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ヤフーニュースは、やまもといちろう氏の記事「全削除」の理由を説明してほしい→説明文が公開されました

岡田有花フリーランス記者
9年前、ヤフー個人立ち上げ時に筆者が編集部に取材し、ITmediaに執筆した記事

3月26日(この記事執筆の翌日)、ヤフーが経緯を説明する文書を公開しました。以下のリンクからご確認ください。

・山本一郎氏のnote等でのご発信につきまして

 この記事が掲載されているメディア、「Yahoo!ニュース個人」の書き手の1人だったやまもといちろう氏が、「自身の過去記事1000本以上が、Yahoo!ニュース個人から同意なく削除された」と3月24日に自らの「note」で訴え、物議になっています。

 やまもと氏の記事が、本人の合意なく削除されたのはなぜなのか。私もYahoo!ニュース個人の担当者に問い合わせてみましたが、「分からない」という返答でした。

 私もYahoo!ニュース個人の書き手の1人ですが、自分の記事が合意なしに消されるかもしれない……と不安です。なぜ記事が削除されたのか、ヤフーに説明していただきたいと思い、この記事を書いています。

「個人の書き手の支援」目指して始まった「Yahoo!ニュース個人」

 このサイト、「Yahoo!ニュース個人」は、ヤフーに選ばれたジャーナリストや専門家などの書き手(オーサー)が、ブログのような感覚で記事を執筆・掲載でき、ページビュー(PV)などに応じて報酬がもらえます編集者は基本的におらず、記事内容は書き手の裁量に任されています。

 私は、「Yahoo!ニュース個人」がスタートした2012年から、書き手として参加しています。立ち上げ時に当時の編集部を取材し、Yahoo!ニュース個人の狙いについて聞いた記事をITmediaに執筆しました。その場で聞いた、「個人の活動を支援する場を作る」というメッセージに共感し、参加を決めました。

 あれから9年間、Web専業記者の立場から、いろいろなジャンルの記事を、Yahoo!ニュース個人に書いてきました。ただここ2年ほどは、私が書いた記事についてヤフーからクレームが入ることが多く、悩むことも増えました。(クレームの内容は「記事が短すぎる」「専門性が低い」などです。過去には問題とされなかったことが、最近になって問題視され、クレームが入るようになりました)

 私の記事とYahoo!ニュースの方向性が合わないなら、執筆終了もやむなしと考えていたところ、今回のやまもと氏の記事全削除の話を知り、「契約解除した場合、過去記事がすべて消える可能性もあるのか」と戦慄しています。

やまもと氏「契約解除は合意していたが、記事は消さない取り決めだった」

 noteによるとやまもと氏は、ヤフーから「配信契約の解除を申し渡されていた」そうです。その理由は明かされていません(守秘義務もあるのでしょう)が、一部の記事をめぐって訴訟を複数抱えている(相手方は暴力団関係者など。ヤフーではない)ことや、LINEの情報漏えい問題についての記事を以前から多数書いていたこと――などが、「記事を削除されて困った理由」として説明されています。

 配信契約解除についてやまもと氏は、「私もすでにYahoo!JAPANとの信頼関係は失われたと考え、強く抗弁することなく追加記事を上げないことで諒解」したとのこと。何らかの理由で、ヤフーがやまもと氏のYahoo!ニュース個人での記事配信終了を打診し、本人も了解していた、ということのようです

 問題はその次です。同氏はYahoo!ニュース担当者とのやりとりで、「私のヤフーニュース個人での掲載記事は削除しない/掲載を続ける」と合意していたにも関わらず、ヤフー側は過去記事をすべて削除したとのことです。どのタイミングで、どういった通達があって(または連絡なしに)削除されたかは、明かされていません。

 やまもと氏はnoteにこのように書いています。

 何より、配信契約解除の時点で「記事は削除しない」とした、担当者との取り決めは何の前提条件もなく簡単に破られました。納得がいくはずがありません。Yahoo!JAPANは嘘の条件を飲ませて私に配信契約解除を飲ませたことになり、到底納得ができることではないのです。

(やまもといちろう氏のnote「私の記事が、ヤフーニュース個人からすべて削除された件について」より)

 事前の合意を破って記事が全て削除されたのは、一体なぜなのか……。私もYahoo!ニュース個人の担当者に問い合わせてみましたが、分かりませんでした。これは筆者の憶測ですが、現場レベルではなく、もっと上のレイヤーで決まったことなのかもしれません。

ヤフトピにはヤフーの記事は載らない

お詫びと訂正・3月25日正午:初出時、「ヤフーとLINEの記事はヤフトピに載らない」と記載していましたが、事実誤認でした。実際は、ヤフーの記事はヤフトピに載らないが、LINEの記事は載っている、の誤りでした。お詫びして訂正します。

 ところで、「Yahoo!ニュース個人」の記事は、日本最大のニュースメディアの一つである「Yahoo!ニュース トピックス」(ヤフトピ)に取り上げられることもあります。筆者の記事も何度か取り上げられてきました。

 一方でヤフトピは10年以上前から、自社記事を扱わない(トピックスに載せない)と明言していました。「外部メディアが執筆した記事がヤフトピに載った場合、ヤフーの公式発表と誤解されかねないため」など言い分は分かる面もあります。

 ヤフーとLINEは経営統合しましたが、現在、LINEの記事はヤフトピに掲載されています。ただ、その内容には偏りがあるのでは? と筆者は感じました。

 ここ3日、Yahoo!トピックスに載ったLINEの情報漏えいの記事をたどってみたところ、記者会見の内容など、LINEの言い分をストレートに伝えるものばかりでした問題を詳しく解説したり、批判したりする記事は、見当たりません。これが偶然なのか、あえてなのかは分かりませんが……。

ここ2日でヤフトピに載ったLINEの漏えい関連記事。記者会見でのLINEの言い分をストレートに伝える短い記事ばかりだった(Yahoo!ニューストピックス履歴より筆者キャプチャ)
ここ2日でヤフトピに載ったLINEの漏えい関連記事。記者会見でのLINEの言い分をストレートに伝える短い記事ばかりだった(Yahoo!ニューストピックス履歴より筆者キャプチャ)

今後両社の事業統合が進み、ヤフーだけでなくLINEの記事もヤフトピに載らなくなる可能性はあります。もしそうなれば、よりいびつな構造になっていくでしょう。

「ヤフトピ以外」なら載せる度量を信頼していたけれど……

 ただ、トピックスに載らなくても、Yahoo!ニュースの通常記事として、ヤフーの批判記事などは配信されています。かつては、「Yahoo!ニュース個人」の書き手の間で、ヤフーへの批判記事が盛り上がったこともありました。

 例えば、以下のような記事です。

・取材に対してウソをつく組織「Yahoo! JAPAN」が信頼と品質など担保できるわけがない(藤代裕之氏:2016年)

・ヤフー通販「おすすめ順」ステマ指摘騒動のどこが一体問題なのか(徳力基彦氏:2017年)

 これらの記事を見て私は、「Yahoo!ニュース個人」の記事がヤフー(やLINE)の都合で削除されるなことはないと思っており、その部分では信頼もしていました。しかし今回、ヤフーの都合(?)でやまもと氏の記事が削除されたことで、信頼は不安に変わりました。

 今後、ヤフーやLINEを批判する記事は書けるのか、書いた場合、合意なく削除される可能性があるのか、知りたいと思っています

 この記事を編集部がどう見るかは分かりませんが、私の過去記事は削除されても良いよう、重要なものは別の場所にアーカイブしておこうと思います。

フリーランス記者

1978年生まれ。京都大学卒。IT系ニュースサイト記者、Webベンチャーを経て、IT・Web分野を軸に幅広く取材、執筆するフリーランス記者。著書に「ネットで人生、変わりましたか」(ソフトバンククリエイティブ)。

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