Yahoo!ニュース

総裁選後の衆議院解散総選挙、日程のシナリオと可能性は

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

岸田首相が次期自民党総裁選への出馬を見送ることを発表し、永田町では自民党総裁選の話題一色となっています。岸田内閣の支持率が近年低調だったことを踏まえれば総裁選後には早期解散をするのでは、との見立て(早期解散論)が主流となりつつある一方、新しい内閣のカラーを予算案などで明確に打ち出し、ある程度の実績をつくってからの解散総選挙の方がいいのでは、との見立て(実績解散論)もあります。自民党総裁選後に想定される衆議院解散総選挙の日程シナリオについて考えていきます。

自民党総裁選の日程

写真:イメージマート

まず、総裁選挙の日程についてみていきます。岸田総裁の任期は9月30日までとなっており、規程では議員投票は総裁の任期満了前10日以内と定められています。従って、総裁選挙の開票日は20〜29日に行われることになります。また、総裁選挙の告示は、投票日の12日前までに行うこととされており、選挙期間を最短で取り、かつ選挙を可能な限り前倒しする場合には、9月8日告示、9月20日投開票となります。

ただ、青年局や女性局所属議員らを中心に、「12日以上」と定められている選挙期間を可能なかぎり長くとるべきとの意見や、公開討論会を複数回開くべきとの意見もあり、新生自民党のカラーを打ち出すキャラバン的な要素も強くなるとみられる総裁選の日程を12日間より長く取る可能性も十分にあります。

そうすると、9月1週目(2日〜6日)に総裁選挙を告示し、選挙期間を14〜18日間取って9月20日投開票という流れも十分に考えられるでしょう。地方遊説を多くとったり、あるいは公開討論会を複数回行うこととなれば、必然的に日数は長くなりますし、現在の自民党の支持率を考えれば、多少の選挙期間延長に反対する人は少ないとみられます。与党議員の一部では、岸田首相総裁選不出馬表明後に、「6日告示、20日投開票、2回討論会」の日程案を見たとの声も上がっています。

なお、総裁選の日程については、国連総会の演説(9月24日〜27日)との兼ね合いを憂慮する声もありましたが、これらの声は外交に重きをおく岸田首相が出馬する前提の問題でした。さらに茂木幹事長は「これまでの総裁選を見ても、国連総会の日程とかぶることもある。国連総会がいつだから総裁選がいつになる、ということではないのではないか」とコメントしており、今回の総裁選ではあまりこの問題は考慮されないことになるとみられます。

衆議院解散総選挙の日程

当初は自民党総裁選が27日投開票という前提で、臨時国会の召集を10月2週目に行い、首班指名・組閣後に、10月3週目後半に解散、10月29日公示、11月10日総選挙というやや時間的に余裕のあるスケジュールも検討されていると言われていました。ただ、このシナリオの前提は岸田首相再選があり、今回は新総裁の選出が決まっていますので、少し状況が変わっています。

前例を重視する政界の流れをもとに、今回の岸田首相による総裁選不出馬表明を、前回(2021年)の菅首相(当時)の不出馬表明と衆議院解散に重ね合わせる見方もあります。参考までに、前回は9月29日に岸田氏が自民党総裁に選出され、10月4日に首班指名(首相就任)、10月14日に衆議院を解散し、10月19日に衆院選が公示、10月31日に投開票を迎えました。

この日程を重ね合わせると、9月中(具体的には25〜26日、あるいは30日)に臨時国会の召集と首班指名・組閣・党役員人事を行い、10月1週目(4日)あるいは2週目前半(7〜8日)に解散をしたうえで、15日に衆院選公示、27日投開票という日程がみえてきます。

広瀬めぐみ参議院議員の辞職と補欠選挙

広瀬めぐみ公式ホームページより引用(https://megumi-h.jp/)
広瀬めぐみ公式ホームページより引用(https://megumi-h.jp/)

昨日(15日)には、公設秘書の給与を国からだまし取っていた疑いで、東京地検特捜部により事務所などが捜索を受けた広瀬めぐみ参議院議員が議員辞職しました。公職選挙法第33条の2第2項の規定にもとづき、参議院議員補欠選挙(岩手県選挙区)は10月10日告示、27日投開票で行われる見込みです。

この参議院議員補欠選挙は自民党にとって鬼門となる可能性があります。というのも、今年春の衆議院議員補欠選挙では3つの選挙区でいずれも自民党は勝つことができませんでした。補欠選挙は時の政権の中間評価につながるほか、新しい内閣にとっても最初の試金石となるため、いずれの結果にしろ、内閣支持率に大きな影響を与えます。

今回、秋の補欠選挙は今のところ参議院選挙(岩手県選挙区)のみとみられますが、岩手県選挙区(定数1)は近年まで野党が強く、前回(2022年)に自民党公認候補として広瀬氏が30年ぶりに当選したばかりでした。立憲民主党で今も影響力の残る小沢一郎氏の地元は「小沢王国」とも呼ばれ野党に強固な地盤があることや、広瀬氏の不祥事が「政治とカネ」にわたることなどから、与党にとっては厳しい選挙が予想されます。

この参議院議員補欠選挙を衆議院議員総選挙の「前」に行ってしまうと、前哨戦の意味合いが強くなり、与党にとっては補欠選挙を負けた場合、総選挙に与える影響も大きくなると考えられます。そうならないためにも、衆議院議員総選挙の日程を参議院議員補欠選挙に被せる日程として、10月27日に参議院議員補欠選挙と衆議院議員総選挙の同時選挙を行う日程が、急に現実味を増してきました。

従って、次期衆議院議員総選挙は10月15日公示、10月27日投開票がもっとも現実的な日程と言えるでしょう。この日程を軸に、今後与野党が急速に選挙準備を進めるものとみられます。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。日本選挙学会会員。

大濱崎卓真の最近の記事