北朝鮮国民が緊張…「謎の薬物で眠らされる」新たな恐怖
北朝鮮では、コロナ禍と国境閉鎖、それに伴う経済的苦境で犯罪が増加していると伝えられている。統計が発表されないためその全容は不明だが、北部の両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)などでは強盗が相次ぎ、当局が緊張していると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
先月1日の昼間、恵山市内の恵山洞のマンションに客が訪ねてきた。住人の女性が玄関ドアを開けるや、マスクを被った2人の男が押し入り、「大人しくカネを出せ、騒がなければすぐに帰る」と、刃物を突きつけて脅した。家には10歳になる息子がいて、危害が加えられることを恐れた住人は、命だけは助けてほしいと、タンスからカネを出して犯人に渡した。2人と見張り役の1人はカネを持って逃走した。
(参考記事:美女2人は「ある物」を盗み公開処刑でズタズタにされた)
夫は両江道貿易局に勤め、妻は高級靴の卸売業を営んでおり、町内でも指折りの金持ちとして知られ、強盗に盗まれたカネは10万元(約200万円)とも100万元(約2000万円)とも噂されている。
恵山市安全部(警察署)は、周辺の住民に対し、犯人を目撃した、何かを知っているならば、すぐに通報するよう呼びかけているが、1カ月経った今でも逮捕に至っていない。真っ昼間に起きた強盗事件に、住民は不安を隠せずにいる。
一方、首都・平壌に近い港町の南浦(ナムポ)でも、強盗事件が相次いでいる。現地の情報筋の話では、8月の1カ月間に市内で起きた窃盗は20件を超える。同月26日には、臥牛島(ワウド)から自転車に乗って徳洞(トクトン)に行く途中だった女性が、何者かに押し倒され、自転車を奪われる事件が起きた。情報筋は「少しでも油断すると自転車が盗まれる」と、現地でも治安状況がかなり悪化している状況を伝えた。
なかでも15日夜に起きた、情報筋の友人宅で起きた窃盗事件は、かなり特殊なものだ。
犯人は家の窓から侵入し、テレビ、自転車、8キロもの食べ物など、金目の物をことごとく盗んでいった。その間、住人は全く目を覚ますことはなく、情報筋は「事前に何らかの薬を散布したのでは」と考えている。気体の吸入麻酔薬を使った可能性が考えられる。
なお、平壌では2020年5月、平壌総合病院の建設現場で働く兵士たちが、特殊なガスを撒いて住人を金縛り状態にした上で、電化製品を盗む事件が相次いで発生した。