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乾癬、アトピー性皮膚炎、白斑など - オートファジー異常が引き起こす皮膚の自己免疫疾患

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

【オートファジーとは何か?自己免疫疾患との関わり】

オートファジーとは、細胞内の不要なタンパク質や傷ついたオルガネラ(細胞内小器官)を分解・リサイクルする仕組みのことです。この働きにより、細胞内の恒常性が保たれています。近年の研究で、オートファジーが免疫系の制御にも重要な役割を担っていることが明らかになってきました。

オートファジーの異常は、自己免疫疾患の発症や進行に関与していると考えられています。自己免疫疾患では、本来は体を守るはずの免疫系が、自分自身の細胞や組織を攻撃してしまいます。オートファジーが適切に機能しないと、不要な細胞内物質が蓄積し、炎症反応を引き起こすことがあるのです。

【自己免疫性皮膚疾患とオートファジーの関係】

皮膚は免疫機能を持つ重要な臓器の一つです。自己免疫性皮膚疾患では、皮膚の恒常性維持とバリア機能にオートファジーが深く関わっています。

例えば、乾癬やアトピー性皮膚炎では、オートファジー関連遺伝子の変異や、オートファジー関連タンパク質の発現異常が報告されています。これにより、表皮角化細胞の分化や増殖に異常が生じ、皮膚のバリア機能が低下します。また、炎症性サイトカインの産生が促進され、病態を悪化させる可能性があります。

全身性エリテマトーデス(SLE)や強皮症でも、オートファジーの過剰な活性化が見られ、疾患の進行に関与していると考えられています。オートファジーは、自己免疫性皮膚疾患の発症メカニズムを理解する上で、非常に重要な概念だと言えるでしょう。

【オートファジーを標的とした新しい治療戦略】

オートファジーの異常が自己免疫性皮膚疾患の病態に関与していることから、オートファジーを標的とした治療法の開発が期待されています。

例えば、mTOR阻害剤のラパマイシンは、オートファジーを誘導する作用があります。乾癬モデルマウスにおいて、ラパマイシンの塗布により、オートファジーの抑制が改善され、酸化ストレスや炎症反応が軽減したという報告があります。

SLEの治療に用いられるグルココルチコイドやラパマイシンも、オートファジーに影響を与えることで症状を改善させている可能性があります。今後、オートファジーを直接制御する治療法や、従来の治療法とオートファジー調節薬を併用する治療戦略など、新たなアプローチが開発されていくことが期待されます。

自己免疫性皮膚疾患の発症メカニズムにオートファジーが深く関わっていることが明らかになってきました。オートファジーの異常が、皮膚のバリア機能の低下や炎症反応の促進につながり、病態を悪化させている可能性があります。オートファジーを標的とした新しい治療戦略が、自己免疫性皮膚疾患の克服につながることを期待したいと思います。

参考文献:

1. Lin Y, Wu X, Yang Y, Wu Y, Xiang L, Zhang C. The multifaceted role of autophagy in skin autoimmune disorders: a guardian or culprit? Front Immunol. 2024 Apr 16;15:1343987. doi: 10.3389/fimmu.2024.1343987. PMID: 36034567; PMCID: PMC10000825.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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