フィンランド大統領選2024 新たなリーダーで描かれる北欧の未来像
2024年1月28日、フィンランドで大統領選挙が行われる。北欧の小国ながら、国際政治において重要な役割を果たすこの選挙は、地政学的な変動期における新しいリーダーシップの方向性を示すものとなるだろう。
フィンランドのNATO加盟を巡る舞台裏で、サンナ・マリン元首相とともに交渉に励んできたサウリ・ニーニスト現大統領は6年間の任期を終える。
9人の全立候補者の中には3人の女性がいるが、有力候補は全員男性。フィンランドではこれまで女性大統領はまだ一人しか誕生していない。女性の大統領が誕生する可能性が今回はほぼゼロに近いことが、筆者個人的には物足りなくも感じるところだ。
現代のフィンランド人は大統領に何を期待しているのか?
有権者が自分の考えと最も近い候補者を選ぶ、フィンランド公共局YLEが作成した29の質問をもとに、選挙の主要な議論ポイントと、フィンランドが求めるリーダーシップの性質について考えてみたい。
「他のNATO諸国の軍隊をフィンランドに常駐させるべきか」
NATOと国際安全保障
フィンランドのNATO加盟は、国際安全保障の新たな局面を開いた。選挙では、NATO諸国との協力や外国軍の駐留など、国際政治におけるフィンランドの役割が焦点になっている。
「EUは中国への依存度を下げるべきか」
外交政策の挑戦
フィンランドはEUとの関係、中国依存度の問題、ウクライナのEU・NATO加盟支援など、国際関係における多くの挑戦に直面している。次期大統領には、これらの複雑な問題に対処するための明確なビジョンと外交戦略が求められている。
「フィンランドは第3の公的性別を導入すべきだ」
国内政策の焦点
移民政策、社会的支援、性別に関する徴兵制、第3の公的性別の導入など、国内政策も重要な議論の対象だ。フィンランドの社会的結束と多様性の維持、環境保護など、取り組むべき多岐の課題をこなせるかどうかが問われている。
「大統領の職務は、犯罪で有罪判決を受けた者の恩赦から外れるべきだ」
民主主義と憲法的権限のバランス
大統領の権限、特に議会解散権や犯罪者への恩赦権に関する議論は、民主主義と憲法制度における大統領の役割を示している。フィンランドの民主主義を保護し、権力を適切に行使することが、国民の期待に応える鍵となる。
新しいリーダーシップの模索
フィンランドでは、国際的な地政学的状況と国内の社会的課題に対応する新たなリーダーシップが求められている。北欧の小国であるフィンランドは、国際社会にどのような影響を与え、そしてどのような未来を描いていくのか。
2024年のフィンランド大統領選は、単なる国内の出来事にとどまらず、国際社会に対しても重要なメッセージを発信する機会となるだろう。
公共局YLEのボートマッチ質問
- フィンランドは現在以上に他のNATO諸国を防衛する準備をしなければならない
- 兵役を終えた者は全員、海外でのNATOの作戦に参加する義務があるべきだ
- 他のNATO諸国の軍隊をフィンランドに常駐させるべきだ
- フィンランド領内での核兵器の使用を認めるべきだ
- フィンランドはオーランド諸島に兵士を駐留させるべきだ
- ウクライナは、ロシアとの和平協定の一環として、少なくとも国土の一部を放棄する用意したほうがいい
- EUは中国への依存度を下げるべきだ
- フィンランドはアフリカ諸国との協力を強化すべきだ
- フィンランドは、他のNATO諸国による人権侵害に干渉すべきではない
- ロシアを国連安全保障理事会から追放すべきだ
- フィンランドはウクライナのEUおよびNATO加盟を積極的に推進すべきだ
- フィンランド大統領は、自らの決定だけで議会を解散できる権限を持つべきだ
- フィンランド大統領は、国際的な気候変動政策において主導的な役割を果たすべきだ
- 大統領の職務は、犯罪で有罪判決を受けた者の恩赦から外れるべきだ
- 大統領の任務は、フィンランドにおける対立の激化を防ぐことだ
- フィンランドに戦争の危機が迫った場合、大統領は国防軍総司令官のポストをプロの軍人に譲らなければならない
- 大統領はフィンランド系でなければならないという条件は廃止すべきだ
- フィンランドはあらゆる種類の移民を必要としている
- 若者の暴力は移民政策の失敗の結果だ
- フィンランドでは、社会的支援で生活するのは簡単すぎる
- 大統領は新年のスピーチで神の祝福を願うべきだ
- 徴兵制はすべての性別に適用すべきだ
- フィンランドは第3の公的性別を導入すべきだ
- フィンランドでは毛皮の養殖をやめるべきだ
- 麻薬使用者は罰するのではなく、治療すべきだ
- フィンランドの自然喪失を食い止めるため、森林伐採を大幅に制限すべきだ
- フィンランド先住民の出生率が低いため、フィンランド文化の伝統が危機に瀕している
- フィンランドでは人種差別が大きな問題となっている
- フィンランド全土に人を住まわせ続けることは意味がない
Text: Asaki Abumi