日本初?!音声SNS・クラブハウスで新商品開発!泡盛・白百合の挑戦
巷で話題となっている音声配信SNS・Club house(クラブハウス)。
芸能人をはじめ、さまざまな人がクラブハウスを利用しており、いま爆発的な人気となっています。
会話のための部屋(ルームと呼ぶ)を誰でもモデレーターとして設けられ、参加者はルームに参加して会話をラジオのように楽しめる。一方、手を上げて会話の輪に加われば、一緒に盛り上がることも可能です。
そして、人々が“ハマる”理由は、音声のみでその場限りだからこそのプライベート感。そして、リアルタイムに同期型でコミュニケーションを図るため、思わぬ形で人との接点が生まれやすい点にあります。ふらりと立ち寄った人同士の会話から思わぬ本音を聞けたりすることも、また魅力です。
私自身も1月後半からクラハ沼にハマっている一人。
1月30日に友人の泡盛蔵の今後を語るルームを開いたところ、その場で様々な出会いが生まれて、新商品開発へとつながりました。おそらくクラブハウスから生まれた日本初の新商品ではないでしょうか。
コロナ禍で沈んだ地域産業が、今注目の音声配信SNSで出会いコラボレーションをして、オリジナリティあふれる商品がスピーディーに誕生する、面白い出来事をご紹介します。
「白百合」の今後について話し合うルームをクラハで展開したところ?!
創業70年の泡盛メーカー・池原酒造は石垣島の中心地にある酒造所で、昔ながらの手法ですべての工程を手作業でお酒を作っています。沖縄にある47の酒造所の中でも最小規模で、「白百合」として知られるクセの強い泡盛、は中でも特徴的です。
現社長の池原優さんは、三代目で32歳。新商品開発などをクラウドファンディングでチャレンジするなど、常に新しい挑戦を行っています。私自身もクラウドファンディングで応援購入をしたことをきっかけに、現地で泡盛の仕込み体験をさせてもらい、池原さんとは親交がうまれました。
新たにはじめたクラブハウスを活用してみようと、今後の「白百合」の展開について話し合うルームをはじめたのが、1月30日の22時から。泡盛片手に、カジュアルにお話をできれば、とスタートしました。
当初は手探りだった池原さんは、東京や大阪などへの営業の仕方や、白百合の今後のブランディングについて雑談の中からなにか得るものがあればいいなと、ぼんやり考えながらの参加だったとのことでした。
徐々にルーム参加する人も増え、20名を超える参加者に。広告代理店で活躍するビジネスマンや、東京の沖縄料理屋を経営する女性、地域おこしに取り組む人まで参加し、売り方や飲み方についてなどの意見交換が活発になってきました。
参加した人の大半とは初対面(会ったわけでなく、音声だけですが)だと話す池原さん。そしてやはり初対面だったのが、知念紅型研究所の知念冬馬さんでした。
「知念紅型研究所」は、琉球王国士族に仕えた紅型三宗家の1つ。伝統ある技法「琉球紅型」の染物を手作業でつくり上げており、数々の賞を受賞。現在は、多くの若者に琉球王朝の文化の魅力を伝え続けています。
老舗同士が異色のコラボレーション!
琉球泡盛は2019年に日本遺産に認定。そして琉球の歴史に欠かせない紅型も、もっと幅広い世代に知って欲しい。「クラブハウス」のルームで話し合われたのは、“琉球の価値を高めたい“という強い想いでした。
やはりこのルームに訪れた、那覇にある泡盛バー「泡盛倉庫」の比嘉さんが、紅型と泡盛の歴史について語るなかで、具体的なコラボレーションの話へとつながっていきます。
そこで、双方の得意とする強みを生かし、「白百合」をモチーフとして伝統ある琉球紅型をオリジナルで制作し、その紅型で包んだ「琉球の手仕事で繋がれてきた価値を体感するセット」として、プレミアム白百合の商品開発をすることを約束しました。22時から始まったルームは、24時を回っておひらきに。
翌日、「株式会社池原酒造」はオンライン対談で「知念紅型研究所」に再度正式な依頼をして、オリジナルデザイン制作を開始。約1週間というスピード感で商品の予約発売のリリースに至りました。
手間隙をかけた特殊な工程を元に、試行錯誤の末に戦前のイヌイ菌を使った復刻「白百合」の強い個性と、濃厚で凝縮されたお酒。そして、石垣島の野原で咲く百合の花をモチーフに、今回の企画で特別に描き下ろした、琉球伝統の紅型。
池原さんは、振り返ってこう語る。
「最初はほんとに雑談感覚でした。みんな好き勝手言うなぁと感じていましたが、やはりまじめな部分はみなさん熱く語ってくださって、せっかく商品開発案が出たのだから、まずは動こうと思いました。とりあえず動きながら商品開発していけばいいと。」
オリジナル琉球紅型で包んだプレミアム白百合(オリジナル木箱入り)
価格/49,800円(税込)
内容/知念紅型研究所の白百合オリジナル紅型で包む、イヌイ菌で仕込んだプレミアム白百合(720ml・44度/粗ろ過仕上げ 簡易ろ過)
発売日/4月上旬(月)予定 納期/受注生産のため、発送まで約3~4週間
目の前で起きたセレンディピティ、偶然から生まれる新たな挑戦が生まれる可能性
「クラブハウス」を使った商品開発は、日本ではおそらくまだ例がなく第一号といえるのではないでしょうか。音声SNSという今までにない新しいツールを使いながら、商品の価値をどう高めたら良いかを相談していたところに、様々な人が集まってきた。
まるで井戸端会議に、通りすがりの人が加わるよう、とでも例えればよいでしょうか。その会話に賛同する、見ず知らずの人同士がコラボレーションすることで、新たな取り組みが生まれました。
ふとした偶然から新たなものが生まれる、セレンディピティがまさに目の前で(いや、耳の前で…なのですが起きていました。
そして、スピード感も特徴のひとつ。翌日には、池原さんは知念さんに連絡をとり、新たな取組について相談を持ちかけました。飲みながら話しが盛り上がって、その場だけ…とすることなく、着実にそのチャンスをスピーディーに形にしていったことが、重要なポイントです。
その後も、オンラインを活用しながら互いのアイディアを固め、約1週間で新商品の予約発売をリリースしています。
池原さんは、今後のクラブハウスの活用についてこう語ります。
「クラブハウスは雑談を楽しむ側面と、まじめなテーマについてディスカッションする面、セミナー形式など、活用の仕方は使う人次第だと思います。いまはまだブルーオーシャンで、普段は会えない方と直接会話できたりするチャンスですね。積極的に会話に参加していきたいです。」
著名人がファンと交流をするだけでなく、既にビジネスでの活用も生まれてきています。
広報チームが日常的な会議を公開したり、採用説明会を行う会社も。また、ブランドの経営者が思いをファンに伝えたり、といった試みが続々と。
老舗同士が「もっと幅広い人に商品や文化を知ってほしい」との想いで生まれたコラボレーション。今注目の音声配信SNSのクラブハウスが、新たな出会いと機会を生み出しました。そして、地場産業のチャレンジに変化を引き起こしていく事例を生んだのは、好奇心やスピード感を持って形にしていく姿勢だったのです。
今晩は泡盛片手に、クラブハウスに耳を傾けてみてもよいかもしれません。