独身者が想う「自分にもし子供が生まれたら受けさせたい教育レベル」から見た大学信奉の現状
大学の授業料をはじめとした大学に関わる諸問題における原因の一つとして、少なからぬ人が実質的な義務教育課程・社会に出るために必要な最終学歴を大学と認識し、とにかく大学を卒業しないといけないとの発想があると指摘されている。現実問題として世間一般では、どの程度の「大学信奉」が生じているのだろうか。今回は国立社会保障・人口問題研究所が2016年9月に発表した、日本国の結婚や夫婦の出生力の動向などを長期的に調査・計量する「出生動向基本調査」の最新版「第15回出生動向基本調査」(※)を基に、現在未婚の人のうち結婚願望を持つ人における、将来自分が有するであろう子供に、どの程度の教育を受けさせたいと考えているか、その心境を確認していく。
次に示すのは調査対象母集団のうち現在未婚の18~34歳の中で、将来結婚をしたいと考えている人(≒自分の子供を持ちうる人)に対し、自分の子供にどの程度の教育を受けさせたいかを尋ねた結果。回答者の性別・年齢階層に加え、対象となる子供の性別で仕切り分けしている。なお18・19歳は少数のため年齢区分の結果では省略されているが、「総数」では盛り込まれている。
まず対象となる子供の男女とも大学以上(大学あるいは大学院)が多数を占めている。短大や高専、専修・専門学校、さらには高校・中学は少数派。回答者の年齢階層別では大よそ年下ほど大学の学歴を望む人が多く、年上になるほど高卒や中卒でも良いとの意見が増加する。高専や短大などの値はさほど違いは無い。それぞれの世代(年齢階層ではなく)の価値観の相違によるものか、あるいは現在の回答者の年齢から結婚・出産を経て子供の育成期間を考慮すると、大学に達するまで金銭的な支えをするための就労は難しいとの判断によるものかもしれない。
対象となる子供の男女別の違いとしては、対男の子の場合の方が多少大学を望む人の割合が多く、対女の子の場合は短大・高専や専修・専門学校と回答する比率が高くなる。他方、高校・中学の回答率は同程度。少なくとも高校より上を望むとの認識は、男の子に対しても女の子に対しても同じようだ。
また回答者(親となる側)の性別では大きな違いは見られない。ただし対男の子でも対女の子でも、未婚男性よりも未婚女性の方が、いくぶんながらも大学以上への学歴を望む声が大きなものとなっている。「教育ママ」とは随分と古い言い回しだが、男性より女性の方が子供の教育には強い熱意を有しているように見える。
ちなみに「大学以上」の詳細は次の通り。
ほとんどが大学院までは望んでおらず、大学までで良しとしている。大学院の値に関しては少数なこともあり、属性別の法則性は無い。
大学までの教育を望む理由は今調査では問われていないが、大学院への選択が少数であることを合わせ考えると、学問を突き詰めてほしいとの思いでは無いことは容易に想像ができる。単純なラベリング、信奉的なものであるとの因果関係を説明するまでには至らないが、少なくとも多くの独身者が自分の子供に対し、大学への進学・卒業学歴を望んでいる事実は認識しておくべきだろう。
※調査要綱は次の通り
基本的に5年おきに実施されている調査で、直近値となる2015年実施分は2015年6月に、同年6月1日時点の事実について調査したもの。調査対象は独身者調査で18歳以上50歳未満の独身者、夫婦調査は妻の年齢が50歳未満の夫婦(回答者は妻)。調査対象地域は2015年国民生活基礎調査の調査地区1106地区(2010年国勢調査区から層化無作為抽出)の中から選ばれた900地区。調査方法は配票自計、密封回収方式。配布数・回収数は独身者調査では1万1442票/9674票(記入状況の悪い920票は除外のため有効票数は8754票。
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