賃金も上昇し日銀は利上げへ
過去にはそれほど注目されていなかったもので、ここにきて注目された経済指標が存在する。そのひとつが厚生労働省が公表している毎月勤労統計である。
8日に公表された5月の毎月勤労統計(速報)によると、実質賃金は前年比1.4%減少した。前年比マイナスは26か月連続となると報じられた。
どうも実質賃金ばかり注目されていることで、まったく賃金が伸びていないかのような報道となっている。しかし、日本の物価が2022年4月以降、急速に上昇し、それが続いていることで賃金がいかにも伸びていないかのように映っているだけである。
5月の毎月勤労統計によると、基本給にあたる所定内給与は5月に前年同月比2.5%も増えていた。この伸び率は31年4か月ぶりの高さとなっていた。注目すべきは物価と切り離したこちらの数値ではなかろうか。
8日の日銀の支店長会議での「各地域からみた景気の現状」という報告では賃金について下記のような報告が出ていた。
「雇用・賃金面では、地域の中小企業における賃金改定について、多くの地域から、春季労使交渉における大企業を中心とした高水準の賃上げ妥結の動きが波及するとともに、人材の係留・確保の必要性や、物価上昇を受けた従業員の生活への配慮等から、昨年を上回るあるいは高水準であった昨年並みの賃上げの動きに広がりがみられる」
日銀の金融政策の目標は「賃金」ではないが、物価目標が2%をすでに達成してしまっているなか、それを「賃金」に置き換えてしまった。このため、賃金が注目されているわけだが、この賃金すらも前年比2%を超える上昇となってきているのである。
物価は今後さらに上昇していくというよりも、高い水準が続くとみていたほうが良いかと思われる。その要因のひとつとして賃金の上昇も加わろう。そうであれば、物価に応じた政策金利の修正も早期に行う必要がある。
金利が動くことによって経済が動くことも当然予想される。金利が低ければ低いほど良い、などということは絶対にない。それは日銀の異次元緩和の結果をみても一目瞭然である。
長期金利をも抑え込んで債券市場との無益な戦いを行い、債券市場の機能を破壊寸前に追い込むなどということは言語道断である。
日銀は国内において適切な金利形成が行われる下地を作ることが求められているはずである。それが通貨の安定に繋がるとともに、通貨や国債の信認を維持させることにも繋がる。
ということで、この毎月勤労統計をみても、日銀は早期に動く必要があると思われる。7月30、31日の金融政策決定会合にて政策金利を少なくとも0.25%に引き上げるべきであろう。