公営借家の半数近くには高齢者が居るという実態
高度経済成長期に住宅需要の急増と地域開発に合わせる形で大量造成された公営借家(地方自治体が提供する賃貸住宅、アパート、団地の類)。現在では住民の高齢化が進んでおり、インフラの整備維持や地域空洞化などの問題と合わせ、社会問題化しつつある。その実態を総務省統計局の住宅・土地統計調査から確認していく。
まず最初に見ていくのは、各主世帯(主な世帯。1住宅に2世帯以上居る場合は、主世帯と同居世帯に区分)で、高齢者が居る・居ないで区分した、世帯構成の現状。2013年時点では大体6割は高齢者が居ない世帯。逆にいえば4割は高齢者が居る、あるいは高齢者だけの世帯。
赤系統色部分だけで計算し直すと、「高齢者単身世帯」が在高齢者世帯全体に占める比率は26.5%。全世帯比でも10.6%。単身ではないが高齢者のみの世帯11.2%と合わせると、「5世帯のうち1世帯強は高齢者のみの世帯」となる。ちなみに「在高齢者・その他主世帯」とは二世代・三世代などの世帯を意味する。
次のグラフは、高齢者の居る世帯における詳細の状況別に、それぞれどのようなスタイルの住居に住んでいるかを示したもの。特に高齢者単身世帯に、公開借家住まいの比率が高いのが分かる。
高齢者が居る世帯では夫婦世帯・二世代や三世代世帯で9割前後の持ち家率である一方、高齢者単身世帯では6割強に留まっている。そして1/3強が賃貸住宅暮らし。金銭的に余裕のある高齢者自身や、その支えで持ち家を取得する事例が多いことがうかがえると共に、単身の高齢者では持ち家住まいが案外少ない実情が把握できる。
「公営借家」に限定して高齢者動向を確認できるように世帯区分を見ると、世帯全体(今記事一つ目のグラフ)と比べて一人暮らしの高齢者比率が高めなのが分かる。さらに5年前の前回調査の結果と比べると、その割合が増加傾向にあるのも一目瞭然。
公営借家ではほぼ半分の世帯に高齢者が居住し、そのうちさらに半分、全体比では1/4が高齢者のみの世帯。あくまでも全国平均だが、そのような結果が導き出される。5年前と比べると高齢者が居ない世帯が大幅に減り、高齢者のみの世帯が大きく増えているのが分かる。公営借家の高齢化、さらには高齢単身化が進んでいる。
この状況は公営住宅での「買物困難者」「節電への対応と連動する、冷暖房と高齢者の健康リスク」など、今後発生しうる高齢者問題において、公営借家で多数事案が発生する可能性を示唆するものとなる。場所そのものの良し悪しといった問題では無く、警戒あるいは状況改善施策の重点エリアとしての認識が求められよう。
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