戦力としての価値をすでに失っていた山本昌の引退判断は良いタイミングだった
50歳の山本昌が引退を表明した。50代での登板や、ジェイミー・モイヤーのメジャー最年長勝利記録(49歳151日)を上回ることは叶わなかったが、良いタイミングだったのではないか。
ぼくは、この選手が好きだった。実力や実績はもちろんだが、ここまで長期間にわたり現役を続けながら、特に求道者的なストイックなイメージはなく、飄々としているところが良かった。記録への執着もそれなりにあったのだろうが、そのことやカネを稼ぐこととは別次元で野球をやっているように見えるところに惹かれた。
実際、09年以降は7年間で46登板のみ。43歳だった08年終了段階で200勝を超え(204勝)、沢村賞受賞(94年)やノーヒッター達成(06年)も果たしていた。一般的には、「全てやり尽くした」として、それ以降はいつ引退していても悔いはないように思える状況が何年も続いていた。
ぼくは、今回の彼の引退の判断は適切だったと思う。言い換えれば潮時だった。並みの選手なら、現役を長く続けたければ悔いの残らぬようトコトンやれば良い。しかし、彼ぐらいの域になると、現役の継続も編成上のニーズがある程度伴ってこそ意義がある。いわんや、そこにメジャー記録も上回るほどの最年長勝利などという「記録」が絡んでくると一層そうだ。
山本をモイヤーと比較して優劣を論じるつもりはない。しかし、モイヤーは40歳で迎えた2003年シーズンで21勝を挙げ、47歳の2010年までローテーション投手として活躍している。2012年がラストシーズンとなったの、戦力としての価値がなくなったためもはやオファーがなくなったからだ。モイヤーの引退時期は、戦力としての賞味期限切れ時期だった。
日本球界の場合は、メジャーのように必要がなくなったら大選手でもあっさりリリースされる訳でない。だからこそ、山本の判断は良いタイミングだったと思う。