賛したのです。
その後、彼女は一転して苛烈なバッシングにさらされました。中には私生活にずかずかと踏み込む媒体も。その偏執ぶりはまるで「ほら、言わんこっちゃない」「勝手に俺たちの村に入ってくるからだ」とでも言っているようでした。
そうした狂騒を経て、先日の記者会見(「涙」が取りざたされるあたりも、女性ならではでした)をきっかけに、議論はようやく「STAP細胞はあるのかないのか」に収束しつつあります。
彼女の主張の妥当性、理化学研究所の姿勢、メディアのモラルについては、ここでは触れません。
ですが少なくとも、
もし彼女が理系じゃなかったら(たとえば、文学者だったら)、
もし彼女がいわゆる「かわいらしい」容貌でなかったら(たとえば、ボサボサ髪のベテラン研究員だったら)、
あるいはそもそも、小保方ユニットリーダーが男性だったら……。
これほどの過熱ぶりにはつながらなかったのではないか、そう思わずにはいられません。