観測困難で謎だらけの「天の川の裏側」で未知の巨大構造を新発見!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「天の川の裏側で未知の巨大構造を新発見!?」というテーマで動画をお送りします。
●観測困難な「未知の領域」
近年は観測技術が大きく進歩し、地球から何十億光年、さらには100億光年以上彼方にある超遠方の天体や構造まで観測できるようになりました。
ですが全天のうち、他の領域と比べて極めて観測が困難であり、遠方の天体がほとんど発見されていない領域が存在します。
それが、「天の川の裏側」です。
天の川とは、私たちが属する天の川銀河の中心部方向です。
天の川銀河は円盤状の構造をしているため、太陽系が位置する天の川銀河の内部から、星が高密度に集まって明るい銀河中心部方向を見ると、線のように見えます。
天の川の方向には無数の恒星だけでなく、ガスや塵などといった星間物質も大量に存在します。
これらはその背後にある天体から地球に向けて放たれた光を吸収してしまい、地球からの観測を困難にしています。
この可視光で観測困難な領域を「銀河面吸収帯」と呼びます。
具体的には全天のうち10~20%の領域が観測困難であり、天の川銀河外の天体がほとんど発見されていません。
背後に何があるのかわからない、「未知の領域」です。
●近年の銀河面吸収帯観測成果
私たちが目に見える光である「可視光線」は星間物質に吸収されてしまいますが、さらに波長が長い「赤外線」や「電波」は吸収されにくいため、それらを観測することで銀河面吸収帯の背後にある天体の情報を得ることができます。
そのため近年は赤外線や電波を用いた観測により、銀河面吸収帯における観測成果が出ています。
それらのいくつかを紹介します。
○隠された数百の銀河を観測
比較的最近の2016年には、観測困難な銀河面吸収帯付近の領域を電波で観測した研究結果が発表されています。
観測の結果、地球から約2.5億光年の距離に、実に883個もの銀河を発見しました。
そのうち3分の1程度が新発見の銀河だったそうです。
2.5億光年というのは極めて遠い距離ではあるものの、現代の技術ではそれ以遠の天体も数多く発見されているため、天文学的にはむしろ比較的近い距離と言えます。
そのような近場でこれまで多数の銀河が未発見だったのは、まさに銀河面吸収帯による影響と言えます。
○新たに銀河団を発見
そして2022年10月末には、銀河面吸収帯の方向に約30億光年も彼方に、近所にあるために互いに重力的に引き合う銀河の集団である「銀河団」を新たに発見したと発表がありました。
この画像の赤い円内に、銀河団を構成していると見られる58個の銀河が存在し、右にはそれぞれの銀河が表示されています。
そのうち5個の銀河に対して分光観測での赤方偏移の推定が行われ、詳細な距離の測定が行われています。
その結果これらの銀河はどれも地球から約30億光年の領域に位置する銀河団を構成する銀河であると判明したそうです。
このような未発見の構造が続々と発見されることから、赤外線や電波などの波長を用いた銀河面吸収帯方向の観測が今後も行われていくことが期待されます。
●謎の巨大重力源「グレートアトラクター」
銀河面吸収帯の領域で天の川銀河外の天体が新たに発見されるたび、話題になる構造があります。
それは未知の巨大重力源「グレートアトラクター」です。
グレートアトラクターとはどんな構造なのでしょうか?
○ハッブル流と特異運動
この宇宙は膨張しており、その効果で自分を中心として遠くの天体ほど速い速度で遠ざかっています。
この宇宙膨張に起因する後退速度は、「ハッブル流」と呼ばれています。
それに対して宇宙にあるあらゆる天体は、近所にある銀河や銀河団などの重力で引かれることによる運動もしています。
これを「特異運動」と呼びます。
地球から遠方の銀河を観測し、地球に対する運動が分かった時、そこからハッブル流の成分を差し引いて残ったものが特異運動です。
○銀河団すら引き寄せる何か
私たちの天の川銀河は、アンドロメダ銀河やさんかく座銀河などを含む50個程度の銀河と重力的に引き合っていることがわかっていて、これらの銀河群を局部銀河群(ローカルグループ)と呼んでいます。
更におとめ座の方角に5000万光年ほど離れた所には、M87という巨大な銀河を中心とした1300個以上の銀河から成るおとめ座銀河団という巨大な銀河団も形成されています。
ちなみに銀河群と銀河団は両方とも重力的に引き合っている銀河の集団で、その銀河の数が数十個程度だと銀河群、それ以上に大規模だと銀河団という風に呼ばれます。
おとめ座銀河団は非常に巨大な銀河団です。
特に有名な銀河群や銀河団を紹介しましたがこれらはほんの一例で、それ以外にもこれまでに多くの銀河や銀河の集団が観測されています。
単体の銀河でさえ恒星が億~兆単位で集まった超巨大な構造なので、その質量は尋常ではありません。
天の川銀河も太陽の1.5兆倍程度もの質量を持っているとされています。
そんな銀河が多数集まった銀河群・銀河団の質量の大きさはもはやいうまでもありません。
これらはそれだけ巨大な構造であるという事です。
ですがこれまでの特異運動の観測によって、なんと局部銀河群やおとめ座銀河団を含む半径6500万光年程度のさらに巨大な銀河の大集団「おとめ座超銀河団」全体が、未知の巨大重力により一方向に引かれていることがわかりました。
天の川銀河だけでなく、巨大な銀河団含め多数の銀河が同じ重力源で引かれるというのは、想像を絶します。
この巨大天体は銀河面吸収帯に隠されており、未だ正体は謎のままだそうです。
この天の川銀河の裏側に隠された正体不明の巨大重力源は、「グレートアトラクター」と名付けられています。
グレートアトラクターの質量は、実に太陽の5京倍と推定されています。
天の川銀河の裏側は、グレートアトラクターの存在も含め、未知の構造にあふれた魅力的な領域です。
つい先日新たに発表されたような新発見が今後も続々ともたらされ、この領域の謎が解明されるのが楽しみです。