将棋人口は460万人、囲碁人口は130万人に減少――ファンを増やす「神の一手」はあるのか
10月31日に発行された「レジャー白書2023」(日本生産性本部・編集発行)によると2022年の将棋人口は前年の500万人から460万人、囲碁人口も前年の150万人から130万人と減少した。
将棋界は藤井聡太八冠誕生の過程で「観る将」と呼ばれる新たなファン層が増加し盛り上がっているように見えるが、実際に盤をはさんで対局する愛好家が減少する傾向は変わっていない。
囲碁界もこの数十年の参加人口漸減が止まらず、このままでは数年のうちに100万人割れの可能性が高い。
ただし、レジャー白書の統計では15歳未満と80歳以上のデータは集められておらず、実際はこの数字より多い参加人口がいると考えられる。
将棋界はいまこそすそ野拡大を
21歳で棋界の頂点に立った藤井聡太八冠(竜王・名人・王位・叡王・王座・棋王・王将・棋聖)の活躍でこの数年将棋界は各種メディアに大きく取り上げられた。全国各地で行われる将棋イベントもかつてないほどの盛況という。一方で大会などの参加者や将棋教室に習いに来る子供の数は増えていないという普及現場に携わる人たちからの声も聞こえてくる。
数の多い野球ファンやサッカーファンが必ずしもその競技をプレーするわけではないことから将棋界の将来は決して暗くないと思われるが、プロ棋士の団体である日本将棋連盟がリーダーシップをとって、減少傾向にある「指す将」=対局するファン層も増やす工夫をすることが必要だろう。
来年2024年には日本将棋連盟は東西の将棋会館が新たに完成する。これを契機として普及への取り組みが、より活性化すると信じている。
囲碁界は若年層への普及を
囲碁界が厳しい状況にあるのは前年と変わっていない。同白書によれば2012年の400万人と比べて競技人口は3分の1以下に減少、2022年の性・年代別構成比は男性70代の占める割合がトップで29.8%。男性と女性の10代、20代を合わせても19.1%と若年層の愛好者が少ないのは明らかだ。
とはいえ筆者は囲碁人口増加の可能性がないとは考えていない。筆者は勤務する大学で長年「知的ゲーミング演習」という講義を担当しており将棋・囲碁・バックギャモンの3つの知的遊戯を教えているが、どの競技も受講者は熱心に学び反応は上々、全くルールを知らずに始めて囲碁に夢中になる学生も少なくない。
来年創立100周年を迎える日本棋院は昨年末に囲碁入門アプリ「囲碁であそぼ!」(無料)をリリースした。筆者もこのアプリを講義の中で自習用に推奨している。また創立100周年記念事業の一環として来年女子プロリーグ(団体戦)を新設するとのアナウンスもされた。1999年に始まった人気囲碁漫画「ヒカルの碁」では「神の一手」という言葉が物語のキーワードになっていたが、現実世界では入門者向けサービスや観戦を好むファンを増やす地道な努力を継続することが重要で、数年以内に囲碁人口が増加に転じることを期待している。