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全米プロ2日目、37人ごぼう抜きで4位タイへ浮上した松山英樹。「さらに上々」なゴルフと明日への期待

舩越園子ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 全米プロ初日を1オーバー、73で回った松山英樹は、順位こそ41位タイだったが、マスターズ制覇後の復帰2戦目の初日という状況下では、その内容は「上々」であり、2日目の巻き返しを予感させるものだった。

 そして2日目。予想通り、松山は4アンダー、68で回り、一気に4位タイへ浮上。

ビッグな巻き返しを可能ならしめたものは、何だったのか。

【忍耐で浮上】

 この日、午前スタートでスコアを伸ばし、単独首位に浮上したのは50歳のフィル・ミケルソンだった。10番から出たミケルソンは11番でバーディーを先行させたが、13、17、18番で続けざまにボギーを叩いた。しかし「そこで踏みとどまり、耐えたことが、後半につながった」。

 その後半はアイアンショットの冴えとグッドパットのコンビネーションで5バーディーを奪い、通算5アンダーでトップに立った。まさに「忍耐」がもたらした8位タイから首位タイへの浮上だった。

 海風が一層強まった午後スタートの選手たちは、さらに厳しいコンディション下でのプレーを強いられたが、そこで耐えた選手がリーダーボードを駆け上がっていった。

 ルイ・ウエストヘーゼンは、ところどころで小さなピンチに遭遇しながらもノーボギーのゴルフを続け、よく耐えていた。

 最後の最後に18番で短いパーパットを外し、ボギー・フィニッシュとなったが、通算5アンダーとして、ミケルソン同様、彼も「忍耐」で16位タイから首位タイへ大浮上した。

【心技体が噛み合って大浮上】

 そんな2人のビッグムーブより、さらにビッグな動きを見せたのが松山だった。

 初日の41位タイから2日目は4位タイへと実に37人のごぼう抜きで一気に優勝戦線へ浮上。そのカギになったのは、やっぱり「忍耐」だったのではないだろうか。

 初日は3パットを2度も喫し、「もったいなかった」と語った松山。2日目も3番で3パットのボギーを喫したが、そこで踏みとどまり、4番、5番をパーで収め、6番、7番で2連続バーディー獲得。流れを悪化させなかったこと、耐えて好転させたことが、後半の3バーディーにつながっていった。

 松山が見せた心と流れのマネジメント術は、まさにミケルソンのそれとそっくりで、動揺することなく冷静に流れを変えていった戦い方は、まさにメジャー・チャンピオンだからこその貫禄だった。

 後半はフェアウエイキープ率100%の精度を誇り、アイアンのキレ味も前日より格段に向上。パットもよく沈めていた。

 逆に言えば、技術面が前日より良くなったという手ごたえを感じていたからこそ、メンタル面のコントトールもしやすかったし、実際、うまくできたのだと思う。そうやって、心技体すべてが噛み合ったからこそのビッグムーブだった。

 キアワ・アイランド、オーシャンコースの終盤は最難関の難所だが、難しいバンカーにつかまった15番のパーセーブは見事だった。

 16番のあまりにも長い600ヤードのパー5は着実にパーで収め、それ以外の3つのパー5は初日同様、2日目もすべてバーディーを奪った。

 6バーディー、1ボギーの68で回り、首位と2打差の通算3アンダーで4位タイ。松山自身、「前半から少しずつ良くなっているのはわかっていた」「すごく大きな自信にもなった」と手ごたえを感じている。客観的に眺めても、初日の内容が「上々」なら、2日目の松山のゴルフは「さらに上々」だった。

 気になるのは、最終ホールの18番で2打目をグリーン左の砂地に入れ、サンドセーブができずにボギー・フィニッシュになった2日目の終わり方だ。

 その日の締め括りは選手たちの心に大きく作用するもので、松山もこれまでの大会では最終ホールでいい終わり方ができれば「明日につながる」と納得の表情を見せ、最後に落とせば「情けない」と落胆や怒りを見せた。

 だが、メジャー・チャンピオンになった現在の松山は、この2日目の嫌な終わり方を、いかに咀嚼し、3日目へ繋げることができるのか。それが、「ムービングデー」と呼ばれる明日の松山の成否に大きく関わって来る予感がする。

 「今の調子では、ワザとかの引き出しも含めて、ちょっとキツイ部分というか、いっぱいいっぱいな感じはある」と不安も覗かせながら、「悪くない位置だと思うので、明日も頑張りたい」と前を向いている。

 マスターズ覇者の松山なら、きっと、この2日間を上手く咀嚼し、さらにパワーアップ、ムーブアップするのではないか。そんな期待を抱いて、3日目を見守りたい。

ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学・客員教授

東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。百貨店、広告代理店勤務を経て1989年に独立。1993年渡米後、25年間、在米ゴルフジャーナリストとして米ツアー選手と直に接しながら米国ゴルフの魅力を発信。選手のヒューマンな一面を独特の表現で綴る“舩越節”には根強いファンが多い。2019年からは日本が拠点。ゴルフジャーナリストとして多数の連載を持ち、執筆を続ける一方で、テレビ、ラジオ、講演、武蔵丘短期大学客員教授など活動範囲を広げている。ラジオ番組「舩越園子のゴルフコラム」四国放送、栃木放送、新潟放送、長崎放送などでネット中。GTPA(日本ゴルフトーナメント振興協会)理事。著書訳書多数。

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