若者が与党を動かした!~自民党、参院選公約に「被選挙権年齢引き下げ」盛り込みへ
自民党青年局ニュースより
「被選挙権年齢引き下げ」がまた一歩前進
被選挙権年齢引き下げについては、今年1月に『18歳選挙権に続く二の矢「被選挙権年齢」引き下げは実現するか? 今国会の注目ポイント』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52050652.html)を書いたばかりだが、ここにきて大きく状況が動いてきている。
3月20日になって、自民党が夏の参院選公約に「被選挙権年齢引き下げの検討」を盛り込む方向で調整に入ったと、党幹部が明らかにしたことがメディアに報じられた。
3月24日には、自民党の谷垣禎一 幹事長は、国会内に全国から集まった高校生120人を前に、「若い人たちの政治参加を促すために選挙に立候補できる『被選挙権年齢』の引き下げなどを、参議院選挙の公約に入れられないか、真剣に検討している」と「被選挙権年齢」の引き下げについて検討を進める考えを示した。
これで正式に解禁になったと思うので、この間の動きも含めて書いておきたいと思う。
「被選挙権年齢引き下げ」については、すでに与党として連立を組む公明党が若者の声を反映して、「被選挙権年齢引き下げ検討」を参院選の重点政策案に加えたことは、『若者たちが政党を動かした! ~公明党の参院選重点政策に「若者参画政策」が盛り込まれた経緯』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52053190.html)の中で報告した通りである。
野党も、合併改名騒動で動きが止まっているものの、民主党、維新の党のほか、おおさか維新の会が賛成の立場を示しており、実現の可能性が一気に高まってきた。
「18歳選挙権」実際に動いたのは安倍政権だけ
ここのところの自民党の対応を見ていて思うのは、「まさかここまで踏み込むとは……」ということと、「選挙のためにはここまでやるが自民党なのか……」というのが率直な感想である。
正直、いまだに「選挙後、本当にやるの?」といった疑いも持っているのだが、その疑念を含めたとしても、若者政策に関する自民党の対応は「あっぱれ」である。
2000年にNPO法人Rightsを立ち上げて以来、最前線に立って選挙権年齢引き下げを求めてきた立場から、最近では全国で講演する機会もいただくようになった。その際にお話ししているのが、「18歳選挙権実現にあたり、本気で踏み込んだのは、2つの政権しかない。1つが第1次安倍政権であり、2つ目が第2次安倍政権である」という話だ。
「選挙権年齢引き下げ」を古くから公約に掲げていた政党は、与野党にいくつもある。だが、実際に国会の中で、本格的に法改正に向けて取り組まれたのは、第1次安倍政権の2006年から2007年にかけての「日本国憲法の改正手続に関する法律(国民投票法)」の議論においてである。
その際、18歳からの国民投票権を認めて国民投票法が可決するとともに、附則において、施行される2010年までに選挙権年齢についても18歳に引き下げられること、とされた。
これによって2010年には「18歳選挙権」が実現するものと思われたが、その後の福田政権・麻生政権ではほとんど進展がなかった。民主党への政権交代後、鳩山政権・菅政権・野田政権にいたっては、「違法状態」になりながらも、この公職選挙法の改正は放置され続けた。
それが再び国民投票法改正の議論の中で動き出したのは、2013年、第2次安倍政権になってからだった。
自民党の若者政策への本気度
今年2月に、「シルバー・デモクラシー(高齢者民主主義)」を改善し、若者に配慮した制度づくりをめざし、社会保障の世代間格差を議論する新組織「2020年以降の経済財政構想小委員会」を立ち上げたことを、『18歳の選挙参入で、さらに高まる参院選「自民圧勝の可能性」 焦点は「世代間格差」の是正』(http://blog.livedoor.jp/ryohey7654/archives/52051377.html)と書いたが、自民党は、その後も動き続けている。
その鍵となったのが青年局の存在だった。
3月12日には、自民党青年局が全国の意見をまとめて幹事長と政調会長に政策提言を手渡した(http://youth.jimin.jp/news/131655.html)。
青年局は、自民党組織の1つで、45歳以下の党員で構成される。慣例上、党所属国会議員は、衆議院が当選3回以下、参議院からは当選2回以下の議員が参加すると言われている。
党本部の青年局役員は、大臣・副大臣・大臣政務官などの職にある議員を除き、党所属国会議員の中から、総務会の承認を経て任命される。
とくに青年局長は、青年層の代弁者として、自民党役員連絡会や党最高意思決定機関である総務会に出席することから、「若手政治家の登竜門」とも呼ばれる。最近では小泉進次郎議員が記憶に新しい。
青年局長経験者には、現職の安倍晋三 総理はじめ、竹下登 元総理、宇野宗佑 元総理、海部俊樹 元総理、麻生太郎 元総理と5名の総理を輩出しており、閣僚経験者はじめ主要政治家が名を連ねる。
青年局は、自民党における唯一の対台湾窓口としての役割も果たしてきたが、一方で、これまでは青年局自体が政策提言などを党に対して行うことはなかった。
それが今回、牧原秀樹 第47代青年局長が慣例を大きく変更し、「少子高齢化に伴う人口構造の変化や、巨額の公的債務に直面する中で、未来を担う若い世代が、将来に対して漠然とした不安や閉塞感を抱える状況にある。特に地方において、こうした傾向が顕著であり、危機感が募っている。党青年局としては、全国のブロック会議等の場で上がった、地域に根差して汗をかく青年地方議員や青年党員の同志からの切実な声を踏まえ、共に危機を乗り越えるための政策を実現しなければならないと考える」として、党本部に対して政策提言を行ったのだ。
今回の青年局の提案にあたっては、役員による政策形成だけでなく、その過程において、全国にいる自民党青年局員からの意見を吸い上げるプロセスも踏んだ。
「18歳選挙権」の実現を受け、筆者自身、「単に有権者を240万人増やすことが目的ではなく、これをきっかけに若者の声が政策や政治にどれだけ反映されるか、またその反映の仕組みをさらにつくるトリガーにできるかが重要だ」と言ってきた。
その意味では、あくまで自民党内部での話ではあるが、若い党員から意見を吸い上げる仕組みができたということには大きな価値がある。
若者の声を選挙公約にするプロセス
公明党の際にも紹介したが、各党の若者政策の転換の背景には、若者の声を政党公約に反映させようという「日本若者協議会」(http://youthconference.jp)による取り組みがあった。
今回の自民党青年局政策提言の中にも、日本若者協議会が提案した政策から、
(1)「被選挙権年齢引き下げ」の速やかな検討
(2)国政選挙における供託金の早急な引下げ
(3)選挙におけるインターネットの更なる活用等
などが入った。
日本若者協議会は、昨年12月に「日本版ユース・パーラメント(自民党編)」(http://live.nicovideo.jp/watch/lv244173560?)を実施して以来、自民党青年局と政策協議を続け、2月25日には、こうした政策反映の中間報告をもらっていた。
今回の谷垣幹事長の発言では、被選挙権年齢引き下げだけでなく、供託金引き下げについても党内で調整が進んできていることが明らかになった。
すでに公明党の参院選重点政策案に多くの政策が反映された上、自民党でも反映されることになれば、大きな快挙だ。
日本若者協議会では、この他にも民主党、維新の党、おおさか維新の会ともすでに協議を行っており、夏の参院選までに、若者の声がどれだけ各政党の公約に入ることになるのかを注視してもらいたい。
同時に、与党がここまで踏み込んでいるのだから、野党には、世代間格差是正なども含め、さらに踏み込んだ政策の反映を期待したい。
【資料】
自民党青年局提言(https://jimin.ncss.nifty.com/pdf/youth/news/131655.pdf)
1.社会保障
当面は人口減少が続くと想定される中で、若い世代が将来に希望を持てる制度の構築が必要とされている。子育て支援や、社会保障における世代間公平の実現等を通じて、物理的、経済的、精神的な負担の緩和を図り、若い世代が思う存分活躍できる環境を整えていくことが一億総活躍社会の実現に資することになる。
○「子ども・子育て支援新制度」に基づく子育て支援の拡充。量的拡充(待機児童解消に向けた受け皿拡充等)の推進も重要であるが、併せて、質の向上(職員配置や職員給与の改善等)についても早急に手当てすること。
○三世代同居支援(予算及び税制)を更に拡充すること。
○出生率向上のため、早期第一子出産支援制度の整備を推進すること。
○政治的に独立した「世代間公平委員会(仮称)※」の設置の検討を含め、給付と負担に関する「見える化」を更に推進することにより、世代間公平の実現に資する仕組みを構築すること。
※世代ごとの受益と負担を推計・公表すると共に、世代間格差が大きい場合には政府に是正勧告を行う。
○終末期医療のあり方(尊厳死に関する法整備の是非を含む)について、更なる国民的議論を喚起しつつ、検討を加速させること。
2.教育
我が国が世界に誇る資源は「人」である。いかなる環境にあっても質の高い公教育を受けられる環境を整え、次代を担う子供達の可能性を大きく育んでいく必要がある。また、我が国が近隣諸国との間で未来志向の関係を築いていくためには、自国に関する正確で深い理解があってはじめて可能となる。
○我が国の伝統・文化・郷土、近現代史及び領土等に関する教育、並びに、正しい歴史認識を伝える教育を充実させること。
○小中高の教育において、偏った政治的イデオロギーを排除した上で、体験型機会(小中高校生議会や模擬投票の実施、国会・地方議会の傍聴等)の活用を含め、青少年の政治に対する関心を健全に醸成させること。
○幼児教育の無償化の加速や、高校生への給付型奨学金の拡充、将来の収入に応じて返済できる大学奨学金制度の創設、民間企業や地方自治体等による奨学金の拡充促進など、教育費の負担軽減に取り組むこと。
3.若い世代の政治参加
我が国においては、数的劣後と低投票率を背景に、若い世代の声が政策決定プロセスに適切に反映されにくい傾向が見られてきた。今夏の参議院議員選挙における 18 歳選挙権の実現を契機として、投票率向上を含め、若い世代の政治参加を促すことこそが、長期的視点に立脚する政治的インセンティブを高め、我が国の民主主義の質を更に高めることになる。
○被選挙権年齢の引下げについて速やかに検討を行うとともに、国政選挙における供託金については早急に引下げ、多くの若い世代が政治に挑戦しやすい環境を整備すること。
○住民票と離れた場所に通学する方、電車で通勤する方、子育てする方等に関する投票の利便性向上やインターネットの更なる活用等に努め、特に若い世代の投票率の向上を図ること。