Yahoo!ニュース

輸入量トップは中国で4.84兆立方フィート…世界各国の天然ガス輸入・輸出量の実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
足りない天然ガスは輸入しなければならない(写真:イメージマート)

化石エネルギーとしては石油や石炭とともに注目を集め、多方面で用いられている天然ガス。その輸入量や輸出量の実情を、アメリカ合衆国のエネルギー情報局(EIA:Energy Information Administration)による提供値を基に確認する。

天然ガスを消費するにあたり国内生産量でまかないきれなければ、他国から調達しなければならない。逆に国内消費量以上の生産がおこなえる国では、無理に生産しなくてもよく、余った分を貯蔵したり輸出する事も可能となる。そこで輸出・輸入量についてまとめたのが次のグラフ。

↑ 天然ガス輸出量トップ10(兆立方フィート)
↑ 天然ガス輸出量トップ10(兆立方フィート)

↑ 天然ガス輸入量トップ10(兆立方フィート)
↑ 天然ガス輸入量トップ10(兆立方フィート)

輸出量は、埋蔵量では最大・生産量では第2位を誇るロシアがトップ(グラフ化は略)。原油同様に天然ガスの価格もまた、ロシアの財政を大きく左右しうる要因であるのが分かる。ロシアによるウクライナへの侵略戦争においては、輸出先のヨーロッパ諸国に対する有効な切り札として用いられている(直接切るのではなく、大きなプレッシャーとして、存在するだけで意義がある類の札)。そしてアメリカ合衆国、カタール、ノルウェー、さらにはオーストラリア、カナダが続く。アメリカ合衆国の大幅な増加ぶりは、言うまでもなくシェールガスによるもの。

一方輸入国ではグラフの範囲外だが、生産も大量に行っているアメリカ合衆国が、2010年時点ではトップだった。ところが2011年以降はそのアメリカ合衆国を追い抜く形で、日本がトップについていた。これはいうまでもなく、先の東日本大震災による電力事情・エネルギー政策の激変・迷走に伴い、天然ガスを用いた火力発電所の需要が急上昇したからに他ならない。カントリーリスクの点では間違いなくマイナスであり、憂慮すべき事態ともいえる。

そして昨今では中国が経済成長に合わせる形で輸入量を急速に増やし、2018年以降はトップについている。生産は増加しているが、消費量の増加度合いがそれを上回るスピードであるため、足りない分を輸入で補ってる状態に違いない。

そして日本、ドイツ、アメリカ合衆国が続く。アメリカ合衆国はシェールガスの生産により輸出量を大幅に増やしているが、それでもなお大量の輸入を継続している。

天然ガスは環境負荷が小さいことや扱いやすいこと、技術の進歩で運搬が容易になり、採掘量も増加しつつあることから、注目を集めている。特に日本では震災以降、火力発電所の燃料として石炭とともに需要が急増していた。

天然ガスとて商品には違いなく、タダでは輸入できない。そして常に100%安全確実に必要量が輸入できる保証は無い。さらに自国での埋蔵・生産量と照らし合わせて考えてみれば、いかに細い綱を渡っている状態なのか、理解できよう。

■関連記事:

【60年あまりにわたるガス料金の推移(最新)】

【日本総輸入量は1020億立方メートルですべてLNG、中国に続いて世界第2位…天然ガス輸入量動向(最新)】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事