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トレード期限終了間際に3年連続でトレード移籍が決まったジョシュ・ベルの悲哀

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
3年連続でシーズン中のトレード移籍が決まったジョシュ・ベル選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ドジャースが駆け込みでフラハティ投手を獲得】

 MLBは現地時間7月30日(東部時間の午後6時まで)を迎える中、各チームの間で最後の駆け込みトレードが相次いだ。

 前日に2つのトレードでトミー・エドマン選手、マイケル・コペック投手、アメド・ロサリオ選手を獲得していたドジャースも、さらにタイガースからジャック・フラハティ投手、ブルージェイズからケビン・キアマイヤー選手の獲得に成功している。

 キアマイヤー選手は今シーズン限りでの現役引退を表明しており、ポストシーズン進出が確実視されているドジャースで最後の花道を飾ることになりそうだ。

 一方のフラハティ投手はタイガースで安定感抜群の投球を披露し、タリク・スクバル投手とともに今回のトレード市場で有力トレード候補として注目を集めていた(スクバル投手はタイガースに残留)。

 米メディアによれば、山本由伸投手をはじめ多くが戦線離脱するドジャース先発投手陣の中で、タイラー・グラスナウ投手に次ぐ2番手の存在になるとの評価を受けている。

【昨季もトレードを経験し移籍後は1勝止まり】

 MLBにおいて実績あるベテラン選手がシーズン途中にトレードされることは、ある意味名誉なことだと捉えられている。基本的にポストシーズンを争うチームに補強戦力として迎えられるので、チーム力を高める即戦力として評価されているからだ。

 とはいえ、シーズン途中で周囲の環境が変わるのは、選手にとって決して簡単なことではない。トレード後に期待通りの活躍ができる選手もいれば、逆に予想外の不振で期待を裏切ってしまう選手もいる。

 例えばフラハティ投手は、昨シーズンもトレード期限前にカージナルスからオリオールズにトレードされている。つまり2年連続でトレード移籍することになったのだ。

 ところがオリオールズ移籍後のフラハティ投手は、防御率6.75、被打率.311という成績からも理解できるように不振を極め、9試合(うち先発7試合)に登板しわずか1勝に止まり、期待通りの戦力補強にはなれなかった。

 昨シーズンは自身初のトレード移籍だっただけに難しい面があったかもしれないが、今シーズンはFAとしてタイガースと1年契約を結び、新しい環境で好投を演じる中でのトレード移籍となった。

 ロサンゼルス近郊のバーバンク出身とあって、ドジャースへのトレードが決まった後、フラハティ投手の母親がドジャースのロゴが入った服を着た幼少時代の写真をSNSに投稿するなど、家族は今回の移籍をすっかり歓迎しているように見える。

 今回こそは期待通りの活躍を期待したいところだ。

【3年連続でシーズン中のトレード移籍が決まったベル選手】

 フラハティ投手以上に大変そうなのが、ジョシュ・ベル選手だろう。こちらも駆け込みトレードでマーリンズからダイヤモンドバックスへのトレード移籍が決まったのだが、ベル選手にとって3年連続のシーズン途中のトレードとなった。

 2022年のナショナルズ在籍時にフアン・ソト選手を含む大型トレードでパドレスに移籍。そのオフにFAとなり、ガーディアンズと2年総額3300万ドルの契約を結ぶことに成功していた。

 ところが2023年はチームが地区首位争いを演じる中、トレード期限前に3年ぶりのポストシーズン進出を目指すマーリンズにトレードされることに。そして今シーズンもナ・リーグ東地区最下位に沈むマーリンズは完全に売り手市場に回り、ダイヤモンドバックスに放出されることになった。

 前述した通りベテラン選手にとってシーズン途中のトレード移籍は名誉なこととはいえ、マイナー契約とFAを繰り返しながらチームを渡り歩くジャーニーマンならいざ知らず、2022年にはナショナルズで年俸1000万ドルを得、ガーディアンズでも大型契約を結びながら、この3シーズンで計5チームに在籍するのはかなり異例なことだと思う。

 ちなみに2022年のパドレス移籍後はOPS.587と不振を極めたベル選手だが、2023年のマーリンズ移籍後はOPS.818を残すなど、期待通りの活躍でポストシーズン進出に貢献している。

 果たして今シーズンのベル選手は、ダイヤモンドバックス移籍後にどんな成績を残すことができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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