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嘆かわしい「デーブ辞任」情報の漏えい

豊浦彰太郎Baseball Writer

楽天の大久保博元監督が今季限りで辞任するという。すでに、一部スポーツメディアが報じている。この辞任劇には理解に苦しむことが散見される。それについて記したい。

大久保監督が来季は指揮を執らない事自体は、驚くに値しない。もともと1年契約だし、現在最下位とチームも不振だからだ。

では何が理解に苦しむのか?まずは、「辞任」と報じられていることだ。任期半ばにして自らその職を辞するなら「辞任」だろうが、大久保監督は今季終了まで監督のポジションを全うするつもりだという。ならば、単に契約期間が満了するということでしかない。

まあ、これは単にターミノロジーの問題かもしれない。本当に理解に苦しむのはこのことではない。

それは、なぜこの段階で「今季限り」という情報が、流れるのかということだ。

ぼくは、球界内部の人間ではないし、球団関係者に直接取材できる立場にもない。したがって、メディアの報じる情報を繋ぎ合わせ、全体像を想像するしかないのだが、どうやら大久保監督自身が来季は契約を更新する意思が無いことを、近いうちに球団に伝えるつもりのようだ。しかし、そのことは球団側も周知のことである可能性も否定できないだろう。

しかし、「辞意」の表明とともにその職を退くのならともかく、大久保監督は閉幕まで全うするつもりで、球団もそれを認めるのなら、少なくとも閉幕寸前まで両者とも情報を守秘する義務があるのではないか。情報リークのソースがどちら側なのかは知る由もないが、どちらにせよこれはモラルハザードである。ある意味では、オーナーの現場介入以上に、コンプライアンス上大きな問題だと思う。

閉幕を待たず「今季限り」を表明するケースは過去にもあるが、それはある意味では引退興行を義務付けられたスーパースターのみに許された特権(または強いられるべき義務)だろう。少なくとも、就任初年度で不成績のためにその座を去る監督に相応しい行為ではない。

今季限りと心に決めたが最後まで職場は放棄したくないという姿勢は、ダンディズムに溢れている。だからこそ、大久保監督はギリギリまでそれを口にすべきではないし、球団側はその姿勢をリスペクトし守秘に努めるべきだ。

繰り返すが、情報漏えいソースはどちらなのかは分からない。しかし、どちらであっても嘆かわしいことだ。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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