リアルナンパアカデミー事件、主犯に懲役14年を求刑 検察は「没収」も求める
求刑、懲役14年。1月29日、東京地方裁判所。リアルナンパアカデミーの「塾長」、渡部泰介被告に検察は懲役14年を求刑し、あわせて犯行の様子を撮影した動画を保存したパソコンとハードディスクの没収を求めた。
「ナンパ」やモテる方法を指南するとうたいメンバーを集めていたリアルナンパアカデミー(通称RNA)。実際は路上やクラブで声をかけた女性に大量に飲酒させ、意識を失わせた状態で性交に及ぶ行為を繰り返し、その「性交回数」をメンバー内で競い合う非道な集団だった。
これまで、メンバーの4人に5年〜7年の実刑判決、1人に執行猶予付き判決が下されている。
渡部被告は、下記3件で起訴されている。罪状はいずれも準強制性交等罪。
(1)2017年11月、東京での事件…共犯者はO(別事件と合わせ懲役7年の実刑判決、控訴棄却で確定)
(2)2018年3月、東京での事件…共犯者はN(懲役5年の実刑判決)、Y(懲役3年執行猶予4年)
(3)2018年3月、大阪での事件…共犯の逮捕者は2名(不起訴)
他メンバーが容疑を認め、それぞれの被害者に数百万円の被害弁償金を支払っている一方で渡部被告は容疑を否認。法廷でも被害者を「女A、女B、女C」と呼び、繰り返し言動を侮辱した。
渡部被告は同団体の主宰者であり一連の事件の主導者とされること、同種の前科があることなどから、厳しい求刑となることが予想されていた。
検察官「常習的で再犯の可能性高い」
検察官は、
・3件が既遂であること
・酌量の余地がないこと
・主導的、卑劣かつ計画的であったこと
・常習性が高くビジネスとして手口を塾生らに共有していたこと
・これまで他の仕事をした経歴がほとんどないと考えられることから同じ「仕事」に戻る可能性、つまり再犯の可能性が非常に高いこと
・女性蔑視の価値観を法廷でも隠そうとしないこと
などを厳しく指摘。懲役14年を求刑した。
求刑を聞いた被害者Aさんの被害者参加弁護士は終了後、「(他の事件と比べ)軽いとは思わないが、もう少し上でも良かったと思う」とコメント。
傍聴席では筆者の隣に捜査を担当した刑事が座っていたが、求刑を聞いて小さくため息をついていた。
また、被害者Bさんの被害者参加弁護士は被害者論告で、「集団強姦罪」創設のきっかけとなったスーパーフリー事件(2003年に発覚)を挙げ、「相応に重くなければその後の法改正の意味がない」と述べた。
2017年の法改正で集団強姦罪は廃止されているが、これは強制性交等罪(旧強姦罪)の量刑の引き上げ(懲役の下限が3年から5年に引き上げ)により、集団強姦罪の量刑(同4年)を上回ったことによるもの。
2017年の法改正は一般に「厳罰化」とされ、その意図に沿うのであれば、それなりの刑に服すべきという意見と推察する。スーパーフリー事件の主犯は懲役14年(求刑は同15年)だった。
「没収」を求めるのは異例
RNAの事件では、犯行の様子が撮影され、その画像や動画が塾生らのグループLINEで共有されていた。
渡部被告は逮捕前からSNSで「冤罪防止のため」「和姦の証拠を残すため」などと吹聴し、法廷でもその主張を繰り返したが、実際は被害者らの「泥酔状態」「抗拒不能」を示す決定的な証拠となった。
塾生らに対し「成果」を誇るかのように動画や画像を共有していたことは非常に悪質であり、被害者らが激しい不安を感じるのは当然だ。
検察は求刑に際してパソコンとハードディスクの没収を求めたが、これはこのような事件で異例とされる。裁判所による「没収」は「犯罪供用物件」などごく一部に限られている。
「実際のところ没収は原則難しいが、動画がメンバー内で共有されているし、渡部が反省を示していないことから悪用の可能性も高い。検察としても苦渋の判断だったのではないか」(関係者)
判決の言い渡しは3月12日。没収についての判断にも注目したい。
渡部被告は最終の意見陳述で、被害者や共犯者の塾生について「証言は嘘」「嘘つき」「警察に迎合した作り話」と連呼。反省や謝罪の様子は一切なかった。白シャツに色のあせたジーパン姿で、関係者によれば「ナンパのときの格好」。いわば「戦闘服」だったという。
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