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北朝鮮の密室で行われた「美女マツタケ宴会」の欲望と堕落

高英起デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト
金正恩夫妻とモランボン楽団(朝鮮中央テレビ)

かつて、北朝鮮から日本への主要な輸出品のひとつであったマツタケ。日本政府が2006年の制裁措置で、北朝鮮からのマツタケの輸入を禁止して以降、日本の市場からは姿を消したが、北朝鮮にとっては依然として重要な外貨輸入源であることには変わらない。

2017年末に国連安全保障理事会で対北朝鮮制裁決議が採択されるまでは、中国に正式に輸出され、それ以降も密かに輸出されている模様だ。また、金正恩党委員長は2018年9月、南北首脳会談を記念して、韓国に2トンものマツタケをプレゼントしている。韓国メディアは、最高級品の七宝山(チルボサン)のものなら、その価格は15億ウォン(約1億4000万円)を超えるとの試算を示した。

七宝山を擁する咸鏡北道(ハムギョンブクト)の明澗(ミョンガン)郡には、今年もマツタケを買い取りに、咸鏡北道外貨稼ぎ事業所のイルクン(幹部)がやってきた。彼らは、空気を読まない振る舞いが地元民の反感を買っていたが、ついに鉄槌が下されることになった。

現地のデイリーNK内部情報筋によると、咸鏡北道外貨稼ぎ事業所の収買課長のリ氏はじめ3人のイルクンは、明澗郡の中心地にある旅館を貸し切り、20代のうら若き女性たちを連れ込んで、午後6時から表の玄関を締め切り、マツタケ料理などの豪華ディナーを楽しみつつ、歌って踊ってどんちゃん騒ぎを繰り広げた。それも1日だけではなく、明澗に滞在中は毎晩のことだったという。

情報筋は、中で行われていたことの詳細に触れていないが、一部始終を目の当たりにした旅館の女性従業員たちが激怒し、咸鏡北道検察所に通報までしたことを考えると、おおよそ予想がつく。

(参考記事:金正恩「女子大生クラブ」主要メンバー6人を公開処刑

関係者全員は今月19日に出頭が命じられた。事案の報告を受けた朝鮮労働党咸鏡北道委員会は「台風被害を心配されているというお言葉が元帥様(金正恩党委員長)からあり、平壌からは建設労働者もやってきているというのに、外貨稼ぎのイルクンは腐敗堕落した生活で周りをかき乱し、良からぬ影響を与えた」と批判した。彼らの身柄は党委員会に引き渡され、組織部により思想検討を受けている。

一方で検察所は、旅館で同席していた女性たちも出頭させ、その場に誰がいたのか、強制的に参加させられたのかなどについて取り調べを行っている。彼女らも、処罰の対象となる見込みだ。

さて、この措置に対する市民の反応は非常に肯定的だという。市民らは毎年この時期になると、マツタケを取って外貨事業所に収めるというノルマを課せられ、苦しい思いをしてきた。そのことを相当恨みに思っていたようで、「胸のすく思いだ」と拍手喝采を送っている。さらに、彼らの「余罪」についても、噂が飛び交っているという。

水害被災地と言えば、黄海北道(ファンヘブクト)の銀波(ウンパ)郡でも、似たようなことが起きている。派遣された党幹部12人が、仕事もせずに昼間から酒を飲んでヤギ肉を食らう宴会を繰り広げていたところを摘発され、解任、撤職(更迭)されている。

デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト

北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)『金正恩核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)『北朝鮮ポップスの世界』(共著)(花伝社)など。YouTube「高英起チャンネル」でも独自情報を発信中。

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