ガソリン価格は6週連続で上昇、6月から変わった値決め方法
資源エネルギー庁が6月4日に発表した石油製品価格調査によると、6月2日時点でのレギュラーガソリン店頭小売価格(全国平均)は1リットル当りで前週比+0.2円の166.0円となった。これで6週連続の値上がりであり、1ヶ月半で累計1.8円上昇した計算になる。
ガソリン価格は、消費増税直後の4月1日時点で2%の増税分を反映して前週比+5.1円の164.1円と急伸した。その後は末端小売店が増税の影響を見極める意味もあって価格上昇が抑制されていたが、4月下旬以降は原油調達コストの高止まりをガソリン価格に転嫁する動きが再開されており、消費増税前との比較だと7.0円もの値上がりになっている。
■ガソリン価格の値決め方法が変わったインパクト
アジア市場の指標となるドバイ原油は、6月2日時点で1バレル=106.25ドルとなっており、前週の106.45ドルからは小幅低下している。ただ、5月27日に一時107.15ドルに達するなど、原油価格のトレンドそのものは明らかに上向きであり、ガソリン精製マージンの縮小を回避するには、末端価格の値上がりが必要不可欠な情勢になっている。
実際に、業者転売価格は連日のように年初来高値を更新している。パージ物だと6月2日時点で1キロリットル=13万9,000円に達しているが、これは前週比でも500円の値上がりになる。
石油元売最大手のJX日鉱日石エネルギーは、6月からガソリン卸値の決定方法で、原油調達コストをより強く反映する形に変えている。製品の市場価格や原油価格の変動を考慮して決める市場連動の枠組みを維持しながらも、従来よりもガソリン卸値を決定する上で原油輸入価格に重点を置くことで、原油価格が上昇しても卸値に転嫁できない事態を回避する方針である。
同社の2014年3月期決算では、原油高に伴う在庫評価益を除くと石油精製事業は赤字に陥っており、精製マージンの確保・拡大が喫急の課題になっている。もはや、精製マージンの縮小を許容できない状況になっており、末端需要価格へのインパクトを警戒して、コスト転嫁を先送りすることが困難になっている。
実質的には、従来のコスト積み上げ方式に近い値決め方法になっており、今後は原油価格の上昇局面で従来以上にガソリン価格に対して値上げプレッシャーが強まり易い状況と言えるだろう。これを末端小売店が素直に小売価格に転嫁できるのかは別問題だが、卸値の上昇を抑制する力が従来よりも弱くなっている以上、ガソリン小売価格に対する上昇圧力の増大化は避けられそうにない。
■原油価格は強含みの展開続く
為替相場に目立った動きが見られない中、ドル建て原油価格動向の上昇傾向が続く限りにおいて、末端ガソリン価格は更なる値上がりリスクを想定しておく必要がある。
そこで注目されるのが原油価格動向であるが、北半球では6月以降にドライブ・シーズンが本格化することになり、需要サイドから需給が引き締まり易い環境になっている。あくまでも石油輸出国機構(OPEC)などの産油量が急増しないことが前提になるが、これから秋にかけては先進国の原油在庫に減少圧力が強まるのが例年のパターンであり、今後2~3ヶ月は原油価格のじり高傾向が維持される可能性が高い。
実際に、5月以降の国際原油相場は、需要期入り後の在庫減少を先取りする形で値位置を切り上げている。足元の米原油在庫などは過去最高水準を維持しているが、季節要因に基づく需給の引き締め圧力が原油価格に反映され易くなっている。
ガソリン価格は前年同期比で14.4円もの値上がりになっているが、一時的な値上がりではなく、今後も一段高のリスクを想定しておくべきだろう。イランの原油市場復帰が実現するのか、ウクライナ情勢は収束に向かうかなどの不確実要因も数多く見られるが、160円台後半は通常の値位置として受け入れる必要がある。国内の夏休みシーズンには、170円に近い価格水準が実現していても何ら不思議ではない。