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歴代最強二塁手・山田を獲得せよ。 仮想トレード、もしもの相手は菊池、菅野、筒香・・・

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

山田1人で7勝を稼ぐ

打率.350、29本塁打、72打点 OPS1.170

前半戦終了時のヤクルト・山田の成績である。まだ50試合以上残しているにもかかわらずシーズン成績だとしてもかなり優秀な数字だ。

この時点でWARは7.4。WARとは、打撃だけでなく守備、走塁も含めて代替可能選手(ファームから昇格させるなどして容易にまかなえる平均より実力の劣る選手)が出場した場合と比べてチームにどれだけの勝利をもたらしたかを示した指標。算出方法は複雑かつ複数あるが一応の目安としては

0~1 補欠クラス

1~2 スタメンクラス

2~3 レギュラークラス

3~4 主力クラス

4~5 オールスタークラス

5~6 スーパースタークラス

6以上 MVP級

試合を重ねる毎に積み重ねていく指標だから当然シーズンが進むにつれて数字も大きくなる。88試合消化時点で7.4とはすでに針を振り切っているが山田の活躍ぶりを見るにまだまだ数字は伸びそうだ。

山田をトレードで獲得しようと思ったら・・・

もし、これだけの選手をトレードで獲得しようと思ったら誰を出せば釣り合いが取れるのか。

日本では移籍市場が活発ではなく、最近の動きとしてはヤクルト・八木とオリックス・近藤一のトレードがあったぐらい。八木は今季1試合に先発し3回4失点、近藤一は5試合に先発し防御率8.24だったから共に一軍戦力になっているとは言い難い。FAを除けば大物選手が移籍することはほとんど無い現状だが、本当に山田を獲得しようと思ったら主力の流出は避けられない。

トレード相手を考える際に基準としたのはリーグの平均的な選手と比べてどれだけ得点を増やしたか、失点を減らしたかを示すRCAAという指標。この指標は野手の方が大きくなる傾向があるため、投手は甘めに考え、先発に比べてイニング数の少ないリリーフ投手についてはさらに甘くした。また、RCAAはリーグ平均と比べた数値なのでセリーグのみを対象としている。山田のRCAAは58.42点。つまりチームに約60点のアドバンテージをもたらしたことになる。これに近い選手の組み合わせは・・・

広島

鈴木 23.75

丸 20.57

菊池 13.70

キクマルコンビと今季大ブレイク中の鈴木、3人足してようやく山田1人分となる。ヤクルトにしてみれば山田が抜けるセカンドのポジションを菊池が務め、坂口、バレンティン、雄平、鈴木、丸と層の厚くなった外野陣を調子に合わせて起用しつつ代打の選択肢も豊富になる。それにしてもリーグ平均より100点近く得点を挙げているチームのレギュラー3人を放出しなければならないとは改めて山田の凄さが浮き彫りになる。

巨人

菅野 30.70

澤村 10.36

得点力不足に悩むチームにとってOPS1.1台の山田は喉から手が出るほど欲しい人材。RCAAで30.53点を叩き出す坂本とコンビを組めればそのままWBCで見られそうな最強の二遊間が誕生するが、そのためにはエース+守護神クラスの大きな流出が伴う。チーム防御率4.86のヤクルトにとってはローテの柱と最終回のマウンドがしっかりすることで、安定した戦いが望めるトレードだ。

DeNA

筒香 42.51

石田 10.61

山田獲得のためには史上初の3試合連続複数本塁打という離れ業をやってのけた日本の主砲に加えて、将来性豊かな若き左腕がチームを去ることになりそう。ヤクルトが本拠地とする神宮とDeNAが本拠地がする横浜スタジアムはともに一発の狙いやすい球場であるが、本塁打の出やすさを示すパークファクターは神宮が約1.45で、横浜スタジアムが約1.59。山田がDeNAに移籍すればさらに本塁打が増えるだろう。

中日

田島 15.42

平田 15.60

福田 4.44

高橋 3.88

荒木が極度の不振に陥りセカンドのポジション別OPSで中日はリーグワースト。山田が加入すれば打線が一気に化ける。ただし、開幕から31試合連続無失点の記録を作ったブルペンの要と外野の一角、さらに近い将来の不動のクリーンアップ候補2人が流出する。4人かがりでも山田のRCAAには遠く及ばないが平田は守備での貢献度も高く、福田と高橋はもうひと伸びするかもしれないという期待値も込めてのトレード。この野手3人はその選手1人で打線を組んだら何点取れるかを示すRC27で好成績を残しており、年間通して働くことが出来れば破壊力はかなりのもの。損得がわかるのは数年後になるだろう。

阪神

高山 -2.87

原口 12.33

北條 -5.91

陽川 -4.60

横田 -9.26

+金銭

主力の高齢化が進み、若手を積極起用しているもののRCAAでプラスの数値を出している野手がほとんどいない。福留の14.12点と原口の12.33点が光るが、福留は40近いベテランで原口は1軍でのキャリアが1年目で腰に故障を抱えているということを考えればトレード相手としてはマイナス材料。必然的にヤクルトの弱点である投手に目が行くが阪神投手陣でもプラスの数値を残しているのはメッセンジャー、ドリス、マテオの外国人枠を圧迫する助っ人とベテランの安藤ぐらい。釣り合いの取れたトレードは難しいが、可能性があるとすれば若手有望選手に金銭も絡めたトレードか。マイナスの数値が並んでいるが、ファームでは陽川も横田も打率3割超え。ただ他球団と違ってここに主力の名前が挙がってこない所に金本監督の苦悩がうかがえる。

どの球団を見渡しても1人で山田に肩を並べられるような選手はいなかった。現在の山田は打率、本塁打、打点の三冠王だけにとどまらず、得点、安打数、二塁打、盗塁、出塁率、長打率、OPSの全てがリーグトップ。史上初の2年連続トリプルスリー達成も視界に捉えている。歴代最強二塁手はこの先どんな金字塔を打ち立てるのか。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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