Yahoo!ニュース

安倍昭恵さんとのスリーショット写真の籠池氏証言は真実だった→100万円の証言も真実味が増してくる

”神風”吹かせた安倍昭恵首相夫人と籠池夫妻のスリーショット写真(関係者提供)

 「安倍昭恵さんとの写真を近畿財務局の担当者に見せた」という、森友学園の籠池泰典前理事長の証言は真実だった。それを裏付ける初めての証言が財務省近畿財務局から飛び出した。

昭恵さんとのスリーショット写真で「神風が吹いた」

 森友事件の核心といわれる国有地8億円値引き売却。なぜそんなことが可能になったのか? 近畿財務局から有利な取り計らいを受けたことについて籠池氏は、発端は安倍首相の妻、安倍昭恵さんと一緒に撮ったスリーショット写真だと述べている。

 2014年(平成26年)4月25日、昭恵さんは初めて森友学園で講演を行った。その後、学園が取得を目指していた問題の国有地を籠池夫妻の案内で訪れ、3人で一緒に写真におさまったのである。有名な国有地前のスリーショットだ(背景には森友学園の前にこの土地の取得を目指した大阪音楽大学も写っている)。

安倍昭恵さんは繰り返し森友学園を訪れている(関係者提供)
安倍昭恵さんは繰り返し森友学園を訪れている(関係者提供)

 その3日後、籠池氏は近畿財務局を訪れ、担当者にスリーショット写真を見せたという。その時のことについて籠池氏は去年2月、私の取材に次のように証言した。

籠池氏)昭恵夫人が来られて「いい土地だから話を進めてください」とおっしゃった。写真もありますよ、と(籠池氏が近畿財務局の担当者に話した)。そしたら財務局の人が「写真を見せてください」と言うので見せたら「これコピーしていいですか?上司、局長にも見せなければいけないので」と。

相澤)写真を見せて近畿財務局の態度は変わりましたか?

籠池氏)変わりました。それまではなかなか話が進まなかったんですが、写真を見せた後は態度が変わったんでビックリしました。こちらの方から「こうしてください」と言わなあかんところを、逆にあちらから「こうされたらどうですか?」「このようにする方がいいですよ」などと、提言のようなものがどんどん出てきました。

籠池泰典さんと諄子さん夫妻(撮影・相澤冬樹)
籠池泰典さんと諄子さん夫妻(撮影・相澤冬樹)

 こうした経緯について籠池氏は「神風が吹いた」と表現している。内容はきわめて具体的だが、あくまで一方の当事者である籠池氏だけの証言で、もう一方の当事者である近畿財務局側の証言はこれまでなかった。

近畿財務局の担当者が籠池氏の証言内容を初めて認めた

 ところが、この時、籠池氏に応対した担当者が今回初めて当時のことを証言した。この担当者は近畿財務局の統括国有財産管理官だった前西勇人氏で、現在は神戸財務事務所の総務課長を務めている。前西氏は、森友事件をめぐる公文書改ざんで命を絶った赤木俊夫さんの妻、雅子さんが私とともに面会に訪れた際、初めて面談に応じた。

 この席で赤木さんが「スリーショットの写真を見せられたのは前西さんじゃないですか?」と尋ねたところ、前西氏は「私が応接した時です」と写真を見たことを認めた。「スリーショットの写真、上司に見せるって、誰にお見せになったんですか?」という質問には「お話しできません」と答えたが、上司に見せると言ったこと自体は否定せずに事実上認めた

 また、財務省は赤木俊夫さんが亡くなって2か月後の2018年5月に900ページを超える交渉記録や約3000ページもの決裁文書を公表したが、前西氏が写真を見せられた4月28日のものだけが欠落している。その点を赤木さんは「なぜあの日の応接記録が出てこないんですか? 前西さんが実際に応接されたってことであれば応接記録は必ずあると思うんでそれを公開してほしいと思ってます」と問い質した。これに前西氏は「東京(の財務本省)も含めて、組織で我々仕事してるから、お話しできないんです。その時に応接記録を作ったかどうかも含めて、お話しできないんです」と述べたが、記録の存在自体は否定しなかった

 前西氏が、籠池氏から安倍昭恵さんとのスリーショット写真を見せられ、上司に見せると言ってコピーを取ったことを事実上認めたことの意味は極めて大きい。籠池氏の証言が事実であることを、初めて財務省側の人物が裏付けたことになるからだ。

前西氏が籠池氏から見せられコピーをとった写真(関係者提供)
前西氏が籠池氏から見せられコピーをとった写真(関係者提供)

証人喚問での「昭恵さんから100万円寄付」証言も真実味が増してくる

 籠池氏は3年前、国会の証人喚問で、安倍昭恵さんから「安倍晋三からです」と言われて100万円の寄付を受けたと証言している。安倍首相はこれを否定しているが、昭恵さんの直接の証言はない。

 この100万円について籠池氏の長男、佳茂氏は、籠池氏の側にいた著述家の菅野完氏による「捏造であり、報道テロです」とツイッターに書いている。

父、籠池泰典氏を呼び捨てで非難する佳茂氏(撮影・相澤冬樹)
父、籠池泰典氏を呼び捨てで非難する佳茂氏(撮影・相澤冬樹)

 だが私が籠池氏から聞いた話は違う。籠池氏は以下のように話した。

「安倍昭恵さんから100万円を受け取ったのは事実。そのことは当時、森友学園の寄付簿にも記載している。しかしその寄付簿は検察の捜索で押収された。補助金詐欺とは何の関係もないはずだが、いまだに戻ってこない。菅野さんは、私が100万円を昭恵さんに返そうとした時、真ん中に白い紙を挟んで両端だけお札の偽札束を用意し、私に手渡した。私はそのことを知らずにテレビカメラの前で見せたから、みんなに偽物だと知れ渡った。菅野さんが100万円に関与したというのはそういうことだ」

 証人喚問での証言はうそをつくと偽証罪に問われるため、通常の証言よりはるかに重い。「昭恵さんとのスリーショット写真」についての証言が真実であるなら、証人喚問での「昭恵さんから100万円」証言も真実味が増したと言えるのではなかろうか?

【執筆・相澤冬樹】

2014年3月安倍昭恵さんが初めて籠池夫妻と会った時の写真(関係者提供)
2014年3月安倍昭恵さんが初めて籠池夫妻と会った時の写真(関係者提供)

宮崎生まれ。NHKで記者修業30年余(山口・神戸・東京・徳島・大阪)。森友事件取材中に記者を外され退職。経緯は文春文庫『メディアの闇「安倍官邸vs.NHK」森友取材全真相』。還暦間近なるも修業継続中。「取材は恋愛に似ている」を信条に、Yahoo!ニュースや週刊文春、週刊ポスト、日刊SPA!、日刊ゲンダイなど様々な媒体で執筆。ニュースレター「相澤冬樹のリアル徒然草」配信中→http://fuyu3710.theletter.jp/about

相澤冬樹の最近の記事