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川で溺れる子どもの事故が相次ぐ 子どもに危険性をどう伝えればよいか #専門家のまとめ

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
(写真:イメージマート)

 今日は東京・羽村市で、先週金曜日には広島市でそれぞれ中学生が川で溺れました。これらの川に共通することは、流れが穏やかで見た目では危険性を感じられないこと、深みに沈んだ状態で中学生が発見されたことです。夏休みとなり、子ども同士で近所の川に遊びに行くシーズンとなりました。子どもにはどのように川の危険性を伝えればよいでしょうか。

ココがポイント

▼急流ではない。下流の床固工により堰き止められて、穏やかな流れの現場。こういう場所こそ危ない

【速報】多摩川で10代男性が死亡 遊んでいる際におぼれたか 東京・羽村市(TBS NEWS DIG Powered by JNN 7/28(日) 10:37配信)

▼天端は水をかぶっている。ここを渡って遊ぶと、なおさら危ない。天端の上では急流となるから床固工の上には立ち入らない

多摩川で中学生とみられる少年が溺れ死亡 事故当時、友人3人と一緒に 東京・羽村市(FNNプライムオンライン 7/28(日) 13:52配信)

▼穏やかな川では「歩いて溺れる」 だから水遊びは膝下水深にとどめるのが重要

川遊び中か 相次ぐ水の事故 「川に飛び込まない。歩いて渡らない。水遊びはひざ下で」水難学会に聞く(RCC中国放送 7/26(金) 18:11配信)

▼広島の現場は「中州の下流」「岩肌に流れがぶつかる箇所」で、水深が急に深くなる条件が2つもそろっている

男子中学生(13)が川で溺れ意識不明 相次ぐ水の事故の注意点を専門家に聞く(広島テレビ 7/26(金) 19:42配信)

エキスパートの補足・見解

 子どもに伝えることは次の通りです。

1.子ども同士で近くの川に遊びに行ってはいけない

2.歩いて深みに入って溺れる。だから子どもだけで川に入ってはいけない

3.堰のような構造物の周りは特に危険だから遊んではいけない

4.中州の下流はすぐに深くなるから、中州にわたってはいけない

5.川に遊びに行きたいのであれば、家族で救命胴衣を準備して出かけよう

 よく「泳いでいるうちに溺れた」と想像しますが、子どもの溺れる川は川岸からしばらくは浅いことが多く、歩いて川の中央に向かうものです。そのうち、急に深くなり足から沈むのですが、こうなると元に戻ろうとしても川底の斜面が崩れて戻れなくなります。突然の沈水には「ういてまて」です。息を止めて水面に浮きあがるのを待ちます。そのまま背浮きになって呼吸を確保します。

 陸の人は「ういてまて」と叫び、空のペットボトルなど浮き具を投げて渡します。そして119番通報をして救助隊を呼びます。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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