債券村とはどこにあるのか
31日に市場関係者の寄り合いがあり、そこで「債券村」の話が出た。金融市場で債券市場に関する話題が出た際に「債券村」という言葉が使われることがある。果たしてその「債券村」とはどこにあるのか。
「株式村」とか「為替村」といった言葉は聞いたことがない。それに対してどうして「債券村」という言葉が使われるのか。
この「債券村」の住人とは債券市場、特に日本の債券市場に携わっている人達のことを示すようである。ではその債券村の住人とは誰なのか。
結論としては「債券の価格と利回りが反対に動くことを理解して債券の業務に携わっている人」ということができるのではなかろうか。
私個人としては証券会社出身ということもあり、比較的なじみがある株式市場に対して、債券市場関係者がやや特異に見えていたためと思っていた。
利回りの上げ下げとかに加え、毛とか糸など特殊な用語を使っている債券関連部署の人間が特殊に見えていた。それで「債券村」との表現が使われたのではないかと。
しかし銀行出身の友人が、実は銀行内でも債券関連部署にいる人達は、やはり通常の業務に比べて、やや特殊な人達に見られていると指摘したのである。
えっ、銀行はまさに金利を扱うところであり、債券が特殊なわけないと勝手に思い込んでいたが、実はそうではないという。
銀行業務がどのようなものかと語る上でわかりやすい「半沢直樹」や現在放映中の「花咲舞が黙ってない」などのドラマをみると、銀行内の花形職として融資担当がある。また我々が預ける預金の業務も大きな割合を占めている。
この融資や預金に関しては、金利は扱うが「利回り」を扱っているわけではない。融資担当にとって最も重要なのは金利そのものの動向とともに、貸出先のリスクをどう把握するかによる。つまり重要なのは「信用リスク」をどう捉えるかなのである。
これは融資ではなく、企業の資金調達に必要な社債の発行などでも同様である。発行体とその資金調達を助ける銀行などにとって重要なのは、同様の年限の国債の利回りにどれだけの上乗せ金利が必要なのかということになる。こちらも「信用リスク」となる。
融資や預金、社債発行などには、信用に応じた金利の知識は必要ながら、そこに債券価格が上げ下げして動くような利回りの知識はそれほど必要ない。つまり市場における「価格変動リスク」を意識する必要はあまりない。
むろん金利の先行きを考慮する必要はある。しかし、預金者にとっても融資先にとっても額面100円のものは償還も100円でなければならない。銀行に100万円預金して満期日には100万円が返ってくるのが当然となる。
むろん、銀行で債券を主体とした資金運用などを行っている人達にとっては、債券の価格変動に伴う利回りの知識は最低限必要であり、その人達はれっきとした債券村の住人である。
しかし銀行に勤めている人達のなかで、インカムゲインだけでなく、キャピタルゲイン(もしくはキャピタルロス)を意識して業務を行っている人の方がたぶん割合は少ないのではないかと。
つまり、銀行に務める人達にとっても債券村が存在するということになる。
ということで、債券村とは具体的にどこかにあるわけではない。金融機関にとっては本来業務のひとつではあるかもしれないが、ややマイナーな業務を取り扱う人達で「利回り」に関する業務を取り扱っている人達の総称が「債券村の住人」ということになるのではなかろうか。