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もはや宗教の領域か?!脱スマホ・ケータイ宣言

森井昌克神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授
脱スマホ・ケータイ宣言(写真:アフロ)

スマホやケータイの単なる使用ルールではない。「NOスマホアピール!」、脱宣言を栃木県壬生町が行った。「みぶっ子スマホ・ケータイ宣言」がそれだ。同町教委や同町青少年問題協議会など合わせて7団体が共同で、児童生徒と保護者・地域に向けて発した。学校・家庭・地域が連携して、スマートフォンや携帯電話による弊害から子どもたちを守るのが目的。

出典:脱スマホ・ケータイ宣言 栃木県壬生町7団体が共同で【教育新聞】

もし、児童生徒のスマホやケータイ使用について強く関心を引くための宣言であるならば、その効果は絶大でしょう。ただ、それが反語的な修辞法ではなく、素直な表現であるとするならば問題を先送りするだけでなく、現実を見ない愚策であると言わざるえません。

ほぼ10年ほど前に、「中学生にケータイの利用を認めるべきか否か」という議論が盛んになされました。それこそ当時の大阪府知事が反語的な修辞法を用いて、「大阪府は小中学生のケータイ利用禁止!」と宣言し、話題になったのです。当時の知事の独特な言い回しで、極論から議論を盛り上げ、妥当で現実性のある解答を導こうとしたのだと考えています。

当時の議論からの結論として、小学校高学年や中学生については利用を禁止するのではなく、その利用方法について教え込むことが第一であると考えられています。結局のところ、高校大学、あるいは社会人になってから使わなければならない必須の道具であり、避けて通れないからです。スマホに限らずネットを使いこなすためには、少なくとも中学生になれば習熟する必要があると考えられます。ネットは他人と、あるいは機械とのコミュニケーションをとるための、今となっては必須の道具なのです。コミュニケーションの習熟には自我が確立した前後に行う必要があり、その学習および修練の機会を逃せば、結局、誰の目も届かないところで、取り返しの利かない大きな失敗や事故、あるいは事件を引き起こすことになるのです。

「夜9時以降のスマホ禁止」というのはあくまでも象徴的な意味しか持ちません。もちろん厳守する必要はないと言っているわけではありませんが、単に規則だからということではなく、なぜ利用制限しなければならないかを親も含めて理解してほしいのです。スマホやネットは道具であって、それを使いこなしてこそ意味があります。決して、それに使われる、支配されてはならないのです。

出典:やはり小中学生のSNS規制に賛成すべき?(続報)【Yahoo!ニュース】

神戸大学大学院工学研究科 特命教授・名誉教授

1989年大阪大学大学院工学研究科博士後期課程通信工学専攻修了、工学博士。同年、京都工芸繊維大学助手、愛媛大学助教授を経て、1995年徳島大学工学部教授、2005年神戸大学大学院工学研究科教授。情報セキュリティ大学院大学客員教授。情報通信工学、特にサイバーセキュリティ、インターネット、情報理論、暗号理論等の研究、教育に従事。加えて、インターネットの文化的社会的側面についての研究、社会活動にも従事。内閣府等各種政府系委員会の座長、委員を歴任。2018年情報化促進貢献個人表彰経済産業大臣賞受賞。 2019年総務省情報通信功績賞受賞。2020年情報セキュリティ文化賞受賞。電子情報通信学会フェロー。

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