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【英会話】a bit of health conditions って言ったら、首を振られた なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 仕事で英語を20年ほど話していますが、話し始めたころに思ったのはちょっと息苦しい言語だなということでした。
 相手に解釈を任せて余白を愉しむ日本語を母語にしているために、具体的に明瞭に伝えて情報交換(意見交換)を愉しむ英語とのギャップが息苦しいんです。ぼかした言い方が恋しくなっちゃう。

 もちろん「世の中にはそういう考えもあるのか、その考えの理由はそういうことなのか、でも、おれはこういう考えがあって、それはこういう理由でね」という英語の突っ込んだ理窟っぽいやり取りは、現代哲学なんて専攻した私にとっては好物なんですが、ちょっとそればっかりだと苦しい。

 それで、余白の表現、相手に解釈を任せる言い回しはないとかねぇ(博多弁)、と思ってEnglish man の友人のRichとの会話でアンテナを張っていると、見つけました。
 ちょっと自分の意見があいまいだったり、詳細まで相手に伝えなくていいと判断したりしたときにRich、a bit of ~ って使うんです。意味としては少数の~ 少量の~ という意味なんですが、それに加えてある程度の という含みを持たせるニュアスがある。a bit of luck (ちょっとラッキーがあってね) なんて言い方ができる。
 しかも、a bit の形で形容詞の前に置いて、ちょっと疲れた a bit exhausted なんて言い方も出来ちゃうという優れもの。こいつはいいものみっけたな、と思ってよく使っています。

 そういうアンテナを張っていると、Richはわたしには言わないですが、Sort of なんて言い方もする。まあねぇ という意味で、おなじくあいまいだったりするときに使いますが、Richは相手にその話をしたくないようなときに使っているようです。

 話は逸れましたが、相手に解釈を任せたいときなんかに私はa bit of やa bit を多用するわけですが、このあいだやらかしました。きちんとイメージから英語は作らないといけません。ちょっと~ と日本語が浮かんだからと言ってなんでも、a bit で手間省きを反省です。

 枕が長くなっちゃいましたけど、そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は、読むとぼかした言い方、余白の表現を得られるお得なエッセイです。

ちょっと両親は基礎疾患を持ってるけどね。

 枕に出てきたRichは私の10歳年下でして40代中盤。これぐらいの年代になって来ると両親がらみで気にかかることが多くなるようで、この間のこと、Richに、徳さんの両親は元気にしてるの? って訊(き)かれた。親が60代とか70代になるというのは、子どもとしてはいろいろありますからね。
 まぁ、ありがたいことに、うちの両親は健在でして、それをこういって伝える。

Thankfully, Mum and Dad are still healthy. (両親が健康なのはありがたいよ)
They have a bit of health conditions, though. (ちょっと基礎疾患を持ってるけど)

 基礎疾患の内容はRichの想像に任せてぼかそうと思ってa bit of を使ったんですが、それを聞いたRichがさらっと首を振る。
 みなさん、a bit of の部分に問題があるのはお気づきかと思いますが、なにがいけないかお判りになるでしょうか?

 もちろん、いけないのはa bit of のイメージとhealth conditionsイメージがずれてることです。a bit of というのは一つのもののちょっと ってイメージでhealth conditions という複数形にはそぐわないんですね。
 なので、a bit of を優先するなら、a bit of a health condition としないといけない。でも、残念ながら、両親ともに基礎疾患を持っておりまして、health conditions は崩せない。

 さて、どうしたものかと思っていたら、ある程度 ってことでしょ? とRichがのたまう。ああ、そういうことかと、

They have some health conditions.

というと、Richはニッコリ。しっくりくる英語だと褒められました。some のいくらかのというイメージがある程度に通じるんです。ということで、

ちょっと~ という余白(含み)を持たせた言い回しをするときは、
形容詞の時は、a bit 形容詞
単数名詞や数えない名詞の時は、a bit of (a) 名詞
複数名詞の時は、some 名詞s
を、使ってください。相手の解釈を任せることができて、ちょっと息苦しさが減りますよ。お試しを。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

 あ、そういえば、今度の月曜は敬老の日。柄にもなく両親のためにちょっとなにか贈りますか。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentとして外国人のマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されながらも奮闘する。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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