高校生に逸材揃う! 20日にドラフト会議
ドラフト会議が目前に迫っている。即戦力の大学、社会人もさることながら、将来を嘱望される高校生はどの球団も喉から手が出るほど獲得したいはずだ。その高校生投手が、近年まれに見る大豊作となっている。夏の甲子園直後に行われたU18アジア選手権でも、投手陣が抜群の安定感を見せて優勝し、レベルの高さを証明した。主力の多くが「プロ志望届け」を提出していて、争奪戦は熾烈になりそうだ。
即戦力ナンバーワンは寺島
早くから逸材といわれながら甲子園に縁がなかった履正社(大阪)の寺島成輝(=カバー写真)は、最後の夏にようやく大舞台に立った。2回戦で、後述する横浜(神奈川)の藤平尚真と直接対決し勝ったが、次戦で敗退した。183センチ、85キロの堂々たる体格で、最速149キロの角度ある直球とスライダー、カーブ、フォーク、チェンジアップを投げる。夏の甲子園では、救援に立った代わり端をとらえられ、「精神面も技術もまだまだ上(プロ)では通用しないことがわかった。もっとレベルアップしたい」と話したが、10月の岩手国体で優勝し、溜飲を下げた。地元・オリックスが入学直後から徹底マークするなど、多くの球団が1位候補に挙げていて、高校生ながら即戦力の呼び声高い。
抜群のアスリート・藤平
横浜の藤平尚真は、右腕では世代トップの評価。
最速152キロの速球を武器に、激戦・神奈川を制して最後の甲子園チャンスをモノにした。185センチ83キロと投手としては理想的な体格で、キレのいいスライダーとカーブ、フォークも精度が高い。甲子園では、2回戦で履正社と当たって敗れた。もっとも、先発を外れ、雨中断後の緊急登板で打たれただけで、内容的には寺島と互角だった。「寺島と勝負でき、楽しめた。これからも(寺島と)意識しあって、お互いを高めていければ」とライバルにエールを送る。千葉県富津市の中学時代は、ジュニアオリンピックの走り高跳びで準優勝するなど、アスリートとしても非凡で、地元DeNAや出身地のロッテなど、在京球団の多くが早くからマークしている。
春から急成長の高橋昂
花咲徳栄の高橋昂也は夏の埼玉予選で37回を投げ、52三振を奪って、昨夏から3大会連続の甲子園出場を果たした。
球速は152キロまで伸び、スライダーやフォークの質も高い。体格も181センチ、83キロと申し分なく、1年経って、下半身が逞しくなった印象を受けた。センバツ以後の急成長から評価はうなぎ上りで、埼玉勢初の夏制覇の期待もあったが、先発を回避した3回戦で作新学院(栃木)に敗退。全体的にまっすぐが走らず、かわす投球が目立った。「悔いはない」と話し、甲子園を去ったものの、その姿にすがすがしさは感じられなかった。しかし直後のU18では、ライバルたちに劣らぬ投球でプロのスカウトの評価を確かなものにしている。この3人が、甲子園開幕時点での「高校ビッグ3」で、奇しくも敗退した試合では先発せず、評価を落とすことはなかった。
甲子園優勝投手・今井
甲子園でベールを脱ぎ、一気に頂点まで駆け上がった作新学院の今井達也は、聖地で上記「ビッグ3」と肩を並べた。
速球は早くから評判になっていたが、制球に甘さがあって昨夏はベンチ外となっていた。甲子園初戦で151キロをマークしファンを驚かせたが、次戦でチェンジアップやスライダーをうまく使った巧みな投球術も披露し、並みの速球投手でないことを証明した。180センチ、72キロの公称だが、実際はもっと細く感じる。それでも、決勝の終盤に140キロ台後半を続けて出すなど、スタミナも無尽蔵だ。甲子園疲れからか、主戦を期待されたU18では制球に苦しみ、国体でも甲子園時のような投球は影を潜めた。自己最速は甲子園の3回戦でマークした152キロ。「タマの質がいい」と評価するプロのスカウトが多く、取材時の受け答えもしっかりしていて、スマートさも持ち合わせている。
甲子園後に輝いた堀
2年連続出場の広島新庄・堀瑞輝は、3回戦で木更津総合(千葉)の早川隆久に敗れた。
昨夏から大きく成長した姿を見せ、U18にも選ばれたが、堀が本領を発揮したのはここからだった。主に抑えで起用され、アジアのライバル、台湾、韓国の打者を全く寄せ付けなかった。決勝の台湾戦では、6回から救援し、無安打8奪三振で優勝に貢献。トータルでも強チーム相手に3試合、9回2/3で1安打、18奪三振と驚くべき数字だった。堀の進化はこれにとどまらず、10月の国体では、変則日程にもかかわらず、1日2試合、11回2/3で18三振を奪い、自己新となる150キロをたたき出すおまけまでついた。177センチ、72キロで、スリークォーターから投じるスライダーのキレは絶品。地元・広島や阪神などが上位候補に挙げていたが、U18以降の大活躍によって、1位で消える可能性もある。
将来性十分の京山、アドゥワ
このほかにも今年の高校生投手はレベルが高い。
甲子園で活躍できなかったが、近江(滋賀)の京山将弥は、183センチの細身の体から最速147キロの速球をコーナー低めに集める。タマ筋がよく、将来性を評価するスカウトが多い。昨春からほぼ1年、腰痛で投球しておらず、伸びしろもありそうだ。松山聖陵(愛媛)を初の甲子園に導いた196センチ右腕のアドゥワ誠は、角度ある速球とチェンジアップを投げ分ける。まだまだ恵まれた体を生かしきれていない印象で、今後の指導次第ではとんでもない投手になるかもしれない。また、明るい性格でファンも多い東邦(愛知)のエース・藤嶋健人は、野手としての評価が高いが、本人は投手にこだわりを持っているようだ。センバツで注目を浴びた大阪桐蔭の150キロ左腕・高山優希、剛速球で春夏の甲子園を沸かせた創志学園(岡山)の『松坂二世』高田萌生も指名を待つ。野手では静岡の鈴木将平が、U18で3番を任され、期待に応えた。俊足巧打の外野手として上位指名が予想される。春夏4強の秀岳館(熊本)の主将・九鬼隆平は、世代ナンバーワン捕手で、本人もプロ入りを熱望している。
甲子園未経験にも逸材が
甲子園未経験組では、江陵(北海道)の左腕・古谷優人が154キロの速球で注目される。U18に選出された東海大市原望洋(千葉)の本格右腕・島孝明も153キロの速球が魅力。187センチの長身右腕・才木浩人(須磨翔風)は、兵庫予選で早々に報徳学園と対戦し敗退したが、将来性を感じさせた。九州には速球右腕が多い。154キロの快速球を持つ梅野雄吾(九産大九産=福岡)、バランスのいいフォームから150キロの速球を投げ込む浜地真澄(福大大濠=福岡)、さらに都城(宮崎)の山本由伸は151キロの速球に変化球の質も高い。地元・ソフトバンクはもちろん、九州に強い阪神が、これまでから多くの九州出身高校生を指名している。
早川らは大学で飛躍誓う
「プロ志望届け」を提出していない高校生は指名できない。届けを出していれば指名を確実視された木更津総合の早川隆久は、早大進学の見込み。昨春センバツ優勝の敦賀気比(福井)の遊撃手・林中勇輝、遊撃守備に定評があり、父が元中日投手だった中京大中京(愛知)の佐藤勇基らも大学で腕を磨き、飛躍を誓う。