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北朝鮮とは対話か、軍事攻撃か 平和の祭典の裏で戦争準備をしていたトランプ政権

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
軍事演習中の戦略爆撃機B-1B、F-35A,F-15戦闘機

 米CNNテレビは昨日(3月1日)、複数の関係筋の話として、北朝鮮が米本土を攻撃可能な核ミサイル(ICBM)の開発に成功した場合は北朝鮮に対する軍事行動の実施を検討していると報じていた。また、その前日(2月28日)、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)電子版は平昌五輪期間中に米国は北朝鮮との戦争に備えた演習を秘密裏にハワイで行っていたと報じていた。

 トランプ大統領は先月23日、北朝鮮への制裁が効かない場合、「第2段階に移行せざるを得ない」ことを明言しているが、ハワイで2月下旬に数日間行われた演習はまさに北朝鮮への軍事攻撃を想定しての図上演習であった。

(参考資料:「北朝鮮を容赦しない」一般教書演説で見せたトランプ大統領の「本気度」

 「卓上の塔」と呼ばれる演習は様々な戦争状況を想定したシナリオを検討する方式で毎年行われているが、今年は朝鮮半島で戦争命令が下された場合、米軍兵力や装備の招集及び対北朝鮮攻撃に焦点を合わせた演習となった。

 NYTによると、今回の図上演習にはマーク・ミリー陸軍参謀総長のほかトニー・トーマス特殊作戦軍司令官も参加したとのことだが、このことは北朝鮮の核心施設の破壊のためには最終的には米地上軍と特殊部隊の投入が不可欠であることを意味している。

 演習では米陸軍最先鋭の第82、第101空輸師団が北朝鮮の地下を破壊するための戦闘を遂行し、また有人・無人の攻撃機を投入して北朝鮮の防空網を無力化する計画も含まれていた。

 米軍は今月から来月にかけて情報収集や偵察任務に使う無人攻撃機グレイイーグル10機を韓国に配備する。時速280kmのグレイイーグルは400kmの作戦区域に対する監視と情報収集が可能で、約8km先に居る人物を超小型の精密誘導爆弾を発射して殺傷できるという最新の無人攻撃機だ。

 今回の演習では北朝鮮が化学兵器を使用した場合に備え、負傷した兵士らを急ぎ護送させる輸送作戦も点検された。さらに、米軍偵察機を中東やアフリカから太平洋に移送する作戦についても協議された模様である。

 今月にはマーティス国防長官が主宰して世界各地に駐屯している戦闘司令官らが参加した会議が行われるが、ここでも対北軍事作戦が集中的に議論されることになっている。

 トランプ大統領は対外的には対話による外交的解決を口にしているが、その一方で来るべき軍事行動に向けての準備を着々と進めているのも否定しがたい事実である。

 米軍は昨年12月には特殊部隊司令部があるノースカロライナ州のフォート・ブラッグでアパッチ戦闘ヘリ48機とチヌークヘリを動員した最大規模の強襲訓練を実施していた。また、その2日後にはネバタ州で82空挺師団所属の兵士119人による落下訓練も実施されていた。

 先月(2月)下旬には駐韓米軍の攻撃ヘリコプターAHアパッチなどを韓国海軍の揚陸艦「独島」に離着艦させる訓練が朝鮮半島の南沖で行われていた。この訓練は朝鮮半島有事の際の韓国海軍艦艇と米陸軍ヘリの連合作戦に備えたもので、昨年5月にも駐韓米軍のヘリが韓国軍の艦艇を離艦し、北朝鮮の重要施設を想定した対象物を攻撃する訓練が実施されていた。

 昨年10月に沖縄に配備されたステルス戦闘機F-35A12機(兵員300人)の飛行時間はすでに1千時間突破している。F-15C戦闘機との合同訓練で一日12回から14回出撃を繰り返している。出撃回数は500回(2月5日付の軍事専門誌ディフェンスニュース)を超えている。一連の訓練はマーティス国防長官の「朝鮮半島内での軍事作戦に備えろ」との指示に基づいていることは言うまでもない。

 米軍による偵察活動も急増している。

 在日米軍基地から発進されるRC-135戦略偵察機、EP-3電子偵察機、E-8ジョイントスターズ地上監視偵察機は頻繁に朝鮮半島に飛来し、北朝鮮地域を監視している。

 さらに米第7艦隊のワスプ級強襲揚陸艦がすでに長崎の佐世保に入港している。この揚陸艦には垂直離着陸が可能な海兵隊の最新ステルス戦闘機F-35Bを搭載できる。岩国基地に配備されているF-35Bを搭載すれば、北朝鮮への予防的先制打撃が可能だ。

 グアムのアンダーソン基地には約2時間で朝鮮半島に飛来できるステルス戦略爆撃機B-2が3機(兵員200名)米本土から前進配備されている。B-2には核爆弾16発と巡行ミサイルが装着されている。

 長距離戦略爆撃機B-52Hも6機(兵員300人)グアムに配備されている。B-52Hは約900kgの在来式爆弾35発と巡航ミサイル12発、空対地核ミサイル、さらには地下施設を破壊可能なバンカーバスター(GBU-57 MOP)など最大で27トンの爆弾投下が可能だ。

 サンディエゴのコロナド海軍基地を1月5日に出発し、グアムに到着していた「動く海軍基地」原子力空母カールビンソンはこれからベトナムの中部ダナンに寄港(3月5-9日)した後、朝鮮半島に向かうことになる。

 仮に北朝鮮が4月に実施される予定の米韓合同軍事演習に反発してミサイル発射や核実験などの挑発を行えば、ミサイル発射台や基地(指揮統制室、貯蔵施設など)、さらには寧辺核施設への予防攻撃(鼻血作戦)が断行されることになるだろう。

(参考資料:「斬首作戦」を警戒か!軍事パレードに登場した3つの「金正恩護衛部隊」

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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