北朝鮮「金持ち男女のご乱行」専用収容所の実態
韓国統一省は先月、脱北者649人の証言に基づき作成した北朝鮮の人権問題に関する報告書を公開した。政府発表の報告書としては、北朝鮮が2020年12月に制定した「反動思想文化排撃法」に従い公開処刑が行われた事例を初めて記載している。
それによると、公開処刑は2022年に行われたという。実際、この年には「排撃法」と関連し、注目すべき動きがいくつもあった。
(参考記事:北朝鮮の15歳少女「見せしめ強制体験」の生々しい場面)
北朝鮮の首都・平壌郊外の勝湖里(スンホリ)。ここにはかつて、26号管理所(政治犯収容所)が存在したが、国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルの問題提起でその存在が国際社会に知られたことにより、1994年に閉鎖された。
その後、2020年になって第8号教化所(刑務所)として復活したことが明らかになった。名前は教化所でも、政治犯が収容される事実上の管理所だった。
ところが、2022年6月中旬に再び廃止されたことが、デイリーNK内部情報筋によって伝えられた。
収容されていた人々は、平安南道(ピョンアンナムド)の价川(ケチョン)の14号と17号管理所、北倉(プクチャン)の18号管理所、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の耀徳(ヨドク)にある15号管理所に分けて移送されたとのことだ。
もともとあった施設は、75号鍛錬隊と名前が変えられ、社会安全省(警察省)特別捜査局が管理する、軽犯罪者を収容する刑務所となった。特別捜査局は、高位幹部や軍の秘密基地に関連する業務に携わる人を捜査対象とする部署で、通常の労働鍛錬隊に収監して、一般の受刑者と接触させることは保安上適切でないと判断された人々を収容するための施設となったようだ。
こうした措置の決定は北朝鮮の最高レベルーーつまりは金正恩総書記の直接の決裁によるものである可能性が高い。
情報筋によると、この鍛錬隊の受刑者の刑期は3カ月から1年で、刑期満了後に建設現場などに強制的に送り込むのではなく、すぐに社会復帰させる者だけを収容するとの内規が存在するとのことだ。
それが意味するのは、冒頭で述べた「排撃法」の施行などにより、富裕層や特権層でも捕まる人が相次いでいたということだ。
(参考記事:若い女性を「ニオイ拷問」で死なせる北朝鮮刑務所の実態)
ただ、捕まえた人々をすべて処刑したり政治犯収容所に送ったりしていては、国家が回らなくなってしまう。そこで、規律に違反したエリートにお仕置きするために、この鍛錬所が作られた可能性が高いのだ。
実際、新型コロナ対策として世界一厳しいとも言える防疫ルールが発令されていたこの時期においても、金持ちのお坊ちゃまやお嬢様たちはK-POPをかけながら、大勢で騒ぐ「ご乱行」を繰り返していた。捕まっても、以前と同じく親の財力でもみ消せると思っていたのだろう。
しかし排撃法が施行されて以降は、そいういったやり方も徐々に通じなくなっているのだ。