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ウクライナ戦争での役割分担 日本と中国は経済で、韓国と北朝鮮は武器で?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
NATO首脳会議の場でドイツのショルツ首相と会談する尹錫悦大統領(大統領から)

 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議がワシントンで開かれ、インド・太平洋4カ国パートナー(IP4)のメンバーとして日本の岸田文雄首相も韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領も招かれ、出席している。

 日韓首脳のNATO首脳会議への出席は3年連続だが、どうやら今年は岸田首相よりも尹大統領にスポットライトが当てられているようだ。

 G7(主要国首脳会議)の拡大会議も含めこの種の国際会議で韓国の大統領が注目の的となったことはなく、常に日本の後塵を拝していた。しかし、今回は岸田首相よりも尹大統領の言動に多くの関心が集まっているようだ。NATO諸国がウクライナへの韓国の武器供与を期待しているからである。

 日本は武器輸出3原則や「平和憲法」により武器輸出が厳しく制限されていることからNATOは経済大国第4位の日本には資金面での役割を期待しているが、14位の韓国に対しては金よりもむしろ武器の供与を求めている。韓国は日本と比べて武器輸出の規制がないことや特に、軍事的に対峙している北朝鮮がロシアに公然と武器を供給していることもあって韓国への期待が日々高まっている。

 今回のNATO首脳会議ではプーチン大統領の24年ぶりの訪朝による露朝軍事協力の強化、特に北朝鮮の対露武器支援が議題に上がっていた。

 首脳会議で発表された共同声明をみると、参加国は一致して国連安保理制裁決議に違反している北朝鮮のロシアへの砲弾やミサイル供与を批判し、露朝の軍事協力に憂慮を表明していた。

 同時に原油や天然ガスの輸入を増やすなどロシアを経済面で支えている中国に対してもロシアのウクライナ侵略を助ける「決定的な支援者である」と規定し、対露支援を中止するよう求めていた。

 NATOから熱い視線を送られている韓国はこれまで日本同様に欧米諸国の対露経済制裁には与しても、軍事協力には慎重な姿勢を取ってきた。ウクライナに殺傷能力のある武器は支援しないとの原則を維持し、ウクライナ支援は防弾ヘルメット、テント、毛布や衣料品など非殺傷用軍需物資あるいは人道支援に限られていた。

 ウクライナに武器を供与すれば、ロシアとの関係が破局を招く恐れがあるからに尽きる。そうなれば、北朝鮮を一方的に利するだけで、ウクライナ戦争後のロシアとの関係修復にも狂いが生じることになる。

 実際にロシアは「韓国がウクライナに殺傷兵器を供与すれば露韓関係は致命的な結果を迎える」(外務省のザハロワ報道官)と韓国を牽制しており、プーチン大統領自身もまた、韓国がウクライナに殺傷兵器を支援しないとの従来の方針を再検討し、兵器を供与すれば「非常に大きなミスになる」と警告しているだけに慎重にならざるを得ない。ロシアが韓国のウクライナへの武器支援を露韓関係の「レッドライン(越えてはならない一線)」と見なしているからだ。

 しかし、ウクライナが韓国に熱望しているのは人道支援よりも軍事支援である。そのことはゼレンスキー大統領が今年4月11日にオンラインによる韓国国会演説で「ロシアの艦船、ロシアのミサイルを防ぐ様々な軍事装備が韓国にはある。ロシアに立ち向かえるように韓国が我々を助けてもらえればありがたい」と直訴していたことからも明らかだ。NATOもまた、ロブ・バウアー軍事委員長(オランダの海軍大将)が訪韓し、韓国の国防長官や合同参謀本部議長らに会い、直々に武器支援を要請し、具体的に小銃から対戦車ミサイルなど殺傷兵器100~150品目にわたるリストを渡していた。

 先月もNATOのストルテンベルグ事務総長が韓国のウクライナへの兵器支援について「北朝鮮の対ロシア支援とは異なり合法であり、(我々は)ウクライナへのいかなる種類の軍事支援も歓迎する。実現すればウクライナ戦争に意味のある変化が生じるだろう」と期待を寄せていた。

 韓国大統領室の張虎鎮(チャン・ホジン)国家安保室長は「ロシアが高度な精密武器を北朝鮮に提供すれば、我々にこれ以上制約があるのか」と、条件付きながら武器支援を仄めかし、また尹大統領もNATO首脳会議に出席する前にロイター通信とのインタビューで「ロシアは自国にとって韓国と北朝鮮のどちらがより重要で必要な存在なのかよく判断すべきだ」と発言し、ロシアに対してこれ以上、北朝鮮に傾斜しないよう釘を刺していた。

 要は、韓国のウクライナへの武器支援はロシアの今後の出方にかかっているようだが、北朝鮮が前回失敗した軍事偵察衛星の打ち上げを成功させ、昨年9月に進水させた戦術核攻撃潜水艦からの潜水艦弾道ミサイルを発射させ、さらには原子力潜水艦が建造されるようなことになれば、否が応でもロシアの関与が取り沙汰されることから韓国はウクライナへの武器支援に踏み切らざるを得ないであろう。

 北朝鮮は先月26日に初めてテストした多弾頭ミサイルの発射実験を近々再度行うと予告していることからその成否次第では早ければ今月中にも対ウクライナ武器支援を検討することになるかもしれない。

 ウクライナ戦争は南北(韓国と北朝鮮)が武器を供与し、日中が経済で支えるという構図になりそうだ。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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