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岸田政権は拉致問題解決でどんなアプローチを考えているのか#専門家のまとめ #拉致問題

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
岸田首相(写真:つのだよしお/アフロ)

朝日新聞は29日、北朝鮮による拉致問題の解決に向け、日本政府関係者が今年3月と5月の2回、東南アジアで北朝鮮の朝鮮労働党関係者と秘密接触していた、と報じた。事実なら、拉致問題を早期に進展させる取り組みとして評価できる。が、今後また接触を持てたとして、その先はどのような道筋を考えているのか。

「日本人いるか」否定せず

朝日新聞によれば、複数の首相官邸関係者も、今春に日朝間の秘密接触があったことを認めたという。また、北朝鮮側は日本側との対話に意欲的な姿勢を示し、北朝鮮に日本人がいるかどうかについても否定しなかったという。

被爆者支援で突破口との案も

核問題が横たわっている以上、拉致問題の部分的な進展だけで、北朝鮮への経済支援は不可能だ。しかし、太平洋戦争時に日本で被爆後、北朝鮮に渡った人々への支援という形なら検討できるのではとの意見もある。

ストックホルム合意は非現実的

2014年、日朝両国の間でストックホルム合意が交わされ、安倍首相は「全面解決に向けた第一歩となることを期待しています」と語るなど、周囲に希望を抱かせた。ところが、再調査の中身や合意自体の解釈をめぐって、両国の溝は深まる。さらに金正恩体制が強行した核実験とミサイル発射実権をめぐり日本政府は追加制裁措置を決定した。

ストックホルム合意は、将来の国交正常化を前提としているが、現時点ではとうてい現実的ではない。岸田政権は拉致問題を最大限のスピードで動かすことを前提に、思い切った決断をすべきだ。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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