ハロプロ出身、ソロデビュー2年でチャート2位の小片リサ 「恋愛のモヤモヤを声質に合わせ表現しました」
ハロー!プロジェクトのつばきファクトリーを経て、2年前にソロシンガーとしてデビューした小片リサ。2ndシングル『映画の趣味が合うだけ/ちいさな世界』がオリコンウィークリーチャートで2位に入った。はかない楽曲が映える歌声に定評があるが、アップテンポな今作にも絶妙に活かし、歌以外にも初めて自分の意向を反映させたという。ステップアップの実感や自身の“映画の趣味”まで語ってもらった。
たくさんの方と「初めまして」ができました
――2ndシングルのリリースイベントでは北海道から福岡まで回っていましたが、ステージ以外の思い出もできましたか?
小片 発売日の前後は4泊5日で毎日違う場所を転々として、まず荷物が多くなりますよね。久々に海外旅行で使った大きなキャリーケースで行きました。せっかくなので各地のおみやげも買いたかったんですけど、荷物がどんどん増えたら、最終日に大変なことになってしまう。いち地方でひとつと、自分でルールを決めたんです。でも、気になるものがいっぱいあって、終わりのほうは2~3個ずつ買ってしまいました(笑)。
――キャリーケースに無理やり詰めて?
小片 パンパンでした。行きは半分くらい空いていたのが、おみやげで埋まってしまって、チャックが閉まるかどうか(笑)。何とか押し込めて帰ってきましたけど、まだ全然食べ切れていません。年末年始に頑張ります(笑)。
――オリコンウィークリーチャートで2位に入りましたが、イベントから手応えはあったんですか?
小片 今までのリリースイベントは関東近郊が多かったのが、今回は地方に行かせてもらって、「初めまして」というごあいさつをたくさんの方とできたんです。前回とは雰囲気が全然違って、そういう手応えはありました。
はかなげな声は強みだと思ってます
――今回はトラックダウンやマスタリングにも立ち合って希望を伝えたそうですが、そもそもの楽曲選びから携わったんですか?
小片 1stEPの『どっち』は落ち着いた楽曲だったので、今回は違うテイストで行くことは決まっていました。それで、ちょっとアップテンポで踊れるような曲を選んでいただいて。トラックダウンで重低音を入れたり、自分の好みにしてもらったところはあります。アディショナルトラックの1曲の『虹を超える』はライブ用の楽曲だったのを、自分でお願いして入れてもらいました。
――小片さんははかない曲、切ない曲がハマる印象ですが、音楽性をより広げる試みでもあって?
小片 はかない、切ない声と言っていただけるのは嬉しいですし、自分の強みだと思っています。アップテンポな曲にもうまく合わせて、そういう声を出せるところで出すことは、今回意識しながら歌っていました。
――『映画の趣味が合うだけ』にも小片さんっぽさが出てますね。
小片 恋愛ソングでも両想いではなく、失恋でもないけどモヤモヤした心情の歌が、私のオリジナルには多いと感じています。これもそういうタイプの曲で、自分の声質に合わせられたかなと。良い出来になったと思います。
伝えればいいのに伝えられないのが自分とリンクして
――歌詞で言うと<つまらない私のままでも>とか<私の目 見てくれない>とか、ちょっと拗ねてるような感じがします。
小片 自分の想いをはっきり言えない雰囲気が、この曲の全編を通してあると思います。伝えればいいのに伝えられない、自分の胸のうちを歌っていて。そこは私自身の私生活にもリンクしているかなと。でも、世の中の多くの女性が、こういうふうに思っているんだろうなという部分もあって、歌詞を読んで勉強になりました。
――声も歌い回しもきれいですが、ボーカルはハロプロのスタイルをベースに、小片さん独自のものが確立されたような?
小片 ハロプロでは16ビートを重視していたのが、今はそこはあまり気にしてないので、身に付けたものが何となく声に出ている感じですかね。グループのときにみんなと合わせていたのは、ソロでは考えなくなりました。正確なピッチに揃えて届けるというより、ちゃんと感情が見え隠れする曲にできたら。1番と2番でまったく同じに歌う必要もなくて、あえて崩すことを今回は結構意識しました。
――情景が脳裏に浮かんだりもしました?
小片 映画がメインのテーマで<渋谷>とか地名が出てきたり、<レイトショー>と時間もはっきりわかるストーリーなので、歌っていても想像はしやすいです。ライブでは歌う場所によって雰囲気が若干変わりますけど、毎回頭の中に景色は浮かびます。
ミニシアターでやっている洋画が好きです
――<文化村通りへ>ともありますが、休館中のル・シネマ辺りで映画を観るイメージですか?
小片 そこは行ったことがないんですけど、文化村の劇場(シアターコクーン)に足を運ぶ機会は多くて。渋谷のルートもわかりますし、ミュージカルを観終わると夜になっているので「あの景色か」とイメージもできました。
――小片さんの映画の趣味はどんな感じですか?
小片 ゴテゴテの恋愛ものより日常系が好きで、洋画をよく観ます。と言っても、ハリウッドの人気作とかより、ミニシアターでやっているような作品が多いです。
――たとえば?
小片 最近だと、『Summer of 85』というフランス映画がお気に入りです。少年同士の友情からの恋愛模様で、映像がすごくきれいだなというところから入って、こういう内容なのかと思って観ていました。マイノリティは今の時代らしいテーマで、少し複雑ですけど、日常の些細な出来事がメインなので馴染みやすくて。役者さんの表情も美しくてうっとりします。全編フィルムで撮影されて、ちょっとしたノイズが映るのもオシャレでいいなと思いました。
エンドロールまで見て主題歌も聴きます
――人生ベストの映画というと何を挙げますか?
小片 レオナルド・ディカプリオの『ロミオ+ジュリエット』は大好きです。お馴染みのストーリーで、盛り上がる展開というより暗めなシーンも多いですけど、ディカプリオの表情がすごくきれいで、まったり観られて。自分の感情があまり忙しくならないのが、私にはピッタリでした。今でも気になったときに、サブスクで観返したりしています。
――ディカプリオが好きなんですか?
小片 ベタですけど『タイタニック』からハマりました。その前後の作品から観たいなと思っていますけど、まだ全然追えていません。
――映画は歌詞にあるような<エンドロールまで見る派>ですか?
小片 見ます。エンドロールの途中で立つ方に目の前をよぎられると、「ああ……」とちょっと落ち込んじゃいます(笑)。エンドロールも作品のうちだと思いますし、そこで流れている主題歌もちゃんと聴いたほうが作品を理解できるかなと。いつも劇場が明るくなるまで座っています。
――MVでは走るシーンも多くありました。
小片 ダンスシーンは今までも全然あって、体力的にはそんなに大変でもなかったんですけど、ひたすら走ったことはなくて。半日くらいかけて、道とか階段とかいろいろな場所で「こんなに走る?」というくらい撮りました(笑)。平たんな道より、階段をずっと駆け上るのがキツかったです。久々の運動で翌日筋肉痛になりかけましたけど、楽しかったです。部活みたいだなと思いながら、走っていました(笑)。
感情表現をやめて淡々と歌ったらしっくり来て
――『ちいさな世界』のエスニック系のサウンドは、馴染みはありました?
小片 自分で選んで聴くことはなくて、曲をいただいたときは「どんな感じになるのかな」と思う部分が多かったです。でも、ビート感的にはすごく好きで、アレンジもカッコ良くてオシャレだったので、そこにどう歌を入れていくかというところから始まりました。
――歌うときにどんなことを意識したんですか?
小片 最初にレコーディングしたときは、『映画の趣味が合うだけ』と同じように感情を乗せていきました。曲が進むにつれて盛り上げたりしようと考えていたんですけど、この曲は話が行ったり来たりするんです。世界のことを歌っていて、次の行では急に自分のことを言っていたり。
――<理不尽な世間に怒りながら 前髪気にしてる>とか。
小片 ずっと交互なので、あまり感情を乗せすぎても、聴く方も私自身も大変になってしまうかなと。そういう感情表現をやめて、2回目、3回目のレコーディングではとにかく淡々と歌ってみたんです。結果、そっちのほうが「しっくりくるね」と落ち着きました。最初に録った音源とは全然違って、完成したものを改めて聴くと、自分でちゃんと納得のいくものに仕上がっていました。
「納得してない」とメールするまで1時間かかって
――レコーディングは何回もしたんですね。
小片 最初に歌ったときはだいぶ難しく感じて、いちおうOKになりましたけど、納得がいってなくて。ディレクターさんに「大丈夫ですかね?」と連絡したら、「そう思っているように感じていた」と言われました。納得しないまま歌っていたのが、声に出ていたみたいで。普段だとプリプロをして本番のレコーディングで終わりですけど、その後に何度か録らせてもらえたので、自分の意見を伝えられて良かったです。今まではあまりそういうことを言えなかったので、スッキリしましたし、良い結果にもなりました。
――そういう意見を言うのはためらうものですか?
小片 最初はためらいました。1回のレコーディングで完成させないといけない気持ちがあって、できなかったら、その1日がなかったことになってしまうかなと悩んでいて。メールを送る前に、文面を1時間くらい見直して「これでいいのかな」と思いながら、最終的に「送っちゃえ」という。
――アーティストが自分の作品について思ったことを言うのは、当然でもないですか?
小片 そうなんですけど、性格的なこともありますし、そんなふうに意見するのが初めてだったので、ちょっと緊張しました(笑)。
――技術的にもハードルは高い曲でした?
小片 感情をあまり出さない分、飽きさせないようにするにはどうするか考えました。後ろで鳴っている楽器がカッコ良かったので、そっちに寄ったアレンジがいいかな、とか。最初はメインの歌だけであっさりしていたのを、コーラスをバンバン足していただいたり、自分でハモリのパートをいっぱい録ったりもしました。「足して足して」という感じで、歌のあとに追っかけみたいなフレーズも録ったんですけど、たくさん肉付けをして派手になったあとに、また削ぎ落としていったら、ちょうどいいバランスになりました。
目覚ましが聞こえないので振動で起きようかと
――温暖化やインフレも気に掛けながら、<君からの既読/未読が大問題>という歌詞には共感しますか?
小片 世界情勢と自分のことを交互に歌いつつ、結局気にするのは自分のこと、みたいに歌っていて、私自身も飲み込みやすかったです。ニュースは気にしてなくても目に入って、よく聞く言葉もありますし、気になって見るときもあれば、気にしないときもある。その見ないときの心情が、この『ちいさな世界』に合っているのかなと思います。
――世の中のことが気になるときもあると。
小片 夏は暑くて温暖化はめちゃめちゃ感じましたし、実家には車があって、ガソリン代が高くなって大変という話を家族としたりもします。
――時間に追われながら<決めなくちゃプライオリティ>というフレーズもあります。小片さんの日常生活の中では、どんなことのプライオリティが高いですか?
小片 私は朝がすごく弱くて、片づけたい作業は夜に一気に終わらせることを、マイルールにしています。夜は遅い時間まで起きていても平気なタイプで、そのほうがはかどるので。
――朝は苦手なんですか?
小片 目覚ましの音がまったく聞こえなくて、起きられません(笑)。携帯と大音量アラームの時計を使ってるんですけど、それでも気づかなくて、たぶん近所迷惑だと思います(笑)。でも最近、アップルウォッチの振動が一番起きやすいとわかりました。
――音よりも振動が有効でしたか。
小片 それでもダメなら、電流が流れるものを使おうかなと(笑)。ビリビリペン程度の微弱電流で、まだ怖くて使ってませんけど、本当に起きないといけないときの保険として、持っていたらいいかなと思っています。
想像より100倍壮大な砂漠になってました
――こちらのMVでは砂漠で歌っているシーンもあります。
小片 あれは合成です。足元だけ本物の砂を敷いてもらって、裸足で立っていたので、砂漠にいる感覚はありました。写真も見せていただいてイメージしてましたけど、出来上がった映像を観たら、その100倍くらい壮大。本当にこんな砂漠のようになるんだと、ビックリしました。
――他に、こちらも渋谷ロケがありました。
小片 小雨が降ったりして、タイミングを見計らいながら撮りました。私服みたいな衣装で、そんなに緊張することなくロケができました。
――普段も渋谷にはよく行くんですか?
小片 お買い物でも何でも揃っているので、行く機会は多いですね。よく表参道から渋谷まで歩いたりします。センター街とかより1本路地裏に入って、オシャレなカフェを探したりもたまにしています。
歌詞は「もうだめかも」から展開してもらって
――最初に『虹を超える』は自分の希望で収録したとの話が出ましたが、<知らない景色目指せ>といった前向きな歌が、今の小片さんの心境に合っていたんですか?
小片 歌詞はもともと全然違っていたんですけど、メロディ自体が好みで、背中を押してくれる感じでした。
――もともとはどんな歌詞だったんですか?
小片 2パターンあって、ガッツリ恋愛を歌うのと今の歌詞の元のようなバージョンでした。私は前向きなほうが好きとお話しさせていただきながら、全部そのまま使うのでなく、最初のほうの「もうだめかもしれない」から展開してもらいました。
――「もうだめかもしれない」「いやこんなもんじゃない」という葛藤は、小片さんにもあって?
小片 昔はレコーディングが納得いかないまま、終わってしまうこともありました。ライブを重ねていくうちに、自分の表現したいことが見つかって「もっといける」と思ったり、一喜一憂するのはリンクしていますね。
――人生的にはどうですか?
小片 私はもともとNICE GRIL プロジェクトにいて、それからハロプロ研修生になって、「いつデビューできるのか」みたいな葛藤はずっとありました。続けているうちにデビューしていく先輩もいて、「私もこんなもんじゃない」と思ったりはしていました。
悩んでもすべてが良い結果になると信じて
――そもそもですが、小片さんはその研修生時代から、いずれソロ歌手になることは目指していたんですか?
小片 歌やダンスはもちろん好きだったので、1人でやってみたい気持ちもありつつ、それが一番やりたいわけでもないという、あいまいな感じでした。カバーアルバムを出すことになって、いろいろな曲を歌わせていただく中で、音楽の世界はこんなに広いんだと学びました。そしたら、もっと自分のやりたいことも表現できるかなと、1人の歌手として頑張りたい気持ちが芽生えた感じです。
――それから2年、順調に来ている感覚ですか?
小片 今のところ、1年に1回はCDを出させてもらって、ライブもひんぱんにできていますし、充実しているなと思います。1人でちゃんと見せられるライブを作りたくて、オリジナルの楽曲をどんどん増やしていきたい気持ちもあります。ここに留まらず、もっと頑張っていきたいです。
――活動が思い通りにいかないようなことは、あまりないですか?
小片 自分でステージのセットリストを考えたり、衣装について話したり、制作にも携わると、いろいろな方の意見をどうまとめるか、悩むことは多いです。でも、それもソロで活動したからわかったことで、学びにもなっていて。大変だと感じることはなく、すべてが良い結果に繋がると信じつつ、やらせてもらっています。
伝えたいことをいっぱい音楽に乗せていきます
――目指すシンガー像もありますか?
小片 自分の色はちゃんと出せるようにしたいです。誰かと同じようなことはやりたくなくて。今回の2ndシングルで歌以外の音楽的な部分に関われたので、そこはどんどん続けていきます。
――最近の聴く音楽の趣味はどんな感じですか?
小片 この時期という話だと、毎年洋楽のクリスマスソングをずっとかけながら準備をしたり、ゆったり過ごすことを1ヵ月間しています。最近のお気に入りはジャクソン5の『ママがサンタにキスをした』で、エンドレスでリピートしながらテンションを上げています。
――実はヒップホップにハマってるとか、そういうことはないですか?
小片 昔は普段もハロプロの曲ばかり聴いていましたけど、今後のお話をさせていただくうえでも、なるべくジャンルを問わず聴くようにしています。流行りにも疎かったので、ヒットチャートのトップ10は必ず聴いてみたり。
――刺激を受けたりもしますか?
小片 流行っている曲には共通のビート感があったり、みんなが今こういうのを聴きたいんだと意外とわかって面白いです。そういうことも参考にしたいです。
――来年はオリジナルでのソロアルバムも期待したいです。
小片 予定は全然ありませんけど、自分のオリジナルが今、音源化されてないものも含めると10曲あって。さらに増やして、何らかのリリースはできたらいいですね。音楽のことを追求するのは楽しいと、2ndシングルを作っていて思ったので、さらに踏み込んで、自分の伝えたいことをいっぱい音楽に乗せていく年にします。
Profile
小片リサ(おがた・りさ)
1998年11月5日生まれ、東京都出身。2014年にハロプロ研修生に加入。2015年につばきファクトリーの結成メンバーに選ばれ、2017年にメジャーデビュー。2020年に活動終了し、2021年にソロで1stカバーアルバム『bon voyage!~risa covers~』、2022年に1stEP『どっち』をリリース。