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鼻をかむと鼻水が逆流する? 適切な鼻のかみ方とは

堀向健太医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。
(写真:アフロ)

風邪をひくと、咳や発熱だけでなく、鼻水も症状として多くなります[1]。

そして鼻水がたまると、鼻が詰まって不快になるばかりでなく、一部は副鼻腔炎、いわゆる蓄膿症を起こすことがあります。

鼻の通り道は、『副鼻腔』といって頭の骨の中にある空洞につながっています。ですので、鼻水が流れ込んでいってしまって炎症をおこすことがあるのです。

たとえば風邪をひいた4歳から8歳の子どもにおける研究では、風邪の後にほとんどが自然に改善したものの、8.8%の人が副鼻腔炎を発症したという研究結果もあります[2]。

鼻の通り道を開けておくのは大事なことなのですね。

しかし、『鼻をかむ』ことは意外に難しく、あまりに強くかむことで、耳を痛めてしまったり、(極端な例ですが)副鼻腔が骨折して頭の中に空気が入ってしまった…なんていう報告もあります[3]。

そこで今回は、適切に鼻をかむ方法を考えてみたいと思います。

『適切な強さで鼻をかむ』のは、意外に難しい

イラストAC
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『鼻をかむ』という方法は、加減が難しいものです。

鼻をかんだり、もしくはくしゃみや咳をしたりした時に、副鼻腔に鼻水が逆流していかないかを確認したという研究があります。すると、咳やくしゃみでは副鼻腔に鼻水が流れ込まないけれども、鼻をかむと4人中4人とも副鼻腔に鼻水が流れ込んだという結果になっています[4]。

無理に鼻をかむと、鼻の粘膜に傷ができ、鼻血が出たり、鼻水が鼻と耳をつなげる管である耳管を通して、耳を傷めてしまったりします[5]。極端な例では、鼻を無理にかむことで『眼球が収められている眼窩を骨折した』といった報告もあります[6]。

では、鼻水はどのようにかむのが良いのでしょうか。

写真:イメージマート

一般的に、『鼻水のたまっている逆側のほうの鼻の横側のふくらみ(鼻翼)を抑えて、ゆっくりとやさしくかみましょう』とされています[7][8]。

しかし、片方の鼻をおさえてもう片方の鼻の方の水を出す方法と、おさえずに両方の鼻をかむのとどちらが良いのかに関し、十分な科学的な報告はなかったのです。

鼻をかむのは、片方ずつ?それとも両方?

提供:イメージマート

そして最近、片方の鼻をおさえて鼻水を出すという方法と、鼻を押さえないで鼻をかむ方法を比較した研究が行われました[9]。

すると、片方の鼻をおさえずに鼻を両方かむグループのほうが、耳の大事な器官が集まっている中耳の圧が上がりにくい、すなわち耳を傷めにくいのではという結果となったのです。

そして、鼻の通り具合に関する検査の数値に差はなかったので、その研究を行った研究グループは、鼻をおさえずに両方で鼻をかんだほうがいいのではないかと結論しました

ただ、その研究でもうひとつわかったことがあります。

鼻をかんだひとが『鼻が通ったと感じる程度』は、鼻を片方抑えて鼻をかんだ場合のほうがよかったのです。

すなわち、鼻が通った感じがしないと、最終的には強く鼻をかむひとがいるかもしれませんですので、一般的には『片方ずつ鼻をかむ』という指導が多いのかもしれませんね

鼻をかむっていう方法は難しいものですね。

鼻をかむ以外に、鼻水をやさしく取り除く方法はないでしょうか?

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生理食塩水という、鼻にいれても刺激になりにくいように調整した食塩水で鼻を洗うという『鼻洗浄』という方法があります。

鼻洗浄をすると、抗菌薬を使う頻度が少なくなったり、副鼻腔炎を発症するリスクを減らしたという研究もあります[10]。とはいえ、鼻洗浄といわれても、生理食塩水を用意したり注入したりと、ちょっとハードルが高いですよね。

そこで私は、鼻の通り道をきれいにするために『鼻ミスト』をおすすめすることがあります。鼻ミストは、生理食塩水とガスが詰められているキットで、さまざまな製品が販売されています。

鼻ミストは、ボタンを押すと霧状に生理食塩水が噴霧され、鼻水がやわらかくなってかみやすくなり、鼻の通り道が通りやすくなり強くかまなくてもすむのですね。

小さいお子さんは、鼻水を吸引したり、『鼻水するする』を使う方法もある

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小さいお子さんは、鼻水を吸う器械を使うと良いでしょう。風邪をひく回数が減ったり、副鼻腔炎を起こすリスクも減るのではという研究結果もあります[11]。

そして、小さいお子さんに関しては鼻水をかまずともティッシュペーパーで取り除く方法もあります。『鼻水するする』とネットで調べてもらうとわかりやすく発信されている方がいらっしゃいますので、確認していただくとよいでしょう[12]。

さて今回は、鼻をかむのを片方ずつか、それとも両方かっていう面からはじまり、鼻水をどのように取り除くかを考えてみました。

なにかの参考になれば幸いです。

参考文献

[1]チャイルド ヘルス 2015; 18:718-20.

[2]J Pediatr 2016; 171:133-9.e1.

[3]Emergency Medicine Journal 2009; 26:837-8.

[4]Clin Infect Dis 2000; 30:387-91.

[5]What happens if you blow your nose too hard?

2022年12月24日アクセス

[6]BMJ Case Reports 2018; 2018:bcr-2018-224633.

[7]正しい鼻のかみ方|ハナイク(鼻育)|エリエール+Water

2022年12月24日アクセス

[8] JOHNS 2010; 26:1370-1.

[9]Sci Rep 2021; 11:22084.

[10]Paediatr Respir Rev 2020; 36:151-8.

[11]European Journal of Pediatrics 2017; 176:1375-83.

[12]子どもの鼻水、どうしてる?(朝日新聞アピタル)

医学博士。大学講師。アレルギー学会・小児科学会指導医。

小児科学会専門医・指導医。大学講師。アレルギー学会専門医・指導医・代議員。1998年 鳥取大学医学部医学科卒業。鳥取大学医学部附属病院・関連病院での勤務を経て、2007年 国立成育医療研究センターアレルギー科、2012年から現職。2014年、米国アレルギー臨床免疫学会雑誌に、世界初のアトピー性皮膚炎発症予防研究を発表。医学専門雑誌に年間10~20本寄稿しつつTwitter(フォロワー12万人)、Instagram(2.4万人)、音声メディアVoicy(5600人)などで情報発信。2020年6月Yahoo!ニュース 個人MVA受賞。※アイコンは青鹿ユウさん(@buruban)。

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