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ポストシーズン11戦勝てなかったレッドソックス・ポーセロ ようやく掴んだチームと自らの勝利

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
ヤンキースとの地区シリーズ第4戦で勝利投手になったリック・ポーセロ投手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 レッドソックスが現地9日、ヤンキースとの地区シリーズ第4戦に臨み、9回にサヨナラ負けの苦しい場面を凌ぎ4-3で勝利した。この結果シリーズ成績を3勝1敗とし、5年ぶりのリーグ優勝決定シリーズ進出を決めた。

 大事なマウンドを託されたのが、リック・ポーセロ投手だった。2014年オフにタイガースからレッドソックスにトレード移籍してきた29歳右腕投手で、2016年には最多勝(22勝)&サイヤング賞を獲得する活躍をみせ、今シーズンも登板試合数、勝ち星ともにチーム1位に輝くなど、投手陣を牽引してきた存在だった。

 2009年にタイガースでメジャー初昇格を果たし、今シーズンを含めた10年間で二桁勝利に到達しなかったのは2015年のみ。これまで素晴らしい安定感を披露しながらも、タイガース時代はジャスティン・バーランダー投手、マックス・シャーザー投手、デビッド・プライス投手というMLB屈指の先発投手の存在もあり、決して目立つ存在ではなかったし、レッドソックスに移籍しても2016年の活躍があったものの、その後プライス投手、クリス・セール投手がチームに加わり、絶対的なエースと呼ばれるまでには至っていない。

 ポーセロ投手のそうしたイメージは、彼のポストシーズンでの投球も影響しているのは間違いないだろう。昨年まで先発、中継ぎで計11試合に登板し、0勝3敗、防御率5.33しか残せておらず、しかも登板した11試合すべての試合でチームが負けているという状況だった。これではチームからも、ファンからもエースとして信頼を勝ち取るのは難しかった。

 迎えた今年のポストシーズン。ポーセロ投手に訪れた最初の登板は先発登板が予想される中、まさかの第1戦での中継ぎ登板だった。それでも5-3の8回からマウンドに立つと、2/3回を無失点に抑え、抑えのクレイグ・キンブレル投手に繋ぐことに成功。遂に自身の登板した試合でチームが勝利を飾ることができた。

 そしてシリーズ王手で迎えた第4戦に満を持して先発。5回に犠飛から1点を許したものの、味方打線が挙げた4点を守り切り、自分の役目を果たした。レプレー検証の結果チームの勝利が決まった瞬間、ようやく自身の勝ち星も手に入れたポーセロ投手は勝利の歓喜に沸く輪の中にいた。

 因縁のライバル対決となった今回のシリーズは予想通りの熾烈な戦いだった。結局計4試合に登板した計8人の先発投手で、5回以上を投げ1失点以下に抑えた投手はポーセロ投手を含め3人しかいない(田中将大投手もその1人)。どれだけ価値ある投球だったのは疑いようもないだろう。

 「(リプレー検証は)とにかく神に祈っていた。とにかくどんどんストライクを投げ込んでアタックし、ヤンキース打線を打ち取ることだけを考えていた。内野陣も素晴らしいプレーをして盛り立ててくれたのでアタックし続けることができた」

 中継TVのインタビューに答えたポーセロ投手の表情は安堵に満ちていた。ポストシーズンの“壁”を打ち破った彼は、真のエースと呼ばれる存在になれるだろうか。まずはリーグ優勝決定シリーズで強力アストロズ打線に挑む。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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