「ドラフト」人気を「プロスペクト(若手有望株)」人気に発展させよう
残業を早めに切り上げて帰宅すると、テレビではドラフト会議中継は終了していたが、毎年恒例となったドラフト特番をやっていた。これは、ドラフト中継本体の番組ではないのだから目くじらを立てる必要はないかもそれない。でも、「感動の人間ドラマ」に溢れているこの番組は、オリンピックなどで見受けられるスポーツの本質の報道が二の次になっている昨今の日本のテレビ中継の延長線上に在るような気がして、あまり好きではない。
しかし、ドラフトが、プロ野球が、地上波で生放送されていること自体は喜ばしい。なにせ、きょうび公式戦のみならず、クライマックスシリーズですら、地上波では中継されないことが多いのだから。
個人的には不思議だなあと思うことがある。ドラフト自体はメディアやファンの注目を大いに集めているのだけれど、彼ら金の卵が紙面を賑わすのはせいぜい春のキャンプまでで、休日にキャンプ地の伝統文化に触れるなどのニュースを境に加速度的に全国メディアへの露出頻度が減少して行くのだ。
ドラフト人気の高まりには、20世紀末あたり(だったかな?)に創刊されたマニアックな某専門誌の功績が大きいと思う。本来、プロ野球に比べ地味な存在だったアマチュア野球を、「ドラフト候補生」というフィルターを掛けることで、野球の新しい楽しみ方の対象としたのだ。この雑誌は、内容が極めてコアでかつ広告量が少なかったため、創刊当初は「絶対に続かないだろう」とぼくは勝手に想像していたのだけれど、見事に外れた。彼らのアプローチは、競技人口が極めて多い中高生の選手やその関係者を読者として取り込むことに成功し、新たなビジネスモデルを構築したからだ。今や、老舗の野球専門誌にとっても「ドラフト候補生特集」は欠くことのできないコンテンツだ。
その雑誌の成功と、テレビでのドラフト中継が定着していることは、「ドラフトは商売になる」ことを証明したと言えるだろう。
願わくば、NPB関係者やメディアの人達はこの「ドラフト人気」を「プロスペクト(若手有望株)人気」につなげてほしいと思う。各球団で、今どんな選手が二軍でホットな存在で、近いうちに昇格が予想されるのか?その球団の2-3年後の「未来予想図」はどうなのか?それらが、一軍のペナントレースや個人記録同様に常にファンの注目を集める対象になれば、二軍は「舞台裏の鍛錬の場」としてのコストセンターではなく、収益で球団経営に貢献するプロフィットセンターになりえるだろう(そのためにはまず全球団が入場料を取ってナイトゲームを開催できる球場を確保する必要があるが)。
アメリカでは『ベースボール・アメリカ』のような、若手有望株に重きを置いたメディアが完全にその地位をファンの間で確立している。そして、多くのマイナーリーグ球団が魅力的な球場を有し、立派な観客動員を誇っている。
アメリカと異なり、日本の場合はマイナー組織が基本的に二軍の一階層しかなく、ホントの有望選手は初年度から一軍で活躍するため、プロスペクトビジネス成功へのハードルは低くはないと思う。一方で、試合中継が有料の衛星放送が中心となり、球団配置も関東・関西集中ではなくなった現代は、ネットで情報が溢れかえっていることもあり、ファンの関心は昔に比べ、確実により「狭く深く」になっていると思う。このような環境は、プロスペクトビジネスに追い風とも言える。関係者やメディアはがんばって欲しい。