15勝13敗だった咬ませ犬が見せた意地のKO勝ち
カンザス州ユリシーズ出身の21歳、アラン・ガルシアはデビュー以来14連勝中で、そのうち11度のKO勝ちを収めていた。もちろん、将来性を買われて、Top Rankの興行に出場した。
メキシコ移民の血が流れたガルシアは、ルーツである国旗をデザインしたトランクスを穿き、右に赤、左に緑のグローブを嵌めてリングに登場。彼のプロ15戦目の相手として選ばれたのは、31歳のスペイン人、リカルド・フェルナンデス。15勝13敗で、KO勝ちの経験は1度のみ。どう考えても咬ませ犬だった。
ファーストラウンドからガルシアは、スピードに乗った連打でポイントを稼ぐ。自信たっぷりに手を出す。時折、サウスポーにスイッチし、コンビネーションを浴びせる。ワンサイドの展開に、ボクシングファンの誰もが「いつ、21歳がベテランをノックアウトするのか」に着眼していた筈だ。
一方、リングジェネラルシップでポイントを失っていたフェルナンデスだが、決定打は喰わないよう、しっかりとガルシアのパンチをブロックした。あるいは、打たせながら、パンチの軌道やタイミングを観察していたのか。
第5ラウンド2分12秒、フェルナンデスはダッキングしながら右フックをぶち込み、ガルシアを沈める。このダッキングが、サウスポースタンスをとっていた21歳の死角を生み出すことに成功した。
レフェリーがカウント・テンを数えても、若者は立ち上がれなかった。カウントの最中、レフェリーはフェルナンデスに「こちらに近付かずに、ニュートラルコーナーで待て」と、注意を与えている。この行為は、ガルシアへの時間稼ぎとも受け取れた。
正式にKO勝ちが告げられると、31歳のベテランはリングを走り回って喜びを爆発させた。2017年にデビューした彼の16勝目は、初めて立ったアメリカのリングにおいてであり、プロ生活2度目のノックアウトだった。
<咬ませ犬が牙を見せ、金星を挙げる>
ボクシングを見ていて、これほど胸が打たれることはない。フェルナンデスは、試合のオファーを受けた瞬間から、右の一発をヒットするべく練習を重ねていたのだろう。勝者の笑顔が、筆者の胸を熱くした。