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正式にレッドソックス入りした吉田正尚が史上7人目の日本シリーズ&ワールドシリーズのダブル制覇を目指す

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
入団会見で笑顔を見せる吉田正尚選手(レッドソックス提供)

【わずか1時間半の間で正式発表から入団会見へ】

 すでに米メディアが報じていたように、レッドソックスがオリックスからポスティング申請されていた吉田正尚選手の獲得を正式発表し、早速本拠地のフェンウェイパークで入団会見が行われた。

 ちなみに自分のところにチーム広報からメール送信されてきたチームリリースが現地時間の12月15日午後2時28分であり、そのリリース内で告知された入団会見の開始時刻は、わずか1時間半後の午後4時だった。

 さすがにこれだけ短い時間とあっては、ニューヨークを拠点とする日本メディアでも現地に入るのは困難だったように思う。吉田選手が初めてレッドソックスのユニフォームに袖を通す姿を目撃できたのは、ボストン在住の数名の日本人メディアくらいだったのではないだろうか。

【吉田選手の打撃を最大限の評価をするレッドソックス】

 MLB公式サイトでは早速入団会見の様子を伝える動画が公開されており、会見に出席した編成部門の最高責任者であるハイム・ブルーム氏は、以下のように吉田選手を評価している。

 「我々は長期間にわたりマサタカを調査してきたが、あらゆる点で際立っていた。

 バットを捉える力(バットコントロール)、ストライクゾーンの見極め(選球眼)、力強くボールを振り抜く能力(スイングスピード)と様々な技術を兼ね備え、常に質の高い打席を続けていた。

 そうした点を踏まえ、我々は彼がメジャーリーグ・レベルでも確実にインパクトを与えてくれると考えている」

 ここ数年のMLBは“投高打低”の傾向が強く、打者の打率、出塁率は年々下降しており、レッドソックスは2年連続で最高出塁率を記録した吉田選手の打撃に対し最大限の評価を与えている。

 そうした背景もあり、レッドソックスは5年総額9000万ドル(ちなみにレッドソックスは年俸額については明言をさけている)という契約を用意し、ポスティング申請された数時間後に吉田選手を射止めることに成功したというわけだ。

【WS制覇に貢献したいと語った吉田選手】

 残念ながら前述の動画では吉田選手の肉声がほとんどカットされており、彼が会見でどんな話をしたのかを確認することはできない。

 ただ通訳された英語を聞く限りでは、「オリックスではチームが勝つために貢献するよう心がけ、チームも今年優勝することができた。来シーズンからはレッドソックスがワールドチャンピオンになるために貢献していきたい」という内容の発言をしているようだ。

 レッドソックスは今オフにサンダー・ボガーツ選手がFAでパドレスに移籍してしまい、打線の軸を失っている。あくまで今後の補強状況次第とはいえ、吉田選手の活躍が来シーズンのレッドソックスのカギを握っていることは間違いないところだ。

【日本人選手として史上7人目の日本S&WSのダブル制覇を目指す】

 もし吉田選手が語った抱負通りにワールドシリーズ制覇に貢献することになれば、井口資仁選手、田口壮選手、松坂大輔投手、岡島秀樹投手、松井秀喜選手、上原浩治投手に次いで、史上7人目の日本シリーズとワールドシリーズのダブルへ制覇という偉業を達成することになる。

 ちなみに現在MLBに在籍している日本人選手の中でこの快挙に挑戦できるのは、吉田選手の他にダルビッシュ有投手と大谷翔平選手しかいない。

 それと偶然ではあるが、上記6選手のうち3人(松坂投手、岡島投手、上原投手)は、レッドソックス在籍1年目でダブル制覇を達成しているのだ。その流れで吉田選手もと期待したいところだが、チームを取り巻く状況はかなり厳しいといわざるを得ない。

 昨シーズンは新型コロナウィルスの影響で60試合の短縮シーズンだった2020年を除けば、レッドソックスは7年ぶりに地区最下位に終わっている。しかもア・リーグ東地区はMLB最高の激戦区だけに、5チーム中負け越したのはレッドソックスのみだった。

 今オフもヤンキースとブルージェイズは来シーズンを見据え順調に選手補強を続け、若手中心のレイズとオリオールズも来シーズンに更なる飛躍が期待されている。やはり来シーズンも厳しい戦いを強いられることになりそうだ。

 いずれにせよ吉田選手は、移籍1年目から結果を求められる立場にあるのは間違いない。レッドソックスの期待に応えられる活躍を願うばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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