ガソリン価格、「ガソリン値下げ隊」結成時を上回る
資源エネルギー庁が7月31日に発表した石油製品価格調査によると、7月29日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は前週比+1.8円の1リットル=158.8円となった。
これで4週連続の値上がりとなり、2008年10月14日の週以来の高値を更新している。民主党が「ガソリン値下げ隊」を結成してガソリン税の暫定税率廃止を訴えた08年1月当時の価格水準ですら152.9~154.3円であり、現在の値位置はその当時の水準を完全に上回っている。
しかし、09年の衆院選挙でガソリン暫定税率の廃止をマニュフェストに掲げて圧勝した民主党は、政権獲得後に公約を果たすことに失敗しており、もはやこの問題は民主党にとってタブー化した感が強い。一方、与党・自民党も消費増税を議論している現状でガソリン税の引き下げを議題とすることは難しく、政策的にガソリン価格の値下げを促すことは困難な状況が続くと見ている。当面は、このままガソリン高を静観せざるを得ない状況が続くことになるだろう。
■8月の急騰リスクは後退
ガソリン小売価格の過去4週間の累計値上がり幅は6.9円に達しており、前年同期の139.6円からは19.2円(13.8%)もの急騰となっている。今年は年初から概ね150円台前半の高値を推移してきたが、原油調達コストが高止まりする中、小売価格に対してコスト負担増の転嫁が急ピッチに進んでいる。
ただ足元では、ドル建て原油価格の急騰が一服していることで、8月のガソリン価格が更に急騰を続けるリスクは後退している。東京商品取引所(TOCOM)の中東産原油(当限)は、1キロリットル=6万5,000円水準で膠着化しており、既に上昇傾向には歯止めが掛かっている。TOCOMガソリン(当限)も、7月25日に一時8万1,800円を記録したものの、今週は7万7,000円台まで値下がりしており、ガソリン価格高騰圧力は少なくとも小康状態を迎えている。
引き続きエジプト情勢など北アフリカ・中東情勢に対する注意が必要だが、米国のドライブシーズンが終了する時期が近づいていることで、今後は製油所向け原油需要がピークアウトに向かうとの見方が、ドル建て原油相場の高騰にブレーキを掛けている。
また、世界石油需要の拡大を牽引してきた中国では、経済成長よりもシャドーバンキング(影の銀行)や過剰生産能力などの金融・経済システム改革が優先されている結果、石油需要見通しの下振れリスクが高まっていることも、原油高にブレーキを掛け始めている。
これまでの原油高、円安の転嫁が遅れていたことを考慮すれば、仮にドル建て原油価格が軟化したとしても、簡単に国内ガソリン価格が値下がりするとは考えていない。下方硬直性の強い価格動向が続くとみている。警戒されるのは価格高騰に伴う消費者の買い控えだが、直近7月21~27日までのガソリン推定出荷量などは引き続き100万キロリットルの大台を維持しており、高値容認とは言えないながらも、需要にブレーキが掛かる状況には至っていない。
アベノミクス効果もあって、ガソリン高に対する消費者の抵抗感は例年と比較すると抑制されており、これまでの原油高と円安というコスト増加分の価格転嫁が進み易い環境が続く見通し。仮に1リットル=160円台に乗せたとしても、同水準までコアレンジを引き上げるとは見ていない。ただ、引き続き150円台後半の高値水準を想定しておくことが要求されよう。