健康保険証のなりすまし被害、スマホの契約で多く各社が本人確認書類としての取り扱いを終了済み
マイナ保険証(マイナンバーカードの健康保険証利用)にまつわる議論のなかで出てきた健康保険証のなりすまし被害について、日刊ゲンダイが「件数不明で誇大広告だ」と批判し、日本共産党の小池晃参議院議員が「聞いたことがありませんね」と『Twitter』で便乗する(コミュニティノートで事例を指摘された後にツイートを削除)など大きな話題となっていますが、ここでちょっと「なりすまし被害はありまぁす!」と声を大にして伝えたいので記事にすることにしました。
健康保険証のなりすまし被害、じつは病院の診察だけではなく皆さんが持っているスマートフォンの契約でも起きています(正確には「いました」)。
健康保険証で他人になりすまして特殊詐欺用の電話を契約
問題が起きていたのは特定のキャリアではなく、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3キャリア全てです。
これらのキャリアでは本人確認書類として健康保険証(と現住所を確認するための補助書類)を使うことができたのですが、これを暴力団などの反社会的勢力が悪用し、他人の健康保険証でスマホの契約をするということがありました。
もともと反社会的勢力は暴力団排除条例によりスマホの新規契約ができませんが、他人になりすまして契約したスマホは特殊詐欺で使われるようになりました。
この場合、警察が電話番号を手がかりに犯人を追跡しようとしても、契約している人物はなりすまされた他人のため肝心の犯人にたどり着けないという深刻な事態となっていました。
2023年5月にドコモとKDDI、6月にソフトバンクが取り扱い終了
こうした問題を背景に2023年3月、ドコモは同年5月24日をもって本人確認書類として健康保険証の取り扱いをやめることを発表します。
そしてこれを追いかけるようにKDDIも4月21日に5月31日をもって、ソフトバンクも5月31日に6月13日をもって終了すると相次いで発表しました。
各キャリアともに終了の理由は「契約者本人の意図せぬ不正な契約締結や不正利用などの発生」を挙げています。
つまり、健康保険証のなりすまし被害です。
しかも被害にあっているのは国民健康保険の予算ではなく、私たち一般国民の財布だからたまったものではありません。
被害額は不明だが、特殊詐欺全体で約361億円
このなりすまし被害について被害額も紹介できれば良かったのですが、正確な金額は不明です。
と言うのも警察庁によると2022年の特殊詐欺の被害額は約371億円、認知件数は17,570件なのですが、これらのうちどれがなりすましのスマホで行われたのか分からないからです。
すでに大手キャリアが本人確認書類としての取り扱いをやめたためこれからは被害は減っていくと予想されますが、楽天モバイルや格安SIM(MVNO)など、まだ健康保険証を取り扱っているところもあるためゼロになるわけではありません。
紙の保険証を本人確認書類として使えるようにし続けるかぎり、スマホに限らずそのほかのサービスでもなりすまして契約される恐れがあることについてご注意ください。
余談ですが、健康保険証のなりすまし被害について検索すると過去に外国人の女性が妹の国民健康保険証を利用して総額1,000万円以上の治療を受けていたり(2018年8月29日 産経ニュース)、他人の保険証と偽の委任状を使って郵便局から約357万円をだまし取ったり(2007年5月12日東京朝刊 読売新聞社)していた事例が見つかりました。