コメダ珈琲店に「あんかけスパ」が登場!創業初のチャレンジの狙いとは?
名古屋発の喫茶店チェーン「コメダ珈琲店」(以下「コメダ」)。1968年に名古屋市内で創業し、2000年代以降に全国展開を本格化。今や約860店舗、47都道府県を網羅する日本を代表する喫茶店チェーンです。
コメダといえば代名詞のモーニングサービスに象徴されるように、フードはパンを中心としたいわゆる軽食が基本。ご飯物やめん類は扱わないという姿勢を長年にわたり守ってきました。これはコーヒーがメインである喫茶店らしさを守ると同時に、調理オペレーションを簡素化し、作業負担や食材ロスを軽減するという目的もあると考えられます。これによって客単価の低い喫茶店業態でも高い利益率を確保でき、すなわち外食チェーンとして競争力を身につけてきたといえるでしょう。
10月1日に新メニューのスパゲティ、キッズプレートを発売
そんなこれまでの禁を解いて、10月1日にデビューした新メニューがスパゲティです。名古屋名物のあんかけスパゲティ(以下、あんかけスパ)をはじめ、ナポリタン、めんたいこクリームソースの3種類が用意されています。他にキッズ向けのだいすきプレートも合わせて導入されました。
この新メニューの実力はいかなるものか? 早速、実際に食べに行くことにしました。訪れたのは名古屋市東区のコメダ珈琲店葵店です。
スパゲティは単品では注文できず、ドリンク+770円のセット販売。コーヒー430円と合わせると1200円とそれなりの値段になります。とはいえコメダのフード類はサンドイッチ580円~、コロッケなどのプレート類970円~なのでコメダの中では平均的な価格設定です(価格は地域により一部異なる。以下すべて同)。
筆者がチョイスしたのはもちろん、あんかけスパ。あんかけスパとは、とろみとピリ辛さを加えたミートソースをたっぷりかけた名古屋めしのひとつです。
決め手となるソースはあんかけらしいこってり感があり、トマトの酸味もしっかり。ピリ辛というより味の濃さで辛みを感じられます。あんかけスパの基本である太麺はもっちりして、特徴あるソースがよくからみます。本来は仕上げに麺をラードで炒めるのですが、ここではその行程は省かれているよう。その分、パンチはやや控えめです。名古屋のディープなあんかけスパファンにとっては、ちょっとインパクトに欠けると感じられるかもしれませんが、他地方の人が入門編として食べるにはこれくらいがちょうどいいのかもしれません。
コメダ広報に聞く!新メニュー導入の狙い
あんかけスパをはじめとする新メニュー導入の狙いはどこにあるのか? コメダ広報の清水大樹さんにお聞きしました。
「店舗の立地や客層に応じたお客さまのご要望に対して、各店舗(加盟店オーナー)が柔軟に対応できるように選択制メニューを拡充しました。より多くのお客様にご満足頂くための施策です」
つまり今回の新メニューは、フランチャイズ加盟店側が導入するか否かを決められるというもの。その結果、スパゲティは約860店舗のうち8割、キッズ向けのだいすきプレートは5割の店舗が導入しているといいます。
そして、コメダにおいていわゆる名古屋めし系のメニューは、当然名古屋でのニーズが高いと思いきや、逆に他エリアの方が人気が高いのだとか。
「小倉トーストやみそカツパンは、東西エリアの方が注文数が多い。名古屋めしに関して“どんなものだろう?”“1回食べてみたい”と興味を持ってくださるお客様が多いのだと思います」と清水さん。この傾向からすれば、あんかけスパも名古屋以外の店舗で支持を得ることが期待できそうです。
いきなり日本一のあんかけスパ提供チェーンに!
あんかけスパは名古屋では専門店がいくつもあるほどコアな人気を誇っている一方、ネーミングから味が想像しにくいためか県外にはなかなか普及しません。CoCo壱番屋系列のパスタ・デ・ココでも15年がかりで30店舗程度にとどまっています。そんな中にあって、コメダは約860店舗中およそ700店舗近くがこれを導入し、いきなりあんかけスパが食べられる日本最大の外食チェーンとなりました。全国の人がこれを食べて親しみを覚え、「名古屋で専門店のあんかけスパも食べてみたい!」と思ってくれれば、コメダがこれを採用した意義は大いにあるんじゃないでしょうか。
そして、先の清水さんのコメントにもあるように、今回の新メニューは、コメダ各店舗の自由度を高めるきっかけになるものと位置付けられます。つまり、あんかけスパがヒットすれば、新たなメニュー開発にも弾みがつき、店ごとの判断でメニューを選択して個性を打ち出すことにもつながります。あなたの街のコメダがあなたの街によりふさわしいコメダになる。そんな進化を期待したいと思います。
(写真撮影/すべて筆者)