野球経験者でも知らない記録の知識
初めて野球規則に目を通したのは9年前の冬だった。
小学校3年生で始めた野球に高校で区切りをつけ、どこにでもいるごくごく普通の一般人としてキャンパスライフを送っていた大学1年生の秋、学校からの案内メールで所属大学の加盟している大学野球連盟が学生委員を募集していることを知る。ちょっとやってみたいかも、と興味が沸いてくると高校の同期が野球部のマネージャーをしていた幸運にも恵まれすぐさま監督につながる。秋学期のテスト明けから連盟委員となり記録を担当することになりました。その時点で持っていた知識はKが三振、Bが四球ということのみ。このままでは非常にまずい。練習せねば。大学入学直前に行われた第1回WBCを録画しており、オフシーズンでもとりあえず素材に困ることはない。まっさらなスコア用紙と記号一覧表を用意し、1球毎に停止ボタンと再生ボタンを押しながら非常にゆっくりとではあるが書き込んでいく。ストライクだから○、ボールだから●、ヒットだから赤ペンに持ち替えて・・・
事件は3人目の打者の時に起きた。一死一塁から内野ゴロの併殺打でチェンジに。「あれ、ゲッツーってどう書くの?載ってないやん!」スコア練習初日はそこでギブアップ。この時点で春季リーグ開幕まで2ヶ月を切ってました。その後、一通りスコアが書けるようになったもののたまにしか起きないややこしいプレーについては試合中に何度も野球規則を読み返す。そのため試合途中でヒットとエラーの数をこっそり変えるということもありました。関係者の皆様すいませんでした。野球歴が10年あっても記録については知らないことばかり。そんな人はたくさんいると思います。ましてや野球経験のないマネージャーにとって最初は全くの未知の領域。間違いやすいところをまとめました。少しでも参考になれば嬉しいです。
【ヒット、エラーの数が合わないな、と思ったら】
・ フェア地域で打球が走者に当たるとアウト。この時、打者には安打が記録される。
・ 妨害した野手には失策が記録される。走塁妨害なら該当野手に、打撃妨害なら捕手に。
・ ファールフライの落球は失策が記録される。アマなら記録しない場合ことが多い。
【サヨナラ勝ちは安打の稼ぎ時】
・ サヨナラスクイズが成功した場合は、打者が1塁を踏まなくても安打が記録される。1塁に送球されてアウトが宣告されても内野安打と残塁を記録し、投手の投球回数(3分の1)は加算しない。
・ 同点の無死又は1死3塁、ライト前への当たりで走者が得点し試合終了。ライトが1塁へ送球し打者走者をアウトにしても安打と残塁が記録される。
・ 同点の無死又は1死3塁、内野ゴロでホームに送球するもセーフになった場合、打者には安打が記録される。(守備側に本塁送球以外に選択の余地がないため、野手選択でなく例外的に安打を記録する)
【打席途中での交代】
・ 1打席の中で複数の打者が出場し三振だった場合は2ストライク目を取られた打者に三振と打数を記録する。三振以外なら代わって出場した打者の打撃行為となる。
・ 打席途中に投手が交代し四球となった時、ボールカウントがボール、ストライクの順に2-0、2-1、3-0、3-1、3-2からの救援だった場合、前任投手に与四球が記録される。四球以外なら救援投手の責任となる。
【交代できない】
・ 先発投手は少なくとも1人の打者の打席が完了するまで交代できない。このため先攻チームは初回の攻撃で投手に代打も代走も出せない。
・ 指名打者は相手の先発投手に対して少なくとも1打席を完了させなければ交代できない。ただし相手の先発投手が交代した時は交代できる。
【打点がつく時、つかない時】
・ 満塁から四死球、打撃妨害、走塁妨害によって打者が走者となり、3塁走者が得点した場合、打点が記録される。
・ ゴロを打ち、ダブルプレイの間に走者が得点しても打点は記録されない。実際にはダブルプレイにならなくても第一アウト成立後、第二アウトを捕球エラーにより免れた場合も同様。ただし、送球エラーなら打点は記録される。(例 ショートゴロのゲッツーの場合・・643Eならつかない、セカンドからの送球がそれて1塁セーフになった場合はつく)
・ 無死又は1死3塁、外野へのフライをエラーし走者が得点した場合で、仮にその打球が捕らえられていても捕球後走者が得点できたと記録員が判断すれば犠牲フライが記録される。
【盗塁に関するあれこれ】
・ 走者がスタートを切っていた時、投球が逸れても暴投も捕逸も記録されず盗塁となる。
・ 牽制にひっかかり挟まれた走者が守備側の失策なく次塁へ進んだ場合は盗塁、次塁へ進もうとしてアウトになった場合は盗塁刺が記録される。
・ ダブルスチール、トリプルスチールで1人でもアウトになった場合、他の走者の進塁は盗塁ではなく送球間の進塁となる。
・ 点差の開いた終盤や1、3塁からの盗塁で守備側が守備行為を示さなかった場合は盗塁ではなく野手選択による進塁となる。
他にも
・非常な好守備を行なったが、続くプレーが十分でなくアウトをとることが出来なかった場合は安打とする(例えば三遊間への鋭い当たりを遊撃手がダイビングキャッチで好捕するも一塁へ悪送球した場合など。もちろんそれが原因で余分に進塁されたら安打1失策1となる)。
・失策がなくても進塁できたかどうかに疑問があれば、投手に有利になるように考慮する。
など野球規則全体を通して、なるべくマイナスとなる記録はつけないように、というニュアンスが読み取れます。判断に迷った時はこのことも参考にしてみて下さい。非常にややこしい自責点については次回に続きます。