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森友問題で新事実、昭恵夫人側への籠池氏の手紙公表―「ゼロ回答どころか満額回答」大門実紀史参院議員

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
安倍首相と昭恵夫人。森友問題は「アッキード事件」化している。(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

学校法人「森友学園」へ国有地がタダ同然で払下げられた問題で、また新な事実が発覚した。共産党の大門実紀史・参議院議員は、籠池泰典・森友学園理事長が、2015年10月26日付けで首相夫人の安倍昭恵氏側に送ったという手紙を入手、昨日28日の参議院決算委員会で、その内容を明かした。籠池氏が「神風が吹いた」という昭恵氏側からのファックスは、今回、入手された手紙の返信にあたるもので、この二つのやり取りと、その後の事実経過を見ると、籠池氏の要求通りに国有地取得が進んだ「満額回答」となると大門議員は指摘。この手紙ついては安倍晋三首相や菅義偉官房長官も読んだと認めており、森友問題への昭恵氏の関与が一層疑われる事態となった。

〇「満額回答」裏付ける籠池氏の手紙

大門議員が明かした籠池氏からの谷・内閣総理大臣夫人付への手紙の内容は以下のようなものだ。

  • 定期借地契約を50年契約にした上で、早く買い取ることができないか
  • 賃料が高いので半額程度にしてほしい
  • (森友学園側が)立て替えた費用は平成27年度予算で支払われるはずだったのに、28年度の予算となるとは何事か

これらの要望はどうなったか。まず、借地契約を50年にすることについては、谷氏からの回答ファックスでは否定されていたため、安倍政権側は「ゼロ回答だ」としていたが、大門氏は「籠池氏の主な要望は(国有地を)早く買い取ることで、それはこの手紙から半年後の2016年6月20日に実現している」と指摘した。

また月額227万円の賃料を半額にすることについても、「2016年の6月20日の売買契約での年間支払額を月額にしてみると100万円程度になった」と籠池氏の要望通りになったと大門議員は追及。

さらに森友学園が立て替えた工事費(国有地のごみ撤去費用)約1億3000万円についても、谷氏からのFAXでは「平成28年度での予算措置を行う方向で調整中」と書かれており、実際、「2016年4月6日、年度が変わった途端に支払われている」(大門議員)というスピード対応だった。

これらの事実を列挙した大門議員は、「(谷氏からの)ファックスだけを見るといかにもゼロ回答のように見えるが、籠池氏からの手紙もつけ合わしてみると、ゼロ回答どころか満額回答だ」と全てが籠池氏の要求通りになったことを指摘、さらに「この手紙を総理は読まれたのか」と問いただした。これに対し、安倍首相は「私自身は一部しか読んでいません」と答えるのがやっとだった。

〇昭恵氏の証人喚問は不可欠

安倍昭恵氏に電話し、彼女に仕える谷査恵子・内閣層大臣夫人付からの財務省への問い合わせの回答ファックスが届いてから、国有地取得へ状況が大きく動いた―籠池氏はそう今月23日の記者会見で語り、その急転直下の展開を「神風が吹いた」と表現した(関連記事)。今回、大門議員がその内容を明らかにした籠池氏からの谷氏への手紙は、首相夫人である昭恵氏が森友学園の国有地取得のため、財務省に圧力をかけた疑いを一層強くするものだ。状況証拠的にグレーから限りなく黒に近くなったといえる。野党からの昭恵氏の証人喚問の要求に、政府与党は抵抗しているが、疑惑解明には、昭恵氏が国会で追及されることが不可欠である。

〇安倍内閣全体も責任問われる

昭恵氏のみならず、安倍内閣全体の責任も問われるべきだろう。28日、安倍内閣は「森友学園」への国有地払い下げなどを巡り、関係省庁への政治家からの不当な働き掛けは「一切なかった」と否定する答弁書を閣議決定した(関連報道)。政治家ではないにせよ、首相夫人である昭恵氏の関与の疑いが強くなる中で、こうした閣議決定を行うこと自体、真相究明を求める世論に対し不誠実だ。閣議決定は閣僚全員の一致を必要とするもの。安倍内閣全体で、本件に対する責任を負ったことを自覚すべきだ。とりわけ、安倍首相は「私や妻が関係していたということになれば、間違いなく総理大臣も国会議員も辞めるということは、はっきりと申し上げておきたい」と国会で宣言した。もはや、昭恵氏の関与は否定しがたくなっている中で、そろそろ自らの発言の責任を取るべきだろう。

(了)

フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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