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都道府県別の食塩摂取量の実情をさぐる

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 食塩は食生活にメリハリをつけるのに欠かせない存在だが(写真:アフロ)

適切な食塩の摂取は食生活の面で生活の質を維持するのに欠かせない。さらに健康的な生活にも必要不可欠なもの。一方で過剰に食塩を摂り続けると、身体に余計な負荷を与え、マイナスの影響を及ぼしてしまう。それでは日本国内の各都道府県別に見た場合、どの地域の人がもっとも食塩摂取量が多く、また少ないのだろうか。厚生労働省から2017年9月に発表された定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2016年分における概要報告書の公開値をもとに確認する。

日本全体としての食塩摂取量の全体的な動向は次の通り。ここ10年ばかりの間では、食塩摂取量は減少する傾向にある。

↑ 食塩摂取量平均値(20歳以上、グラム/日)(年齢調整後)
↑ 食塩摂取量平均値(20歳以上、グラム/日)(年齢調整後)

それでは都道府県別の実情はどうなのだろうか。その結果が次のグラフ。次に示すのは2016年時点の都道府県別の成人における、平均食塩摂取量。各地域別の年齢階層構成によるぶれを無くすため、年齢調整が施された上での値。なお2016年4月の熊本地震の影響により、熊本県のデータは無い。

↑ 食塩摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)
↑ 食塩摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)
↑ 食塩摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)
↑ 食塩摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)

地域別で際立った差は無いように見えるが、唯一沖縄県の少なさが目立つ。詳しくは後述するが、沖縄における食生活上の特異性による結果が出ている。また、沖縄県ではほぼ一年中気候が温暖なのも、(身体の温度を保つのには欠かせない)塩分摂取量が少ない一因。見方を変えれば寒さが厳しい地域ほど、体温維持のために食塩を多く摂取するようになるとの話は、全体のグラフを見ても東日本の方が多いように見えることからも、説得力がある。

また男女別に見ると、全都道府県で男性の方が女性よりも摂取量が1グラムから2グラム強の範囲で多い。これは強労働に従事する割合が、男性の方が多いのが主要因。身体を動かし汗をかくことで、身体はより多くの塩分を求めるようになるからに他ならない。

さて上記グラフではやや傾向が分かりにくいこともあり、男女それぞれについて上位陣・下位陣を抽出してみることにする。まずは男性。

↑ 食塩摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位陣)
↑ 食塩摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位陣)
↑ 食塩摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位陣)
↑ 食塩摂取量の平均値(男性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位陣)

「東日本の方が多いように見える」との話だが、上位陣には東日本の県が多く、下位陣には西日本の県が多いことから、その印象がまったくの的外れでもないことが分かる。また改めて沖縄県の摂取量の少なさが認識できる(縦軸は上位・下位グラフともすべてそろえている)。

沖縄県が他地域と比べて食塩摂取量が少ない理由は、味付けで多分にかつお節や削り節などかつお系の調味料を用いるのが原因。それらを使うため、しょう油を使う機会が少なくなる次第。

↑ 都道府県庁所在地別「かつお節・削り節」世帯平均消費金額(2016年、円、総世帯)(家計調査より)
↑ 都道府県庁所在地別「かつお節・削り節」世帯平均消費金額(2016年、円、総世帯)(家計調査より)

沖縄県だけでなく、かつお節の生産が盛んな三重県や高知県などでも「かつお節・削り節」の消費量の大きさが目立つ。しかし、高知県は沖縄に続く食塩摂取量の少ない県となっているが、三重県はほぼ全国平均並みの値。不思議な動向ではある。それだけ食への探求が旺盛なのだろうか。

女性も大勢に変わりはない。多少の順位変動があるのみで、男性と比べていくぶん少ない以外は、東日本が多く、西日本が少ない。

↑ 食塩摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位陣)
↑ 食塩摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(上位陣)
↑ 食塩摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位陣)
↑ 食塩摂取量の平均値(女性)(2016年、20歳以上、グラム、年齢調整済み)(下位陣)

男性同様女性でも、沖縄県や高知県の少なさが目に留まる。

厚生労働省の【「日本人の食事摂取基準」(2015年版)】では、成人の目標塩分摂取量に関して、男性は8.0グラム未満・女性は7.0グラム未満(2015年版、1日あたり、ナトリウムの食塩相当量)と定めている。現時点ではすべての地域でこの目標値に達していない。現在の食生活を考慮すると、やや難しい目標なのかもしれない。

一方でここ数年は健康志向の高まりを受け、食塩の摂取量も少しずつ減る方向を示している。過剰な減塩はかえって身体に良くない影響を及ぼしかねないが、留意するにこしたことはないだろう。

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(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。

※国民健康・栄養調査

健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。直近年分の調査時期は2016年10月から11月。調査実施世帯数は10745世帯で、調査方法は調査票方式。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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