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10分に1度の劇的展開!! 年末特番に飽きたときにもスカッとできる、状況変化が激し過ぎな映画3選

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

いよいよ年末という空気がただよってきましたね。テレビでも年末特番や長時間のスペシャル番組が多くなる時期です。
ところで、年末特番はまったりと見るのには良いのですが、展開がのんびりでちょっと刺激が足りないと思うことはありませんか?

今回は、そんなときにオススメしたい展開の激しい映画を紹介します。

紹介するのはサスペンス、アクション、コメディの3種類です。いずれも10分に1度くらい大きな展開がある作品で、視聴後には連続ドラマを1シーズン見たような満足感が得られます。

10分ごとにリセットされて新展開へ

メメント

こちらは2000年の映画です。クリストファー・ノーラン監督がブレイクするきっかけとなった作品で、監督の弟ジョナサン・ノーランの原案です。ジャンルはサスペンスあるいは、ミステリーになると思います。比較的低予算で作られた作品ですが、これ以降のクリストファー・ノーラン監督作品にも通じる難解かつ斬新な構成で高く評価されています。

クリストファー・ノーラン監督の作品と言えば、レオナルド・ディカプリオ主演の『インセプション』のほか、『インターステラー』、『ダンケルク』、『TENET テネット』などを思い浮かべる人が多いでしょう。そして、「原爆の父」と呼ばれる人物を描き、日本での公開が議論されていた『オッペンハイマー』(来年公開予定)もノーラン監督の作品ですね。

ノーラン監督は多くの作品で自ら脚本を手掛けています。それらの作品の特徴は何と言っても、その「構成」にあるでしょう。
脚本を書いた本人が監督もしているからこそ実現できる複雑なプロットと難解なストーリー展開。それらが最後で一つに繋がったときのスッキリ感は病みつきになります。

本作『メメント』は、そんなノーラン監督の初期の監督・脚本作で、独特な作風の原点を見ることができます。現在の完成されたノーラン作品と比べるとやや粗削りな部分もありますが、そこが逆にこの映画の親しみ易さになっています。

内容は、10分間しか記憶を維持できない男が、自身の身体に彫った刺青やポラロイド写真をヒントに妻を殺害した犯人を追う物語。
およそ10分刻みでブツ切れになり、少しずつ時間を遡っていく作りなのですが、そこまで途切れ途切れという感じはしません。複数の話が並行で展開される複雑な内容が、思いのほか自然な形で繋がっていきます。

最初の20分くらいはちょっとワケが分からないかも知れませんが、だんだん内容を理解してくると得体の知れない期待感が膨らみ、夢中になって見られるはずです。
いろいろな伏線が繋がっていき、最後に一本の直線になる爽快感はたまりませんよ。

ミステリー、サスペンスなどの推理物やSF作品が好きな方には広くオススメできる作品でした。

要素が盛り沢山で何の映画だったっけ?

ANNA/アナ

こちらは2019年の映画です。『レオン』、『TAXi』シリーズ、『トランスポーター』シリーズほか、多くのアクション作品の監督や脚本で知られるリュック・ベッソンの監督作。ジャンルはスパイ・アクション映画です。

本作は主人公のアナの立場や状況が二転三転するストーリーが最大の魅力です。

全体を通して見ればスパイ・アクション映画なのですが、「モデルにスカウトされた女性のシンデレラストーリー」、「若者たちの織りなす荒んだ日常」、「危険な恋愛に興じる男女のラブストーリー」、「女性同士の友情と恋愛」、「運命に翻弄される女性の悲劇」、「鮮やかな詐欺の映画」など、様々な要素が盛り込まれています。

一つ一つの要素がしっかりと作られているので、その部分のストーリーだけでも楽しめる出来栄えです。任務遂行中でないシーンだけを見せられたなら、スパイ映画だとは気づけないことでしょう。
映画『007』シリーズや、アニメ『スパイファミリー』、『攻殻機動隊』などが好きな方にもオススメです。

主人公のアナ(演:サッシャ・ルス)は、見ていて辛くなるくらい過酷な運命に翻弄され、KGBやCIAに利用されたあげく、自由になるのは死ぬときだけだと突き付けられます。そんな苦境からアナを救ってくれる存在はいったいどこにいるのか。そこに注目しながら見ると、より本作を楽しめると思います。

回想やフラッシュバックを多用して「実はこうだったんです」という種明かしをするややアンフェアな構成と、いろいろなシーンを描き過ぎたためかリュック・ベッソン監督の過去作『ニキータ』、『レオン』、『マラヴィータ』などと比べるとドラマ性やアクションシーンの完成度が低いことが災いしたのか、本作は批評家からの評価があまり高くありません。
ですが、気取ったところがなく気楽に見られて、なかなか良い作品です。
コロコロ変化するスピード感のある展開は、2時間があっという間に感じるほど。映画数本を見たのと同じくらいにいろいろな要素を、ひとまとめに楽しめました。

また、エンタメ映画らしいすっきりした作品ですので、重い後味の映画は見たくない気分のときにも安心して鑑賞できます。
ラストシーンはある人物の悪態で終わりますが、その一言で物語が引き締まり、最高の余韻を味わいながらエンドロールを眺めることになるはずです。

もぐりの重役社員が奮闘する

摩天楼はバラ色に

こちらは1987年の映画です。監督はハーバート・ロスで、主演はマイケル・J・フォックスです。ちなみに、タイトルの読みは「ニューヨークはばらいろに」で、原題は「The Secret of My Success」、直訳すると「私の成功の秘密」です。邦題はラブストーリーのニュアンスが強いですが、原題にはサクセスストーリーのニュアンスがありますね。ジャンルはコメディー映画です。

古い映画ですが、公開当時よりも今見たほうが楽しめそうな内容です。
邦題タイトルに安っぽいメロドラマ感があって手が伸びにくいかもしれませんが、コミカルなサクセスストーリーと、サブプロットのラブストーリーのバランスが良くて、コメディーとしてもオフィス・ドラマとしても楽しい作品でした。

田舎町のカンザスに住んでいるブラントリー・フォスター(演:マイケル・J・フォックス)は大都会に憧れて、ニューヨークの会社に就職します。
ところが、映画開始5分、ニューヨークに出たばかりでブラントリーは失業してしまいます。さらに10分の辺りで犯罪現場を目撃し、ニューヨークの負の側面を知ることになります。
けれども、ブラントリーはめげません。
ニューヨークにいる遠縁の叔父を頼り、ブラントリーは大企業の配送係になります。作業系職種である配送係は、企画・管理職の人たちから見下されていて、とても出世は望めない立場でしたが、ブラントリーはあの手この手で成り上がっていきます。
「帰りの航空券なんて必要ない。カンザスに戻るときは、自家用ジェットだ」と宣言して故郷を出てきたブラントリーですが、その強がりが現実になる日は来るのでしょうか?

配送係でしかないブラントリーが、重役になりすまし、もぐりの役員として取締役たちの会議に乗り込む。そんな展開もある本作。作中では意表を突く出来事がいくつも起こります。そして、それら一つ一つが上手くコメディーになっています。

ネタバレしないために詳細は伏せておきますが、序盤で会社の重役夫人とブラントリーとが織りなす車内のシーンは、セリフ一つ一つが笑えます。その後のプールシーンでジョーズのテーマソングが流れる演出も可笑しくて良いですね。重役婦人の正体を知ったときのブラントリーの表情もたまりません。
他にも秀逸な演出やBGMがあるので、ご覧になる際には音楽や背景にも注意を向けつつ楽しんでください。

オシャレな雰囲気や、ウイットに富んだ言い回しで楽しませるシチュエーションコメディ。日本ではあまり作られないジャンルですが、海外ドラマが好きな方なら、きっと好きになれる作品だと思います。

なお、字幕版は文字数の関係で、ちょっとした英語のニュアンスを聞き取りながらでないと伝わりにくいギャグやジョークがあります。英語の聞き取りが得意な方以外は、吹き替え版での視聴がオススメです。

今回紹介した以外にも、レンタルや配信などで手軽に見られる作品は数えきれないほどあります。長期休暇の前後の時期にはYouTubeなどで無料公開される作品もあるので、そちらもチェックしてみてはいかがでしょうか?

また、他の記事や、X(旧Twitter)でも、映画やドラマ、アニメを紹介しています。年末年始にオススメできる作品も沢山あるので、ご興味のある方は合わせてご覧ください。

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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